出版社 : ポプラ社
<内容紹介> ひとりぼっちの少女・タマは、点灯士の少年・ミケと出会った。ランプの灯に導かれながら、少年少女は星をめぐる旅に出る……。 「満月珈琲店」の著者が贈る、心に灯をともす物語。 <著者プロフィール> 桜田千尋 webで発表した作品「満月珈琲店」のイラストが話題となる。著書に小説家・望月麻衣とのコラボ小説『満月珈琲店の星詠み』(文藝春秋刊)、コラボ絵本『満月珈琲店』(KADOKAWA刊)、『満月珈琲店の星占い〜心が整う12星座のスイーツ〜』(ポプラ社)、初画集『桜田千尋イラスト集 満月珈琲店メニューブック』(玄光社刊)がある。
夏休みの初日、目が覚めたあたしは、見知らぬ体育館にいた。周りには7人の少年少女と、着ぐるみを着た謎の人物が発した言葉ーー「キミたちにはこれから、一本の劇を演じてもらいます」。なぜあたし達はここに連れてこられたのか。そして、劇が完成した先に待つものとは。 その理由と物語の結末が明かされた時、読む者の心も炙り出されていく。 2024年『不夜島』で日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)受賞、2025年『飽くなき地景』で吉川英治文学新人賞受賞の、最注目の新鋭が描く、読む前の自分ではいられない、人間の心の深淵に迫る青春エンタメ大作。
誰もが親を選べないし、 時に誰かに選ばれなくても、 自分自身を祝福していいのだ。 ーー島本理生(作家) 人はいつかは「誰かの子供」から卒業できる。 今親との関係に悩む人たちに、 そんな希望を与えてくれる物語である。 ーー瀧井朝世(ライター) 「WEB asta*」2025年10月6日より抜粋 奔放な母と自由になれない娘ーーやさしいエールに満ちた感動作 うつくしく奔放なシングルマザー・芙美子の娘として育った望。 幼い頃からひとりで寝起きし、 次々変わる芙美子の恋人にあわせて住まいを転々とする日々。 常識を教われず、どこか周囲から浮いてしまう望は、 「普通になりたい」と願いつづけてきた。 気まぐれな芙美子が唯一こだわったのが、毎食スープを飲むこと。 しぶしぶ付き合ってきた望だが、いつしかスープづくりが楽しみに変わる。 やがて、ある人物に恋心を抱いたことがきっかけで、 人生を大きく動かす選択をすることにーー。 ままならない人生に立ちすくむすべての人に贈る、「希望」の物語。
元寝具店店員の著者が贈る、眠れない夜に寄り添う物語 この宇宙の片すみで今日もひたむきに生きているすべての人びとに、 この本を差し出したいと思った。 生きていくために、人は眠る。 よりよい眠りを得たいと願うことは、そのまま、 よりよく生きたいという私たちの、切実な願いなのだ。 ーー寺地はるな さん絶賛! (「web asta*」2025年9月24日より抜粋) 大学時代から8年半付き合った婚約者・直樹を亡くした依里。 大阪出張に出かけたはずが、直樹はなぜか年上女性と東北の温泉宿に泊まり、 その帰りにバス事故に遭ったのだ。 以来眠れなくなった依里は、 親身になってくれた店長のいるデパートの寝具売り場で働くことに。 そこには、日々眠りについての悩みを抱える人たちが訪れる。 夫に言われるまま、あわない寝具を使い続けてきた老婦人。 愛着のある毛布を手放して以来、寝付けなくなった会社員。 いつも家族を優先し、自分のことは後回しの母親。 そんな折、直樹と一緒に亡くなった女性の夫・高橋が店を訪れてーー。
シリーズ累計40万部突破! むかしむかし、村はずれにたっている空き家に、 いつからか、2人の男が住みつきました。 2人の男はある日、小さな看板を出しました。 バラバラになってしまった本や、 やぶれてしまった本でも、 特殊な技術で元に戻すというのです。 それどころか、ほんの1ページでも、1行だけでも タイトルだけでも、 ちょっとした手がかりさえあれば 元の本の形に復元できる、というのです。 村人たちが「本の復元依頼シート」を ポストに投函すると 本はどんどん復元されてーー お笑い芸人で芥川賞作家の又吉直樹と、 大人気の絵本作家ヨシタケシンスケからの あらゆる感情を詰め込んだ「創作」のバトン。
ようこそ、天空遊園地 まほろばへ。 わたくし当園の案内人、シチカと申します。 ここは、もう二度と会えない、あなたの大切な人と「再会」できる場所。 入園される際に、一つご注意を。 当園では泣くことが禁止されております。 もし泣くと、あなたの大切なものが失われます。 くれぐれもお気をつけください……。 大好きだった父親の死後、母親と折り合いの悪い少女。 出産を控えて、辛い別れをした元恋人に会いたいと願う女性。 軽蔑していた父親にどうしても聞きたいことのあるエリートビジネスパーソン。 決別した元相方と会いたい女性お笑い芸人。 戦死した兄との約束が忘れられない90代の男性。 大切な存在との「再会」を通し、 残された人々が自分の心と向き合い、未来へ歩み出す姿を描く、 胸を震わせる5つのやさしい物語。 ■著者プロフィール 浜口倫太郎(はまぐち・りんたろう) 1979年、奈良県生まれ・在住。 漫才作家、放送作家を経て、 2010年『アゲイン』(のち、『もういっぺん。』に改題して文庫化)で、 第5回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞し、翌年小説家デビュー。 他の著作に、ベストセラーとなった『22年目の告白ー私が殺人犯ですー』のほか、 『宇宙(そら)にいちばん近い人』『シンマイ!』 『廃校先生』『お父さんはユーチューバー』『ワラグル』 『サンナムジャ 〜ヤンキー男子がK-POPに出会って人生が変わった件〜』など多数。 漫画原作者としても活躍の幅を広げている。
高校2年生の道田奈央は、両親に連れられて行ったバスツアー中、 休憩のため立ち寄ったパーキングエリアで、ねぎまきを頬張る少年に出逢う。 そのどこか哀しげな眼差しに惹かれたが、名前をきくことすらできずに別れてしまった。 数日後、地元の図書館で少年と偶然再会を果たす。少年は磐田陸と名乗った。 奈央と陸は会う機会を重ね、順調に距離を縮めていく。 しかしある日、幼なじみで親友の千恵里に彼の写真を見せると、 驚くべき事実を告げられるーー。 瑞々しい恋愛小説から一転、3人を結び付けていたものが明かされる時、 きっとあなたも自分の過去を振り返る。 「どれだけ反省したって、過去は一生とれない」 罪と傷に向き合う高校生たちの、過ちの先を描く青春小説。 ■著者プロフィール 川上佐都(かわかみ・さと) 1993年生まれ。神奈川県鎌倉市出身。『街に躍ねる』で第11回ポプラ社小説新人賞特別賞を受賞しデビュー。その他の著書に『今日のかたすみ』がある。
松川律は三十一歳の刑事で、シングルマザーの竹本澄音とつきあっている。澄音の五歳の娘・海音との距離も縮まり結婚を真剣に考えたところで、澄音から自分の父親には前科があると告げられてーー。ラーメン店を経営する姉一家との交流や同期刑事とのやりとりなどを小気味よく織り交ぜながら、若き刑事の二年の月日を描く。スカイツリーの見える東京・下町で繰り広げられる心温まる人生の物語。 【著者紹介】 小野寺史宜(おのでら・ふみのり) 千葉県生まれ。2006年『裏へ走り蹴り込め』でオール讀物新人賞を受賞。2008年、『ROCKER』でポプラ社小説大賞優秀賞を受賞。著書に『みつばの郵便屋さん』シリーズ(全8巻)、『東京放浪』、『太郎とさくら』、『ライフ』、『天使と悪魔のシネマ』、『みつばの泉ちゃん』、『町なか番外地』(以上、ポプラ社)、『とにもかくにもごはん』(講談社)、『タクジョ!』(実業之日本社)、『片見里荒川コネクション』(幻冬舎)、『食っちゃ寝て書いて』(KADOKAWA)、『今夜』(新潮社)、『君に光射す』(双葉社)、『日比野豆腐店』(徳間書店)、『ひと』(2019年本屋大賞2位)、『まち』、『いえ』、『うたう』(祥伝社)などがある。
神様に見捨てられた私を助けてくれたのは、 同じアパートに住むゾンビのおじさんだった。 川をはさんだ向かいの町に、母と引っ越してきた小学生のあんず。いじめられていたあんずを助けてくれたのは、同じアパートに住むぞんびのおじさんだった。 孤独を受け止められないあんずと、孤独とともに生きるぞんびのおじさん。 お互いの存在が、それぞれの人生へのかすかな光となる。 ポプラ社小説新人賞奨励賞作品。
グラミー賞2025、クインシー・ジョーンズ・トリビュートで披露したマイケル・ジャクソンのカヴァーが話題! グラミー賞10回ノミネート、アカデミー賞受賞作『ムーンライト』出演。 シンガー・ソングライターとして、俳優として、世界を更新し続けるジャネール・モネイ、初の小説がついに翻訳刊行! 「クリーンな人間」であることがよしとされ、記憶が管理される社会。その中心街の女王として君臨するセシャトは、日々増え続けるまがい物の記憶に頭を悩ませていた。原因を探るうち、彼女は自身にも消去された記憶があると知りーー「記憶のアーキビスト」 亡き父から、一生に一度だけ時間を戻すことができる宝石を授かったアンバー。窮地に陥る家族に、彼女は宝石を使うか苦悩するーー「変更保存」 グラミー賞ノミネートアルバム『ダーティー・コンピューター』の世界観をベースに、5人の作家とコラボレーションし、世界が今まさに直面している分断の問題を描く。NYタイムズベストセラー、ワシントンポストやバズフィードでも絶賛の傑作! 《訳者紹介》 ・安達眞弓 海外ミュージシャンやセレブのメモワール、ミステリなどの翻訳を手がける。訳書に『この、あざやかな闇』『僕は僕のままで』『どんなわたしも愛してる』『死んだレモン』『悪い夢さえ見なければ』『ジミ・ヘンドリクスかく語りき』などがある。 ・押野素子 主に黒人文化・歴史に関するフィクション&ノンフィクションの翻訳を手がける。訳書に『フライデー・ブラック』『THE BEAUTIFUL ONES プリンス回顧録』『ヒップホップ・ジェネレーション』『ディアンジェロ《ヴードゥー》がかけたグルーヴの呪文』などがある。 ・瀬尾具実子 訳書にバラク・オバマやビル・ゲイツも絶賛した『未来省(The Ministry for the Future)』がある。 ・ハーン小路恭子 専修大学国際コミュニケーション学部教授、米文学者。訳書に「マンスプレイニング」の流行語を生んだレベッカ・ソルニットの『説教したがる男たち』などがある。 ・山崎美紀 東京都出身。訳書に『この密やかな森の奥で』『森に帰らなかったカラス』などがある。
刑務所で起きていることを、ほとんどの日本人は知らないーー。 新潮ドキュメント賞受賞『獄窓記』の著者が20余年にわたり見つめ続けた日本の刑務所。社会の映し鏡である刑務所は時代と共に変化していく。死刑囚を収容する東京拘置所と名古屋拘置所、受刑者の3人に1人が無期囚という熊本刑務所、障害者や高齢受刑者が増え続ける和歌山刑務所、60カ国以上の外国人受刑者がいる府中刑務所、未成年者が服役する川越少年刑務所……。受刑者、刑務官、福祉関係者など様々な視点をつないで描く刑務所の物語。 【目次より】 第一話 守り続けた命を奪う者 東京拘置所と名古屋拘置所の死刑囚収容フロア 白衣の刑務官 奈落の底で彼の死を待つ 家族 死刑に関わりし者のその後 第二話 社会復帰は夢のまた夢 熊本刑務所では三人に一人が無期刑 縫製工場の模範囚 身分帳に書かれた履歴 半世紀ぶりの社会 更生保護施設での日々 第三話 福祉よりも男のもとへ 和歌山刑務所と和歌山定着 知的障害者だった彼女 笠松刑務所の妊婦たち 携帯乳児 再会 福祉施設へ 母親への誓い 第四話 アフリカの海賊とヤギ 府中刑務所の外国人受刑者 危険区域「レッドゾーン」 タンカー襲撃事件 プログラム開始 ヤギはその時 国際標準 第五話 性犯罪者と向き合って 松山刑務所における受講体験 性犯罪再犯防止指導 逮捕された刃物男 福岡刑務所から出所した「危険人物」 なぜ支援をするのか 第六話 出獄せし者の隣人たち 川越少年刑務所の未成年服役囚 排斥運動の果てに ある模倣犯 バスジャック事件とメディアスクラム 逮捕後 普通の暮らし 【著者】山本譲司(やまもと・じょうじ) 1962年生まれ。早大卒。元衆院議員。2000年に秘書給与詐取事件を起こし、一審での実刑判決を受け服役。獄中体験を描いた『獄窓記』が新潮ドキュメント賞を受賞。障害者福祉施設で働くかたわら、『続 獄窓記』『累犯障害者』『刑務所しか居場所がない人たち』などを著し、罪に問われた障害者の問題を社会に提起。現在も、高齢受刑者や障害のある受刑者の社会復帰支援に取り組む。小説作品として『覚醒』(上下巻)『螺旋階段』『エンディングノート』がある。
タイムリミットは10日間。 AIによる金融セキュリティシステムの暴走と、開発者失踪の謎を探るため、 AIに仕事を追われた人間たちが立ち上がる。 規格外のリベンジ×ノンストップエンターテイメント小説! スーパーコンピューターの仕事に従事していた葵は、AIの導入により、仕事を奪われリストラされてしまう。仲間と自信を失い、個人で細々とプログラマの仕事を請け負っていた葵の元にやってきたのは、デジタル庁危機管理部門の深町。 葵をリストラに追いやった後も進化を続け、今では鉄壁のセキュリティシステムを誇るようになったAI「アイギス」。そのアイギスが突然不具合を起こし、管理権限を持つ開発者は謎の手紙を残し失踪したという。 タイムリミットは10日間。日本経済の大混乱を防ぐため、葵たちがAIの暴走に立ち向かう。 緊迫&興奮のノンストップエンターテインメント小説。
田中さんの作品を見て、小説を書きました。--青山美智子 青山さんの小説を読んで、作品を作りました。--田中達也 今まで見たことのない! 最高に幸せなコラボレーション連作短編小説。 青山美智子さん作品の装丁を数多く手掛けている田中達也さんのアート作品。今回は「田中さんの作品を見て青山さんが物語を執筆し、その物語を読んで田中さんがさらにアートを作成する」という、楽しさに満ちた小説です。
女も住むこの国のことを、女抜きで決めないでほしいーー 坂本龍馬、板垣退助らが活躍した時代、高知に楠瀬喜多という女性がいた 男も女も、民衆には多くの権利がなかった頃、高知で女性参政権を求めて申し立てをした楠瀬喜多。江戸から大正にかけて生き、世界でも早い時期に声を上げた彼女は、板垣退助ら男性の民権家が活躍した激動の時代に、何を見て、何を感じていたのか。そしてそのまなざしの先にあったものはーー 100年後の今のわたしたちが手にしているものの大切さに気づかされる、著者初の評伝小説
何気なく開けてしまった隣人の扉、「フツウ」の奥に隠されていたものはーー 爬虫類のペットショップでアルバイトをする金本篤は、売れ残ったフトアゴヒゲトカゲが処分されそうになるのを見て、店長に譲ってくれと頼む。だが、提示された金額はあまりに高額で手が出ない。「ある男」を強請って金を得ようと一計を案じるのだが、自ら仕掛けた罠が思いがけぬ結末を呼び込んでしまう……(「場違いな客」)。 生徒たちにいたぶられ精神的に追い詰められていた高校数学教師・西智子は、深夜の満員電車で非常識な若い女と遭遇する。冷静になろうとするが高ぶる感情が抑えきれず、駅で降りた見知らぬ若い女を追尾し始めて……(「スタンドプレイ」)。 占い師・坂東イリスのもとに、弟子にして欲しいという若い女性がやってくる。一見、優秀そうにも見える彼女は、やることなすことズレていて、失敗ばかり。クビにしようとしてもしつこく食い下がり、ぜひ自分を占い師にしてくれと訴えるのだが……(「占い師B」)。 追う者と追われる者が入れ替わり、善と悪が反転していく予測不可能な展開ーー隣の人たちが繰りひろげる3つの物語。
書き下ろしSS付! Netflixにて映画大好評公開中! 「よめぼく」待望の単行本化! 累計55万部突破! 高一の冬、早坂秋人は心臓病を患い、余命宣告を受ける。絶望の中、入院している桜井春奈と出会う。春奈もまた重い病気で残りわずかの命だった。自分の病気を隠して彼女と話すようになった秋人は、死ぬのが怖くないと言う春奈に興味を持つ。自分はまだ恋をしてもいいのだろうか。自問しながら過ぎる日々に変化が訪れて……? 装画・飴村 ■著者プロフィール 森田碧(もりた・あお) 北海道出身。2020年、LINEノベル「第2回ショートストーリーコンテスト」にて「死神の制度」が大賞を受賞。2021年に『余命一年と宣告された僕が、余命半年の君と出会った話』(ポプラ社)でデビューし、2022年には「第17回 うさぎや大賞」入賞。「よめぼく」シリーズは累計50万部を突破し、2024年にNetflixにて映画化。
たくさんのユニークな人々が暮らし、日々大小さまざまな事件が起きる花咲小路商店街。 宇部家の五人姉弟の末っ子・禄朗は、十四歳年下の元オリンピック選手・ユイと婚約したばかり。〈たいやき波平〉の店主として働きながら、休日はアンパイアとして活躍する大の野球好き。 結婚を目前に、禄朗はユイに自分の秘密を打ち明ける。それは「人がその言葉に込めた嘘がわかる」ということだった。 偽名を使う女性、週末の予定を偽る甥っ子。 特別な力のせいで、禄朗は商店街の様々な事件に気付いてしまい、 巻き込まれてしまう。 さらに、高校球児として活躍していた際、 「ある事件」で揉めたアンパイアとの因縁も……? ■著者プロフィール 小路幸也(しょうじ・ゆきや) 1961年北海道生まれ。『空を見上げる古い歌を口ずさむ』で第29回メフィスト賞を受賞し、デビュー。著書に累計100万部を突破した『東京バンドワゴン』シリーズ、『カレンダーボーイ』『COW HOUSE』『ピースメーカー』『東京公園』など多数。
『食堂かたつむり』--「食べることは、生きること」 『ライオンのおやつ』--「死にむかうことは、生きること」 小川糸が描き出す、3つめの「生」の物語 「愛することは、生きること」 傷口に、おいしいものがしみていく 苦しい環境にあり、人を信頼することをあきらめ、 自分の人生すらもあきらめていた主人公が、かけがえのない人たちと出逢うことで自らの心と体を取り戻していく。 主人公の小鳥のささやかな楽しみは、仕事の帰り道に灯りのともったお弁当屋さんから漂うおいしそうなにおいをかぐこと。 人と接することが得意ではない小鳥は、心惹かれつつも長らくお店のドアを開けられずにいた。 十年ほど前、家族に恵まれず、生きる術も住む場所もなかった18歳の小鳥に、病を得た自身の介護を仕事として依頼してきたのは、小鳥の父親だというコジマさんだった。 病によって衰え、コミュニケーションが難しくなっていくのと反比例するように、少しずつ心が通いあうようにもなっていたが、ある日出勤すると、コジマさんは眠るように亡くなっていた。 その帰り、小鳥は初めてお弁当屋さんのドアを開けるーー
2018年1月11日。 新潟県三条市で、JR信越線が大雪で立ち往生するという事件が発生。 高校生男女たちも電車に閉じこめられ、 15時間”密室”となった車内で、熱い恋が動き出す……! 実際に起きた事件を基に、ラストの思いがけないどんでん返しまで鮮やかに描き切る、綾崎隼、待望の恋愛ミステリ。 センター試験2日前、歴史に残る最強寒波が新潟県全域を襲った。 放課後、受験勉強を終えた三条市の高校三年生、石神博人は大雪の中、最寄りの三条駅に着いたが大混雑で電車は全然来ない。自宅のある帯織駅までは2駅とはいえ約7キロあり、この天候で歩いて帰るのは難しい。 18時過ぎ、やっと来た電車に乗り込むと、大混雑の車内で偶然地元の友人、櫻井静時と遭遇する。久々の再会を喜んでいるとき、そのスマホに博人が想いを寄せる幼馴染み、三宅千春からメッセージが届いたのを見てしまう。しかも静時は気づいたはずなのにメッセージを開かず、通知は300を超えていた。密かに動揺する博人だったが、同じ電車に千春も乗っていて……? はからずも雪の密室に囚われた夜、高校生たちは誰かを強く想った。逃げ出すことさえ許されない電車内で、祈るように未来を思った。 ーーこれはそんな夜に起きた、たった一晩の、まだ愛には至らない恋の物語。 装画:orie ■著者プロフィール 綾崎 隼(あやさき・しゅん) 1981年新潟県生まれ。2009年、第16回電撃小説大賞<選考委員奨励賞>を受賞し、『蒼空時雨』(メディアワークス文庫)でデビュー。受賞作を含む「花鳥風月」シリーズ、「君と時計」シリーズ(講談社)、『盤上に君はもういない』『この銀盤を君と跳ぶ』(KADOKAWA)、『死にたがりの君に贈る物語』(ポプラ社)など著作多数。
すっかり成長した遊馬坊っちゃんと共に季節の移ろいを感じ、 目の前に一服のお茶が差し出されたかのような気分になり、 思わずキッチンでお茶を点て、庭の木陰で味わいました。 ーー中谷美紀(俳優) 青空の下、一服のお茶をいただいたような、さわやかな読み心地でした。あー、満足! あの子なりに、この子なりに、それぞれの道をいく姿がすがすがしくて愛らしい。 彼らの傍らには、お茶がある。これこそ、彼らの心棒なのだ。 ーー大島真寿美(作家) 物語自体の持つ「はんなりさ」(京都編ではもちろんだけれど、東京編でも!)や、 遊馬に限らず、一癖も二癖もある登場人物たちのが、 みな生き生きと描かれていること、等々、シリーズの美点をあげていくときりがないほど。 なにより、軽やかなユーモアに満ち満ちているのがたまらない。 本書には、それに加えて、さらりと「今どき」を生きる私たちに大事なことも 教えてくれていて(中略)そこもまた、ぐっとくる。 なんというか、あらゆることどもに、作者の細やかな目配りがあるのだ。 ーー吉田伸子(書評家) 「web asta*」2024年9月9日より抜粋 東京・本所で、弓道、剣道、茶道を伝える〈坂東巴流〉。 貧乏流派を継ぐのを厭い京都に出奔した過去を持つ 嫡男・友衛遊馬を取り巻く人々も、 さまざまな想いを抱えながら、ままならない毎日を送っていてーー。 佐保が出会った呉服屋に隠された「秘密」、 翠と哲哉のじれったい恋模様、 カンナと幸麿の娘・希の小学校サバイバル術、 三十路を迎えた遊馬の日々。 豊かな日本文化に育まれた人間関係の妙と粋に 心が温かく満たされる、珠玉の人情譚七編。 大人気シリーズ、堂々完結!