出版社 : 中央公論新社
父が遺したアトリエ兼自宅で革製品の修理をして生計を立てている透子。十年前から止まっていた歯車が、婚約者だった男との再会によって動き出した。目を背けてきた過去と向き合う時、浮かび上がるのは「あの女」…彼女からすべてを奪った事件の真相を、アトリエに持ち込まれる品々にひそむ人間ドラマとともに描きだす。
廃校が決まった東玉川高校、通称トンタマ。卒業を控えた最後の生徒たちの「終わり」に満ちた平凡な毎日は、熱血中年非常勤講師・ジン先生の赴任で一変した。暑苦しい「レッツ・ビギン!」のかけ声に乗せられて、大道芸に出会った省エネ高校生が少しずつ変わっていくーきっと何か始めたくなる、まっすぐな青春賛歌。
東京と秋田で、トリカブトによる毒殺事件が発生。手口に一貫性がなく、同一犯か複数犯か絞れず捜査は難航していた。その最中、耳や手首が切り取られた惨殺死体、銃殺死体が東京近郊で相次いで見つかる。すべての現場に残る同一人物の指紋から、SRO室長の山根新九郎はある仮説を立て犯人に迫っていく。大人気警察小説、待望のシリーズ第六弾。
日村誠司が代貸を務める阿岐本組は、所帯は小さいが、世の中からはみ出た若い者を抱えて、天下に恥じない任侠道を貫いてきた。ところが最近、一部の地元民から暴力団追放の動きが起こり、めっきり肩身が狭くなった。そんな中、今回、組長が持ち込んだのは病院の再建話。日村は、個性豊かな子分たちと、潰れかけた病院の建て直しに奔走するが…。笑いあり涙ありのおなじみ「任侠」シリーズ第三弾!
人類の存亡を懸けた第一次オリオン大戦は終結した。地球連邦に束の間の平和が訪れるも、戦後処理への不満は各地で増大。内乱の危機が忍び寄るなか、日系惑星出身の二人の男が植民惑星に赴くが…。二十二世紀末、銀河へと版図を広げた人類の苦闘を描くSF巨篇。書き下ろし短篇「救難任務/泥森の罠」収録。
田舎の屋敷で不可思議なモノに遭遇した理理花は、その後、普通の日常を取り戻していた。そんな彼女の平穏は、顔だけが取り柄の傲岸不遜で忌々しい男・草月の登場で終わりを遂げる。彼は失踪した理理花の父親の記録を見せろと、家に押しかけてきたのだ。だが時を同じくして、理理花の家に別の侵入者が。それはなんと、怪力を駆使する老婆でー!?
日村誠司が代貸を務める阿岐本組は、今時珍しく任侠道をわきまえたヤクザ。その阿岐本組長が、兄弟分の組から倒産寸前の出版社経営を引き受けることになった。舞い上がる組長に半ば呆れながら問題の梅之木書房に出向く日村。そこにはひと癖もふた癖もある編集者たちが。マル暴の刑事も絡んで、トラブルに次ぐトラブル。頭を抱える日村と梅之木書房の運命は?「任侠」シリーズ第一弾(『とせい』を改題)。
恋も仕事も中途半端、片山製作所勤務の「役立たずOL」梢恵に、ある日まさかの社命が下されたー単身長野に赴き、新燃料・バイオエタノール用のコメを作れる農家を探してこい。行く先々で断られ、なりゆきで農業見習いを始めた24歳に勝算はあるか!?働くこと、生きることの意味を問う、『ジウ』シリーズ著者による新境地。
藤本弘氏とのコンビの共同ペンネーム「藤子不二雄」で漫画家デビューを果たして以来、歩み続けた漫画家人生六十余年!その寄り道回り道、波瀾万丈の「まんが道」をユーモアたっぷりに綴る。単行本『78歳いまだまんが道を…』刊行後の三年間を加筆、改題したファン待望の文庫版。
私立篤風高校で起きた残虐な殺人事件。被害者は扼殺されたあと、内臓を抜かれていた。半年前の事件の影響で本庁から葛飾署に左遷された和賀も現場に急行する。被害者が残した謎の言葉「くまり」を手がかりに独自の捜査を進める和賀は白昼の路上で襲撃される。窮地を救ったのは、前の事件の最重要人物ー夏月だった。
休暇で京都を旅行中の十津川警部は、美しくも寂しげな女性に出会うが、彼女は「私は、彼を殺します」とノートに記した後、姿を消してしまった。十津川は事件を未然に防ごうと奔走するも、嵯峨野の竹林で女の他殺体が発見され、半月後には警視庁の近くでも男の死体が。嵯峨野から貴船、清水寺、鴨川、そして祇園祭ー古都を十津川が走り抜ける。
往時の姿をとどめる貴重な街道風景、古き良き旅籠の情緒、旅人の心を躍らせる豊かな食文化ー。中山道の魅力を、時代小説『一路』の世界とともに紹介。取材執筆秘話から中村獅童、渡邊あゆみ両氏との対談など、様々な角度から作品を繙いていく。本書を片手に、いざ、浅田次郎を唸らせた中山道の旅へ!
弁護士事務所で働く風町サエは、殺人罪で服役経験を持つシングルマザー。十六歳で不登校の息子がいる。表向きは事務員だが、実際には様々な手口で依頼主の要望に応える調査員。プロ野球選手とモデルの離婚慰謝料を巡り動くサエだったが、同時にある殺害事件についての調査も言い渡される。歪んだ愛の発端は三十四年前に遡りー。
渋谷の片隅で警察関係者の遺体が見つかった。明らかな他殺体を自殺と断定した鑑識課の検視官・綾織美音。疑念を抱いた捜査一課上層部は、晴山旭警部補に内偵を命じる。彼女の目的とは一体?真実を明らかにした晴山の前に現れたのは、警察内に潜む巨大な闇の存在だったー。
体調不良を引き起こす呪いの藁人形、深夜の研究室に現れる不審なガスマスク男、食べた者が意識を失う魅惑の“毒”鍋。次々起こる事件を、Mr.キュリーこと沖野春彦と庶務課の七瀬舞衣が解き明かすーが、今回沖野の前に、かつて同じ研究室で学び、袂を分かった因縁のライバル・氷上が現れた。彼は舞衣に対し、沖野より早く事件を解決してやると宣言し!?
アパレルショップをリストラされた沙智は心機一転、ファッション誌の編集者を目指して出版社へ。しかし、配属されたのは販売促進部ー通称“ハンソク”。しかも無名作家の小説を「ミリオンセラーにせよ」との特命まで課せられた。編集、書店をはじめ業界全体を巻き込んだ新人営業女子の活躍が始まる!
丸の内のオフィス街で爆破事件が発生。現場の物流企業で事情聴取を行った一之瀬は、企業脅迫事件と直感する。昇進前の功名心から事件担当を名乗り出ると、教育係の藤島からは一人でやれ、と突き放されてしまった。管内で新たに殺人事件も起き…。新米刑事・一之瀬に、自立の刻が訪れる。文庫書き下ろし第三弾。
近衛中佐・新城直衛は捕縛に現れた騎兵中隊を瞬時に無力化し、直ちに聯隊に復帰。賊徒より皇宮を奪還し陛下の御宸襟を安んじ奉るべく、“近衛嚮導聯隊選抜龍挺隊”を編成、宮城突入を下命した。市街全域を叛乱軍が制圧し、五将家の策謀が蠢くなか、新城は自らの手で血路を拓く!皇都動乱、遂に決着!!書き下ろし短篇「猫のいない海」収録。
チェーホフを訳し始めて三十年超。このユモレスカ二冊で、個人全訳が終わる。チェーホフを訳すことで、慰められ、励まされてきたという訳者。推敲を重ねたていねいな訳文から、ロシア民衆の愛すべき姿、優しい心根が浮かび上がる。傑作の名高い作品から知られざる名品まで、短篇小説好き垂涎の魅力的な作品群。人間がいとおしくなる読書体験。