小説むすび | 世界を売った男

世界を売った男

世界を売った男

出版社

文藝春秋

発売日

2012年6月11日 発売

ジャンル

香港西区警察署の許友一巡査部長は、ある朝、マイカーの運転席で目が覚めた。酷い二日酔いで、どうやら自宅に帰らず車の中で寝込んでしまったらしい。慌てて署に向かったが、どこか街の様子がおかしい。署の玄関も改装されたように様子が変わっていて、貼られているポスターを見ると2009年と書いてある。「馬鹿な、昨日は2003年だったのに!?」。許巡査部長は一夜にして6年間の記憶を失っていた。呆然とする許だが、ちょうどそこに女性雑誌記者・蘆沁宜が現れ、許が昨日まで捜査していた、夫と妊娠中の妻が惨殺された事件の取材で許と会う約束をしたという。それが、6年前の事件の真犯人と己の記憶を追い求める許の捜査行の始まりだった。奇想天外な発端と終盤の怒涛のどんでん返しで圧倒的な支持を受け、第2回島田荘司小説賞を受賞。香港の鬼才が放つアジア本格の決定版です!

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第二回島田荘司推理小説賞受賞作。台湾の出版社が企画し、島田荘司が選考を努める、華文(中国語)による本格推理小説の新人賞を受賞したのは、香港の新進気鋭、陳浩基(サイモン・チェン)。最先端と前近代の町並みが混在したエネルギッシュな過密都市を、「記憶を失った男」が、事件の真相を追って失踪する。秀逸な構成、驚愕の結末。アジアに新しい「新本格」ブームの幕が開いた。 車の中で目覚めた刑事。つい先日起きた夫婦惨殺事件を捜査していた・・・はずが、警察署に出てみれば建物も顔ぶれも全く変わっている。そこに現れた女性記者から、事件は6年前に起きたもので、その犯人は逃走中に事故死、事件はすでに解決している、と知らされる。自分は6年間の記憶を失っている? 何故? しかし、刑事には何故か確信があった。「死んだ男は、真犯人ではない!」 事件の真相を求め、女性記者とともに香港島、九龍、新界と、かつての事件関係者を訪ね回る。次々に出くわす意外な事実、そして不可思議な違和感。自分の記憶はなぜないのか、なぜ自分は「真相は別にある」と知っているのか。そして、自分は何者なのか。 どんでん返しの連続、アクロバティックな謎解き。これぞ新本格ミステリーの誕生、という新鮮な感動を、我々日本人はこの一冊で思い起こすことができるだろう。 そして、主人公の「アイデンティ・クライシス」は、今の香港に生きる作者の切実なテーマでもある。 今年、陳浩基の新作「13・67」は大きな話題となり、ウォン・カーウァイが映画化権を取得した。返還から中国支配により激しく変化する香港の歴史を辿った連作集だ。 激動を香港をリアルタイムで活写している陳浩基のメジャーデビュー作に、改めて注目が集まる。 2018/11/09 発売

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