小説むすび | スタ-ライト

スタ-ライト

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ラオス国境沿いにあるヴェトナムのアメリカ軍基地に一人の兵士が転属されてきた。男の名前はトム・ライト。敵襲を何度も生きのびてきた優秀な狙撃兵であった。だが、ライトの配属された部隊は常に戦死者が続出するため、誰一人彼の回りに近づこうとする者はいなかった。通信兵ジャクソンは、ライトの面倒を見ることを命じられたことから彼と親しくなり、〈スターライト〉と呼ばれる狙撃用の夜間スコープに隠された驚くべき秘密を打ち明けられる。なんと、ライトの持つ夜間スコープには次に戦死する人間の姿が浮かび上がるというのだ。一方、前線基地はすでにイカレた兵士たちの吹きだまりと化していた。M-16ライフルをギターがわりにして、ジミ・ヘンドリックスの歌詞でしか会話をしないロック狂の兵士レナルズ。雷が同じところには落ちないという俗信から、わざと弾痕の開いた戦闘帽をかぶっている分隊長のリアンダー。ライトにまつわる伝説を利用して、怪しげな保険を始めて一儲けをたくらむイカサマ師のラボウフなどなど。死の恐怖におびえる兵士たちは、さまざまな狂態を繰り広げていた。やがて戦況は悪化して、ライトはスコープに映し出される奇妙な《死者の棲む街》の話をし始め、ジャクソンも彼も、やがてその街の住人となることを告げたのだった…。ジョーゼフ・ヘラーの「キャッチ22」や、ティム・オブライエンの「カツィアトを追跡して」の流れに続く、新進作家による異色の戦争小説。

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