ツウィンカム野獣伝(1)
南青山のはずれ。路地だ。青海涼は、スプリング・コートのポケットに手をつっこんで、ぶらぶらと歩いていた。頭ではない。身体が気づいた。姿より、気配。声より、視線。そんなものに気がつくのは、いつだって、頭より身体のほうが先だ-。殺気!どうするか…。青海涼が顔を上げた。マシーンがうなる。野獣誕生のストリート・パフォーマンス。気鋭のバイオレンス・アクション。
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(獣だ…)青海涼は自分をそう思う。肉体の衝動を意識で管理するのが人間だとしたら、肉体の衝動のままに行動してしまうのは、獣だろう。涼は、自分のなかの獣に、取り憑かれたのだ。涼の獣が走りたがっていた。そして暗い空へのびてゆく。漆黒の路面を見つめた。そろそろ深夜、しかも青海涼の心のなかでは戦慄のつぶやきが反復していた。-殺人に理由はない-。事実、ひとを殺したばかりだった。長編バイオレンス。 1992/08/01 発売