乳房
「まるで不作の生大根をかじっているようだ」さんざんにもてあそばれた挙句、罵られ捨てられたお松は、偶然出会ったその男、煙管職人の勘蔵を絞殺してしまった。-この言葉を胸に秘めて、数奇な運命を辿るお松を評して、長谷川平蔵は、「男にはない乳房が女を強くするのだ」というが…。鬼平犯科帳番外篇。
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妻と病室の窓から眺めた満月、行方不明の弟を探しに漕ぎ出た海で見た無数のくらげ、高校生に成長した娘と再会して観た学生野球…。せつなく心に残る光景と時間が清冽な文章で刻み込まれた小説集。表題作の他「くらげ」「残塁」「桃の宵橋」「クレープ」と名篇を収録し、話題を呼んだ直木賞作家の、魂の記念碑。 1993/09/15 発売