出版社 : あるむ
惑郷の人惑郷の人
吉祥戯院の付近の道が姿を変えてまるで本物の日本統治時代になり、時空のねじれと記憶の逆流が鎮の生活リズムに奇妙な変化をもたらしはじめた。ばあさんは朝起きた後自分がどこにいるのかわからなくなり、寝ている家族を日本語で起こすようになった。レコード屋の店主はショーケースの中の包娜娜や謝雷の新譜レコードを取り外して、美空ひばりの古いジゃケットを並べた。じいさんは派出所に行って通報し、証拠を並べあげながらこう言うのだった。三十年前に南洋の戦場に送られ音信不通だった弟が前の晩に玄関に現れた…周縁の人生を幽明のあわいに描いた長篇小説。
太陽の血は黒い太陽の血は黒い
おれは見たんだ。太陽がゆっくりゆっくりゆっくりと緑色に変わっていくのを。そして黒い血が流れ出てくるのを…台北の浮薄な風景に傷の記憶のゆらぎをきく、新たな同時代文学への試み。
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