ハーン=ハーン伯爵夫人のまなざし
ハンガリーを代表する現代作家エステルハージ・ペーテルによる、ハイブリッド小説。黒い森(シュヴァルツヴァルト)から黒海まで、中央ヨーロッパを貫く大河ドナウ川を「プロの旅人」が下っていく。行く先々から雇い主に送られる旅の報告書は、しかし、旅行報告の義務を軽やかに無視し、時空を超えて自在に飛躍。歴史、恋愛、中欧批判、レストラン案内、ドナウの源泉、小説の起源等々を奔放に語りつつ、カルヴィーノ『見えない都市』を臆面もなく借用するなど膨大な引用(その多くは出所不明)を織り込みながら、ドナウの流れとともに小説は進んでいく……