出版社 : ポプラ社
『食堂かたつむり』--「食べることは、生きること」 『ライオンのおやつ』--「死にむかうことは、生きること」 小川糸が描き出す、3つめの「生」の物語 「愛することは、生きること」 傷口に、おいしいものがしみていく 苦しい環境にあり、人を信頼することをあきらめ、 自分の人生すらもあきらめていた主人公が、かけがえのない人たちと出逢うことで自らの心と体を取り戻していく。 主人公の小鳥のささやかな楽しみは、仕事の帰り道に灯りのともったお弁当屋さんから漂うおいしそうなにおいをかぐこと。 人と接することが得意ではない小鳥は、心惹かれつつも長らくお店のドアを開けられずにいた。 十年ほど前、家族に恵まれず、生きる術も住む場所もなかった18歳の小鳥に、病を得た自身の介護を仕事として依頼してきたのは、小鳥の父親だというコジマさんだった。 病によって衰え、コミュニケーションが難しくなっていくのと反比例するように、少しずつ心が通いあうようにもなっていたが、ある日出勤すると、コジマさんは眠るように亡くなっていた。 その帰り、小鳥は初めてお弁当屋さんのドアを開けるーー
2018年1月11日。 新潟県三条市で、JR信越線が大雪で立ち往生するという事件が発生。 高校生男女たちも電車に閉じこめられ、 15時間”密室”となった車内で、熱い恋が動き出す……! 実際に起きた事件を基に、ラストの思いがけないどんでん返しまで鮮やかに描き切る、綾崎隼、待望の恋愛ミステリ。 センター試験2日前、歴史に残る最強寒波が新潟県全域を襲った。 放課後、受験勉強を終えた三条市の高校三年生、石神博人は大雪の中、最寄りの三条駅に着いたが大混雑で電車は全然来ない。自宅のある帯織駅までは2駅とはいえ約7キロあり、この天候で歩いて帰るのは難しい。 18時過ぎ、やっと来た電車に乗り込むと、大混雑の車内で偶然地元の友人、櫻井静時と遭遇する。久々の再会を喜んでいるとき、そのスマホに博人が想いを寄せる幼馴染み、三宅千春からメッセージが届いたのを見てしまう。しかも静時は気づいたはずなのにメッセージを開かず、通知は300を超えていた。密かに動揺する博人だったが、同じ電車に千春も乗っていて……? はからずも雪の密室に囚われた夜、高校生たちは誰かを強く想った。逃げ出すことさえ許されない電車内で、祈るように未来を思った。 ーーこれはそんな夜に起きた、たった一晩の、まだ愛には至らない恋の物語。 装画:orie ■著者プロフィール 綾崎 隼(あやさき・しゅん) 1981年新潟県生まれ。2009年、第16回電撃小説大賞<選考委員奨励賞>を受賞し、『蒼空時雨』(メディアワークス文庫)でデビュー。受賞作を含む「花鳥風月」シリーズ、「君と時計」シリーズ(講談社)、『盤上に君はもういない』『この銀盤を君と跳ぶ』(KADOKAWA)、『死にたがりの君に贈る物語』(ポプラ社)など著作多数。
東京・本所で、弓道、剣道、茶道を伝える“坂東巴流”。貧乏流派を継ぐのを厭い京都に出奔した過去を持つ嫡男・友衛遊馬を取り巻く人々も、さまざまな想いを抱えながら、ままならない毎日を送っていてー。佐保が出会った呉服屋に隠された「秘密」、翠と哲哉のじれったい恋模様、カンナと幸麿の娘・希の小学校サバイバル術、三十路を迎えた遊馬の日々。豊かな日本文化に育まれた人間関係の妙と粋に心が温かく満たされる、珠玉の人情譚七編。
ある日、豪邸に住む高齢の姉妹が二人とも亡くなった。 老姉妹は、なぜこんな豪邸に二人だけで住んでいたのかー? 地域福祉課に異動になった青年・青葉が紹介されたのは、大きな屋敷に住む八〇歳の老女・香坂桐子だった。桐子は元教師で顔が広く、教育から身を引いてからも町の人から頼りにされていた。妹の百合子と二人だけで暮らしているというーー。 物語は二〇二四年から二〇年ごとに遡り、姉妹の人生が少しずつ紐解かれていく。戦争孤児で親戚をたらいまわしにされてきた彼女たちは、いつか自分たちだけの居場所を手に入れて、二人で幸せになろうと誓った。しかし、ある選択を迫られて……。 デビュー作『つぎはぐ、さんかく』が話題となった注目の若手作家がおくる、 二人の女性の人生を壮大なスケールで描いた感動の物語。
遠州峰生の名家・遠藤家の邸宅として親しまれた常夏荘。10歳の時にこの屋敷に引き取られた耀子は、寂しい境遇にあっても周囲の人々の優しさに支えられて子ども時代を生き抜いてきた。時を経て38歳になった耀子は、ある日、夫の龍治から突然離婚を切り出される。その思いもよらない理由に耀子は驚くが、それを機に自分にとって本当に大事な人が誰だったのか、思いを巡らし始めるー。耀子の葛藤、娘・瀬里の巣立ち、義母・照子の愛。激動の時代に遠藤家の三代の女たちが守り抜いた家と暮らしは、峰生に暮らす人々にとってもかけがえのない居場所になっていく。『雲を紡ぐ』『犬がいた季節』の伊吹有喜、15年の集大成。大感動の大河小説。
中学校には馴染めず、厳しい母親に叱られ家庭でも居場所がない。夏子は日々を無気力に過ごしていた。心の支えは、妹のチイちゃんと共にお話を創ることと、チイちゃんの推しのアイドル・羽猫くんの動画を一緒に視聴すること。しかしそんな様子を見かねた母親は、夏子が目を背けてきた「現実」を突き付けてくる。さらに羽猫くんが活動を休止してー。すべてを失った夏子は、巡礼の旅に出る。喪失を知った少女の再生を描く、ひと夏の奇跡をたどる青春小説。第12回ポプラ社小説新人賞奨励賞受賞作。
交通事故に遭い、アニメ「きみといっしょに歩きたい」の悪役・城ヶ崎アクトに転生した「僕」には、ある計画があった。ヒロイン・葉山ハルを、白血病で死ぬエンディングから救うのだ。生前、このアニメの熱烈なファンであり、シナリオを知り尽くした「僕」なら、その運命も変えられるはずだと考えていた。しかし、相関図は変わっても、病気はシナリオ通りに進行しはじめー。「神」が残した生存ルートを探し出し、「僕」は「彼女」が生きてる世界線を見ることができるのか。数多の名作を手掛けてきた著者だからこそ書ける、創作へのリスペクトと怒りを込めた感動の大長編!
マッチングアプリで知り合った二人目と別れたばかりの佐野朋香。妻とも娘ともうまくいかず、仕事も行き詰まる片山達児。むかしの大切な仲間を若くして喪った青井千草。後輩の陰口にショックを受けて会社を辞め、半年が過ぎた新川剣矢ー。平凡な暮らしが揺れ始め、岐路に立つ四人。行き違い重なりあう日々が新しく輝き出す物語。
外敵に襲われ逃げ出したところを、茂さんに助けられたチャボの桜。茂さんは、仕事も人間関係もうまくいかず調子を崩して、東京の下町の商店街でジイチャンが営む金物店の二階に居候している。ある日、茂さんを外へ連れ出してくれる相手を探しに出かけた桜は、さまざまな出会いを引き寄せることにー。本邦初!キュートでユーモラスなチャボ小説。
大ファンだったアーティストの担当になったものの、努力が結果に結びつかず苦悩する若手レコード会社社員、上司の期待に応えようとするあまり、知らないうちに心身を壊してしまった40代手前の女性、久しぶりの恋の予感にときめくカメラマン、合唱コンクールで伴奏と曲のアレンジを任された女子高生、海辺の町のリサイクルショップで壊れた物を修理し続ける男性ー。時に慰め、時に励まし、彼らの人生の岐路に寄り添っていた一つの曲が、場所や時間を超えて広がっていく奇跡を、ミュージシャンとしての経験を持つ著者がみずみずしく描いた連作短編小説。
もう、何をする気にもなれないー芳枝はひとり、暗い家に閉じこもっていた。だが、その扉を叩く見知らぬ男の子があらわれる。その子は太陽を探しに行くのだというー。「あなたは、だれなの?」太陽が消えた闇の世界で、子どもが大人を導いていく。代表作『あん』が23言語に翻訳され、世界のリテラシーエージェントが注目するドリアン助川の希望の書。
母を亡くした小学校六年生の鳴海翔は、父・英一と離れて母方の実家に預けられた。さびしさをこらえて新しい暮らしに慣れようとするが、その町には一筋縄ではいかない大人の世界があったー。万引きを奨励する母と暮らす大也、狭い家のなかで暴れる父との関係に苦しむ美波、そして親から離れて暮らす翔。大人たちの身勝手さにもみくちゃにされながらも、三人はしだいに心を近づけていく。過酷な現実の波をかぶりながら不思議な明るさを失わない子どもたちが明日へ踏み出していく勇気の物語。第12回ポプラ社小説新人賞特別賞受賞作。
丘晴人は、君立市君乃町に住む中学2年生。両親が「有限会社オカリナ探偵局」という探偵事務所を営んでいるため、町の有象無象の面倒事や困り事が舞い込む。両親の手伝いで事件に立ち会う中で、晴人が目にした数々の不思議な出来事。これって、幽霊がやったとしか考えられないー!事件解決の糸口を見いだせない晴人がひょんなことから出会ったのは、廃墟に住む、「博士」と名乗る謎の女性。「ひらめき研究所」の看板を掲げ、謎の発明に日夜没頭する彼女に事件を相談するのだがー。『謎解きはディナーのあとで』の東川篤哉が描く、連作短編ミステリー。
母の死をきっかけに生きる意味を見いだせなくなった槐は、職も失い、川越で染織工房を営む叔母の家に居候していた。そこに、水に映る風景画が人気の女性画家・未都の転落死事件に巻き込まれ、心を閉ざしていた従兄弟の綸も同居することに。藍染めの青い糸に魅了された綸は次第に染織にのめり込んでいく。ある日、槐の前に不審な男が現れ、綸が未都の最後の言葉を知っているはずだと言う。死の謎を探りながら、槐は「なぜ生き続けなければならないのか」という問いと向き合っていくー。
人と暮らすって不自由で息苦しくて、でも時々たまらなく愛おしい。カップル、父娘、隣人同士。5つの生活を通して、誰もが記憶のかたすみに持つ暮らしの中の悲喜交交を、優しく掬い上げた連作短編集。
高校二年生の寿美子には、れいちゃんという幼なじみの友人がいる。同じ高校に進学し通学を共にしているふたりだが、過去に複雑な事情を持つれいちゃんは、可憐な容姿とは裏腹に、他人の容姿を貶めたり、陰口を撒き散らすことで他人とコミュニケーションをとる少女だった。そんな態度に違和感を覚え始める寿美子だが、やがて彼女の吐く毒は自分自身にも及んでいるのではないかと思い至りー。互いを傷つけ合いながらも一緒にいる、思春期の複雑な友人関係。業界注目の新鋭・砂村かいりが贈る、一言では片づけられない、少女同士の関係性に切り込んだ青春小説。
京都東山の住宅街に佇む瀟洒な洋館「東山邸」には、年の離れた小鳥遊姉妹ー葉月と美沙が暮らす。葉月は人気脚本家だったが、批判を受け、思うように書けないでいた。ある夜、祇園の小料理屋で駆け出し俳優の鈴木英輔の出演ドラマを酷評していると、お忍びで来ていた英輔本人と遭遇。「あなたの先生になってあげる」と啖呵をきった葉月は英輔と京都を舞台に奔走し、やがてある事件が起きて…。一緒に英輔を“推し”ながら、気づけば仲間に囲まれ、ラストは温かな涙がこぼれる傑作長編!
地方都市の寂れた町にある葬儀社「芥子実庵」。仕事のやりがいと結婚の間で揺れる中、親友の自死の知らせを受けた葬祭ディレクター、元夫の恋人の葬儀を手伝うことになった花屋、世界で一番会いたくなかった男に再会した葬儀社の新人社員、夫との関係に悩む中、元恋人の訃報を受け取った主婦…。死を見つめることで、自分らしく生きることへの葛藤と決意を力強く描きだす、本屋大賞受賞作家、新たな代表作!