百合墓荒らし
紗世子とゆたかは、小学生の頃から、毎日互いの家を行き来する幼馴染だった。男のような名前のゆたかを、紗世子だけは「ゆかちゃん」と呼ぶ。初めて出会った瞬間に抱いた想いを、それぞれの胸に秘めたまま、10年の時が流れた。高校生になったある日、紗世子は好きな「女の人」がいることをゆたかに告白し、付き合い始める。苦しみに耐えながら友達を続けるゆたかだが、それこそがまさに、紗世子が本当に望んだものだったー。膨らみ続けた純粋な想いは、むせ返る百合の香りのように強く、二人の少女を縛り付け、美しすぎる悲劇となる。