マゼラン雲
《私は、二百二十七名の一員として、太陽系の外を目指し、地球を発った。計画した目的を果たし、旅が始まって十年目の今、我々はこれから帰還の途に就く》32世紀。高度な科学技術的発展を成し遂げ、内太陽系をも生活圏とした人類は、その能力と野心を一層満たすために、ついに史上初の太陽系外有人探査計画に着手、地球に最も近い恒星であるケンタウルス座α星へ向かう決定を下した。そんな時代に、グリーンランドの小都市で医師の家庭に生まれた少年は、成長期の体験から宇宙航海士になることを決意、この有人探査計画を聞きつけると、遠征隊の審査試験に合格するために研鑽を重ね、晴れて巨大探査船ゲア号に搭乗する選りすぐりの遠征隊員の一員となる。そして迎えた出発の日、宇宙空間をゆっくりと動き出したゲア号は、次第に速度を増し、遥かなる未知の空間へと踏み出していった。暗黒の真空を突き進む旅路の果てにはいったい何が待ち受けているのであろうか?--レムが晩年まで、ポーランド国内での再版と外国語への新たな翻訳を拒み続けた幻の長篇がついに邦訳なる。映画『イカリエーXB1』原作。
序章
家
青春
マラソン
地球との別れ
ゲア号
真空の庭
空間からのお客
アメタ操縦士
トリオン
黄金の間歇泉
ベートーヴェン第九交響曲
宇宙航海士評議会
舞踏会
星から来たアンナ
ガニメデから来たピォトル
反乱
共産主義者たち
グーバル、私たちの一員
宇宙航海士の像
新時代の始まり
ケンタウルスの太陽
ユナイテッド・ステイツ・インターステラー・フォース
赤色矮星
赤色矮星の惑星
グーバルの仲間
流れ星たち
地球の花々
マゼラン雲
遥かなる旅(イェジイ・ヤジェンプスキ)
訳者あとがき(後藤正子)
解説 ユートピアの夢の幻惑と過誤(沼野充義)