万物は流転する【新装版】
1953年、スターリンが死んだ、神のような指導者の突然の死が、国土を震撼させる。ラーゲリ(強制労働収容所)からは何百万もの人びとがぞくぞく出所してきた。主人公イワン・グリゴーリエヴィチは自由を擁護する発言を密告され、29年間、囚人であった。かつて家族の希望の星だった青年は、老人となって社会に戻った。地方都市でささやかな職を得たイワンは、白髪が目立つが美しい女性アンナと愛しあうようになる。彼女には、ウクライナで農民から穀物を収奪し飢饉に追い込んだ30年代の党の政策に、活動家として従事した過去があった。生涯で一番大事なことを語りあうふたり。しかし…。帝政ロシアと農奴制に抗した多様な結社からレーニンの十月革命へ、スターリン体制へと至った激動のロシア革命史が想起される。物語とドキュメンタリー風回想と哲学的洞察が小説を織りなす。作家グロスマンが死の床でも手離さなかった渾身の遺作。
関連小説
謎を秘めて妖しく輝く火星に、ガス状の大爆発が観測された。これこそは6年後に地球を震撼させる大事件の前触れだった。ある晩、人々は夜空を切り裂く流星を目撃する。だがそれは単なる流星ではなかった。巨大な穴を穿って落下した物体から現れたのは、V字形にえぐれた口と巨大なふたつの目、不気味な触手をもつ奇怪な生物ーー想像を絶する火星人の地球侵略がはじまったのだ! かつてジョージ・パルが映画化し、スティーブン・スピルバーグ監督、トム・クルーズ主演で再度の映画化が果たされた傑作。初出誌〈ピアスンズ・マガジン〉の挿絵を精選、多数採録して贈る。訳者あとがき=中村融 2005/06/01 発売
〈黒後家蜘蛛の会〉での謎解きの宵は、名給仕にして名探偵であるヘンリーのもてなしさながら、読む者に心地よいひと時をもたらす。著者自身が誰よりも楽しんで書いた連作ミステリは、ほかでは得がたい魅力に満ちている。第5巻には、万単位の蔵書から愛書家が遺贈した一冊の本の書名を当てる「三重の悪魔」、アシモフの実体験をそのまま作品化した「待てど暮らせど」、いっぷう変わった密室の謎に挑戦した「秘伝」など全12編を収録。 2018/12/12 発売
「未解決の謎か」ある夜、ミス・マープルの家に集った客が口にした言葉をきっかけにして、“火曜の夜”クラブが結成された。毎週火曜日の夜、ひとりが知っている謎を提示し、ほかの五人が推理を披露するのだ。いまなお世界中で愛されている名探偵ミス・マープルが初登場した作品集、新訳でリニューアル!凶器なき不可解な殺人「アシュタルテの祠」など粒ぞろいの13編を収録。 2019/01/12 発売
「だいたいお前さん達は想像力ってもんが足りなさすぎるよ、新聞や雑誌にひょいひょい乗せられて、やれ空飛ぶ人だ空中散歩者だってはしゃいでるんだからーもう少し頭使って自分の考えで物を云いなさいよ」そう言い放ったこの、仔猫みたいなまん丸い目をした小男こそ、名探偵猫丸先輩その人である。コミカルな筆致とロジカルな推理で読者を魅了する倉知淳の本格的なデビュー作。 2019/01/30 発売
液体メタンの海とアンモニアの氷に覆われ、高速自転で赤道部が膨らんだ巨大惑星メスクリン。赤道部で3G、極地で700Gのこの星は、ある緯度以上への人類の進入を許さない。地球人は南極で離陸不能となった無人調査ロケット回収のため、原住生命と取引きをした。体長40センチ、36本肢のメスクリン人は、なぜ無報酬も同然でこの危険な仕事を引き受けたのか?ハードSFの傑作! 2019/01/30 発売
チャールズは切羽詰まっていた。父から受け継いだ会社は不況のあおりで左前、恋しいユナは落ちぶれた男など相手にしてくれない。叔父アンドルーに援助を乞うも、駄目な甥の烙印を押されるばかり。チャールズは考えた。叔父の命、または自分と従業員全員の命、どちらを選ぶのか。身の安全を図りつつ遺産を受け取るべく、計画を練り殺害を実行に移すチャールズ。快哉を叫んだのも束の間、フレンチ警部という名の暗雲が漂い始める。『樽』と並ぶクロフツの代表作、新訳決定版。 2019/02/20 発売
田舎の名士の屋敷、赤い館で銃声が轟いた。死んだのは、15年ぶりに館の主マークを訪ねてきた兄。発見したのはマークの従弟と、館に滞在中の友人に会いにきた青年ギリンガムだった。発見時の状況からマークに殺人の疑いがかかるが、肝心のマークは行方不明。興味を惹かれたギリンガムは、友人をワトスン役に事件を調べ始める。英国の劇作家ミルンが書いた長編探偵小説、新訳決定版。 2019/03/20 発売
亡き妻に謝罪したいー引退した不動産業者・方城兵馬の願いを叶えるため、長男の直嗣が連れてきたのは霊媒だった。インチキを暴こうとする超常現象の研究者までが方城家を訪れ騒然とする中、密室状況下で兵馬が撲殺される。霊媒は悪霊の仕業と主張、かくて行なわれた調伏のための降霊会で第二の惨劇が勃発する。名探偵・猫丸先輩が全ての謎を解き明かす、本格推理小説の雄編! 2019/03/20 発売
鋭敏な推理力を持つ引退した俳優ドルリー・レーンは、ニューヨークの路面電車で起きた殺人事件への捜査協力を依頼される。ニコチン毒を塗ったコルク球という異様な凶器が使われた、あまりにも容疑者が多い難事件から、ただひとりの犯人Xを指し示すべく、名探偵は推理と俳優技術のかぎりを尽くす。巨匠クイーンがバーナビー・ロス名義で発表した、本格ミステリ史に燦然と輝く〈レーン四部作〉の開幕を華々しく飾る、傑作中の傑作。 2019/04/24 発売
バロネス・オルツィの「隅の老人」、オースティン・フリーマンの「ソーンダイク博士」と並ぶ、あまりにも有名な“シャーロック・ホームズのライバル”。本邦初訳16篇、単行本初収録6篇!初出紙誌の挿絵120点超を収録!著者生前の単行本未収録作品は、すべて初出紙誌から翻訳!初出紙誌と単行本の異同も詳細に記録!シリーズ50篇を全二巻に完全収録!詳細な訳者解説付。 2019/05/10 発売
コンティネンタル探偵社調査員の私が、ある町の新聞社社長の依頼を受け現地に飛ぶと、当の社長が殺害されてしまった。ポイズンヴィル(毒の市)と呼ばれる町の浄化を望んだ息子の死に怒る、有力者である父親。彼が労働争議対策にギャングを雇ったことで、町に悪がはびこったのだが、今度は彼が私に悪の一掃を依頼する。ハードボイルドの始祖ハメットの長編第一作、新訳決定版! 2019/05/31 発売
ある時は幻の珍獣アカマダラタガマモドキの捜索隊員、ある時は松茸狩りの案内人、そしてある時は戦隊ショーの怪人役と、いっぷう変わったアルバイトに明け暮れる神出鬼没の名探偵・猫丸先輩が遭遇した五つの事件。猫コンテスト会場での指輪盗難事件を描いた「猫の日の事件」、意外な真相が爽やかな余韻を呼ぶ「たたかえ、よりきり仮面」ほか三編を収録した、謎解き連作短編集。 2019/05/31 発売
渡英した女優マーシャ・テイトをめぐり、契約が残っていると連れ戻しに来たハリウッドの関係者、ロンドンでマーシャ主演の芝居を企画するブーン兄弟、芝居ばかりか私生活の後援もしかねない新聞社主らが不穏な空気を醸し出す。その不穏さを実証するように、スチュアート朝の雰囲気に浸るべく訪れたブーン家所有の屋敷“白い僧院”の別館で、マーシャは無惨な骸と化していた…。 2019/06/28 発売
34歳独身のドイツ人女性ヒルデガルトは、ある朝、新聞の求縁広告の一つに目を奪われた。「当方大資産家、良縁求む。願わくはハンブルク出身、未婚、だが世間知らずでなく、身寄りもなく…」すべてはここから始まった。知性と打算に裏打ちされた手紙が功を奏し、大富豪の妻の座は目前だった。ミステリ史上に燦然と輝く、精確無比に組み立てられた完全犯罪の物語。新訳決定版! 2019/07/30 発売
バロネス・オルツィの「隅の老人」、オースティン・フリーマンの「ソーンダイク博士」と並ぶ、あまりにも有名な“シャーロック・ホームズのライバル”。シリーズ作品数50篇を、世界で初めて確定!初出紙誌の挿絵120点超を収録!著者生前の単行本未収録作品は、すべて初出紙誌から翻訳!初出紙誌と単行本の異同も詳細に記録! 2019/07/30 発売
ポルトガルの詩人ペソア最大の傑作『不安の書』の完訳。断章を増補し、装いも新に、待望の復刊!虚構上の著者、帳簿係補佐ベルナルド・ソアレスの夢想と思索の書。 2019/08/06 発売
島原の乱のあと、厳しくなった迫害をのがれて、長崎の外海地方から五島列島へ移住してきた隠れキリシタン。明治の初め、その七代目の子孫として生まれたミツは、母、弟との貧しい生活の中で、十六歳になった。ミツのいいなずけの幸吉は、ひそかに洗礼を受けに行った長崎からの帰途、役人にとがめられ、海に捨てられたロザリオを探すために海に入り…芥川賞作家の文学的原点を昇華させた長編小説! 2019/10/08 発売
元警察犬のマサは、蓮見家の一員となり、長女で探偵事務所調査員・加代ちゃんのお供役の用心犬を務めている。ある晩、高校野球界のスーパースター・諸岡克彦が殺害された。その遺体を発見した加代ちゃん、克彦の弟である進也、そしてマサは事件の真相を追い始めるが…。幅広いジャンルで活躍し、わが国の文壇を代表する作家の一人である宮部みゆきの記念すべき長編デビュー作。 2019/11/11 発売
日暮れどき、ダートムアの荒野で、スコットランド・ヤードの敏腕刑事ブレンドンは、絶世の美女とすれ違った。それから数日後、ブレンドンはその女性から助けを請う手紙を受けとる。夫が、彼女の叔父のロバート・レドメインに殺されたらしいという…。美しい万華鏡のように変化しつづける、奇怪な事件の真相やいかに?江戸川乱歩が激賞した名作が、満を持して新訳版で登場! 2019/11/20 発売
瞳島眉美以外、全員が行方不明となってしまった美少年探偵団。眉美は彼らを探すため、探偵団のリーダー双頭院学の兄であり創設者、踊のもとを訪れ、アドバイスを受ける。「美術室へ戻れ」-と。その謎めいた言葉を紐解いた眉美が向かったのは、かつて訪れたあの場所だった。眉美は皆を見つけ出すことができるのか?そして再び皆が揃う日は来るのか。最後の事件が始まる! 2019/11/22 発売
因縁の人工島・野良間島を訪れた瞳島眉美。行方不明の仲間たちは、胎教委員会が支配する巨大な五重塔を模した学園に囚われていた。眉美はみずからの視力と引き換えに五人の奪還に成功するのだが、再集結を果たした美少年探偵団にもたらされたのは、実現不可能としか思えない依頼だったー。西尾維新史上、もっとも光かがやく団の活躍を描く「美少年シリーズ」、ここに終幕! 2019/12/20 発売
バロネス・オルツィの「隅の老人」、ジャック・フットレルの「思考機械」と並ぶ“シャーロック・ホームズのライバル”「マーチン・ヒューイット」。本邦初訳作品も多数!初出誌の挿絵165点を完全収録!初出誌と単行本の異同もすべて記録!原書4冊に収録されたシリーズ全25作品を1冊に集成!詳細な訳者解説付。 2021/06/30 発売
作家になる夢を捨てきれず、勤めの傍ら小説を書き続ける主人公の男の家に、小中学校の同級生・湯川秀樹が風呂敷包いっぱいの原稿を抱え、「作家になりたいんや」と押しかける。鼠のような目をした湯川は、うすのろぶりを皆に馬鹿にされ続けてきた奴だ。その可笑しな感性を生かし、常人には作り得ない作品世界を作り出せるとしたら…。無能だと思っていた男が、自分が心から欲している才能を隠し持っているかもしれないという期待と嫉妬。湯川のことが頭から離れなくなった男は、いつしか湯川を題材に小説を書き始めるー。表題作「となりの男」ほか3篇、人間の本質に迫る短篇を収録。 2023/02/07 発売