出版社 : あるむ
人類史上最大の高齢者時代がやってきた! 暴走老人+家出美少女+クラウド・ベイビー+台湾一周青年 =インターネットコミュニティ「霊界通信」 国民党退役軍人の老陳(ラオチェン)は、病院で知り合った老姜(ラオジアン)と義兄弟の契りを交わし、旅に出ることにした。 大学生の江子午(ジアンズーウー)は自分探しのため、ヒッチハイクで台湾一周を目指している。台東で雨宿りするなか、二人の老人と出会う。 トランスジェンダーの莉莉(リリー)は15歳、女子校で美少女体験中。突然死した六爺(リウイエ)からのメッセージを受信し、お葬式を出すことに。 バス旅行で父を亡くした梅宝心(メイバオシン)は、海上で散骨中に死んだはずの父からの友達リクエストを受け取る。 それぞれ異なる性、年齢、人生を歩む「わたし」を語り手とする四章の物語は、医療・介護の問題などに題材を広げながら、ときに皮肉、風刺、ブラックユーモアを交えて描き出される。
吉祥戯院の付近の道が姿を変えてまるで本物の日本統治時代になり、時空のねじれと記憶の逆流が鎮の生活リズムに奇妙な変化をもたらしはじめた。ばあさんは朝起きた後自分がどこにいるのかわからなくなり、寝ている家族を日本語で起こすようになった。レコード屋の店主はショーケースの中の包娜娜や謝雷の新譜レコードを取り外して、美空ひばりの古いジゃケットを並べた。じいさんは派出所に行って通報し、証拠を並べあげながらこう言うのだった。三十年前に南洋の戦場に送られ音信不通だった弟が前の晩に玄関に現れた…周縁の人生を幽明のあわいに描いた長篇小説。
千年の昔、平安京・東京極(きょうごく)の古びた寝殿造の屋敷で、密かに壮大な物語を書いた女性がいた。その歴史上の名は藤式部、愛称は紫式部と呼ばれている。 藤式部が著した源氏物語・紫式部日記・紫式部集と、同時代を生きた仮名(かな)の名手で三蹟のひとり藤原行成が遺した日記「権記」との接点を手がかりに、藤式部はなぜ/いかにして陰謀渦巻く藤原摂関体制の渦中で「源氏物語」を書いたのか、「源氏物語」が語ろうとするものは何かに迫る、歴史に拠る源氏物語の深読みへといざなう意欲作。
あなたはまだこの人生を続けたい? 香港の離島に暮らしながら、アジア各地でビジネスの実績をかさねる晨勉(チェンミェン)。 自立していて孤独な雰囲気をもっているから島が好きだという彼女は、30歳の誕生日に離島にもどる船でダニーと知りあう。台北には鏡像さながらのもうひとりの晨勉がいて、同じころ華僑男性の祖と出会っていた。ふたりの晨勉が生きていることで、はじめてその人生は空白なく満たされていくのだ。 香港・台北・シンガポール、そしてバリ島と、魂の故郷をもとめて流転したのちに、晨勉の選択した生き方とは。 国家や民族、階級やジェンダーといったあらゆるアイデンティティを脱ぎ去り、個/孤としての女性の性と身体を見つめた、台湾現代文学作家・蘇偉貞の代表作。 第一回時報文学百万小説特別審査員賞受賞。
===== おれは見たんだ。 太陽がゆっくりゆっくりゆっくりと緑色に変わっていくのを。そして黒い血が流れ出てくるのを…… 台北の浮薄(クール)な風景に、傷の記憶のゆらぎをきく、新たな同時代文学への試み。 ===== すべての傷口はみな発言することを渇望している──。 戒厳令解除後に育った大学院生のわたし李文心と同級生小海。ふたりの祖父をつなぐ台湾現代史の傷跡。セクシュアル・マイノリティである友人阿莫の孤独。台北の浮薄(クール)な風景のなか、忘却の誘惑にあらがい語りだす傷の記憶が、短編をコラージュするかのように紡がれる。気鋭の作家による新たな同時代文学への試み。