出版社 : 中央公論新社
16世紀から、略奪と侵略を繰り返された黄金の国、ペルー。遺跡の発掘調査のためカハマルカに向かう考古学者・小矢哲生とその研究チームは、黄金の出土品を狙う何者かに襲撃されるが…。南米ペルーの遺跡を舞台に展開する、著者最後の冒険小説。
荷風の激賞をうけ颯爽文壇に登場した谷崎。-清吉と云う若い刺青師の腕きゝがあった。彼の年来の宿願は、光輝ある美女の肌を得て、それへ己れの魂を刺り込む事であった。官能的耽美的な美の飽くなき追求を鮮烈に描く「刺青」ほか、「麒麟」「少年」「幇間」「飆風」「秘密」「悪魔」「恐怖」の七篇を収める、初期短編名作集。
トップの座を目前に住友を去った著名な経済人にして一代の歌人川田順と、短歌の弟子である若き京大教授夫人の灼熱の恋…。戦後の日本を背景に、二人の恋の道程を、繊細に、端正に、香り高く描く、昭和を代表する愛の物語。第三十回谷崎潤一郎賞受賞作。
同時に、しかも別々に誘拐された美貌の妻と娘の悲鳴がはるかに聞こえる。自らが小説の登場人物であることを意識しつつ、主人公は必死の捜索に出るが…。小説形式からのその恐ろしいまでの“自由”に、現実の制約は蒼ざめ、読者さえも立ちすくむ前人未踏の話題作。泉鏡花賞受賞。
長い闘病の苦難を通して現代医療の体質を問い、生きる希望を語る。繰り返す入退院、薬の副作用、医師の辛い態度、心身をさいなむ痛み、そして車椅子生活…。精神的肉体的に追いつめられながらも、もちこたえた日々を綴った感動の記録。
彼らは北極点を目ざした…百年以上昔の北極航海日誌を自ら再現しようとした一人の男の狂気が、氷と闇の「物語」の果てに消滅してゆく-。現代ドイツ文学の鬼才ランスマイアーの『ラスト・ワールド』に先行する傑作。待望の本邦初訳。
現代イギリス文学界の旗手が描く過ぎた日々の記憶と、現在が行きかう濃密な作品世界-’96年度ブッカー賞受賞作。亡き友の最後の願いを叶えるため、四人の男は海へ向かう。挫かれた夢、嫉妬や裏切り、そして美しい思い出…とむらいのドライブが進むにつれ明らかになる、それぞれの人生と関係。