出版社 : 人文書院
文化資本が異なる言語間の翻訳をめぐる葛藤とは? 19世紀初頭の民族再生運動のなかで、チェコ語の復興をめざし、芸術言語たらしめようとした、近代チェコ語の祖ユングマン。ナチスが政権を掌握しようとした時代、多民族と多言語のはざまで共生を目指したユダヤ系翻訳家アイスネル。冷戦下の社会主義時代における亡命作家クンデラ。ボヘミアにおける文芸翻訳の様相を翻訳研究の観点から明らかにする。 ◎目次 はじめに 小言語の翻訳を論じること 第1部 ヨゼフ・ユングマン 第1章 十九世紀初頭のチェコ語 第2章 『言語芸術』 第3章 『アタラ』の翻訳 第4章 辞書 第5章 翻訳の機能 第2部 パウル・アイスナー/パヴェル・アイスネル 第1章 言語のはざまで 第2章 アンソロジー 第3章 「共生」に関する言説 第4章 ユダヤ性について 第5章 翻訳をめぐる言葉 第3部 ミラン・クンデラ 第1章 翻訳者クンデラ 第2章 翻訳されなかった作品 第3章 「小文学」を翻訳する 第4章 「真正版」という概念、あるいは小説の変容 第5章 翻訳される作品、あるいは「大いなる帰還」 参考文献 結びに 索引 はじめに 小言語の翻訳を論じること 第1部 ヨゼフ・ユングマン 第1章 十九世紀初頭のチェコ語 第2章 『言語芸術』 第3章 『アタラ』の翻訳 第4章 辞書 第5章 翻訳の機能 第2部 パウル・アイスナー/パヴェル・アイスネル 第1章 言語のはざまで 第2章 アンソロジー 第3章 「共生」に関する言説 第4章 ユダヤ性について 第5章 翻訳をめぐる言葉 第3部 ミラン・クンデラ 第1章 翻訳者クンデラ 第2章 翻訳されなかった作品 第3章 「小文学」を翻訳する 第4章 「真正版」という概念、あるいは小説の変容 第5章 翻訳される作品、あるいは「大いなる帰還」 参考文献 結びに 索引
日本と朝鮮、戦時下における文化「協力」 〈内鮮一体〉の掛け声のもと一度は手を取り合いながら、戦後には否認された数々の経験と記憶。忘れ去られたその歴史を掘り起こし、「協力vs抵抗」では捉えきれない朝鮮人作家たちの微細な情動に目を凝らす。日本と朝鮮半島に共有された植民地近代という複雑な体験がもたらす難問に挑み、ポストコロニアル研究に新たな光を当てる画期作。 「本書で論じられるのは、「韓国(朝鮮)と日本の近代史において親しく分有され、しかし否認されてきた植民地的過去と、アジア・太平洋地域において争われているその遺産の広範な意味」である。植民地末期に活躍した金史良(キムサリャン)、張赫宙(チャンヒョクチュ)、姜敬愛(カンギョンエ)ら植民地朝鮮出身作家とその作品は、日本帝国の崩壊後、日本では忘却もしくは周縁化され、韓国と北朝鮮では対日協力と抵抗の二分法的論理に基づいて分類・評価されてきた。クォンは、これらの作品がーー植民地期からポストコロニアル期にかけてーー生産/翻訳/消費されるプロセスを徹底して追跡することによって、記憶の抹消や固定的な二分法を乗り越え、コロニアルな近代経験が孕む難問(コナンドラム)を明るみに出していく。」(訳者あとがきより) 日本語版への序文 謝辞 第1章 植民地近代性(コロニアル・モダニティ)と表象の難問(コナンドラム) 第2章 朝鮮文学を翻訳する 転換期と危機 朝鮮文学とは何か 植民地文学、国民文学、世界文学を議論する 朝鮮文学の歴史を構築する 第3章 マイナー・ライター 言語的な故郷喪失 一九四〇年の芥川賞 植民化された私小説 純文学の驕り 第4章 光の中に 手紙の交換 「光の中に」 非家庭的な家庭 解体する形式 未決の結末 第5章 コロニアル・アブジェクト (自己)反省的なパロディ 植民地のモダンボーイ(モー鮮人) 植民地のモダンガール 討論:国民文学の再構築 第6章 コロニアル・キッチュを演じる 〈春香伝〉の語り直し 植民地ノスタルジアと帝国ノスタルジアのはざまで 民族的伝統としての春香物語(「春香伝」) コロニアル・キッチュとしての「春香伝」 村山知義と張赫宙 「朝鮮らしさ」の翻訳 植民地の言語と翻訳(不)可能性 植民地朝鮮での座談会 「帰郷」という問題 第7章 トランスコロニアルな座談会を盗み聞きする 日本における座談会の登場 座談会を盗み聞きする 座談会「朝鮮文化の将来」 コロニアルな他者を検閲する 第8章 地方への転回 植民地から地方へ 帝国のはざまの朝鮮 帝国のマスメディアと循環する地方 植民地コレクション 第9章 満洲の記憶を忘却する 植民地の真相のパラドックス 阿片の密売 コロニアル・リアリズムのポストコロニアル体制 第10章 ポストコロニアリティの逆説 ポストコロニアル・ノスタルジア 帝国の三角関係 帝国を否認する アジアにおけるポストコロニアリティはいつなのか 冷戦とポスト冷戦のパラドクス べつの手段による帝国 訳者あとがき 人名索引
無力な私たちは権力に対してどう声をあげるべきか? チェコの劇作家、大統領ヴァーツラフ・ハヴェルによる 全体主義をするどく突いた不朽の名著 真実の生をいきるために私たちがなすべきことは何か すべてはロックミュージシャンの逮捕から始まったーー。かれらの問題は自分たちの問題だと共鳴した劇作家は、全体主義の権力のあり様を分析し、「真実の生」、「もう一つの文化」の意義を説く。このエッセイは、冷戦体制下の東欧で地下出版の形で広く読まれただけでなく、今なおその影響力はとどまることを知らない。形骸化した官僚制度、技術文明の危機を訴える本書は、私たち一人ひとりに「今、ここ」で何をすべきか、と問いかける。無関心に消費社会を生きる現代の私たちにも警鐘をならす一冊。解説、資料「憲章77」を付す。 東欧の民主化から30年、人権と自由を考えるために今なお重要なテクスト。「力のない人びと」の可能性とは? 本邦初訳! 力なき者たちの力(一〜二二) 【資料】憲章77 訳注 解説 訳者あとがき
父と墓地に暮らす少年は、ある夜、男女の心中を目撃した。数年後、少年は死んだ男の娘を連れて列車の旅に出る。二人の眼に映る、敗戦下の日本とは。生を奪われた無数の子どもたちに想いを馳せ描く冒険譚。 単行本未収録「犬と塀について」併録 津島佑子に飛躍をもたらしたのは、 彼女が安吾の作品に見出した 「ひんやりとした、熱い風」である。 それこそが「兄」である。以後、 津島佑子はこの「兄」に連れられて、 オオカミ=遊動民の旅に出たのである。 --柄谷行人「津島佑子とオオカミ」より 笑いオオカミ 犬と塀について 解説 柄谷行人
欲望すること。歳をとること。人間であること。 円熟期にある作家が、今どうしても伝えたいこと。 「人間のモラル」の底を描く、余韻に富んだ最新作。 ノーベル賞作家が、これまで自明とされてきた近代的な価値観の根底を問い、時にシニカルな、時にコミカルな筆致で開く新境地。英語オリジナル版に先駆け贈る、極上の7つの物語。 1 犬 2 物語 3 虚栄 4 ひとりの女が歳をとると 5 老女と猫たち 6 嘘 7 ガラス張りの食肉処理場
<b>母さん、あの大仏をこわしてよ!</b> 母を失くした居場所なき少年は、この世の権威を憎んでいた。その象徴をこわしたとき、男たちが作り上げた正史の余白から、いかなる物語が流れ出るのか。時空を超え、生死の境に降り立つ未踏の日本文学。 未収録短編「ヒグマの静かな海」併録 大仏を例えば「基地」なり「日本人」なり「原発」なりに置き換えれば、同じ構造が現代のそこかしこに存在している。 そして、存在しなかったことにされている生が、心情が、語られることのない物語として、聞こえない声で語り続けられている。 ーー星野智幸「声のかけらの氾濫」より ナラ・レポート ヒグマの静かな海 声のかけらの氾濫 星野智幸
だけど、大人ってなんだ、それに老人ってなんだ? 歳を取った子どもだよ 老いるとは? 長年つれそった夫婦の愛情とは? 共産党時代のソ連への旅のなかで、ささいな誤解から生じた老年カップルの危機と和解。 男女それぞれの語りが視点を交互に替えて展開される。大きな話題を呼んだ傑作小説! 老夫婦におこった擦れ違いを繊細な筆致で描く。 「作品全体を通して流れているのは、他者との意思疎通の問題である。しかしながら、この小説はとりわけ、老いがもたらす影響ーー身体の衰弱、性へのあきらめ、計画の断念、希望の喪失といった苦くつらい影響への探求へと向かう。」------エリアーヌ・ルカルム=タボンヌ 序文より
よく見届けて。眼をそらさないで。息子を見失ったその人は、それでも夢をたゆたい記憶を辿りながら、共に過ごした時間のあの喜びを見届けてくれる存在を求めつづけた。囚われなき情愛を通じて、人生を再び歩み始めるまでの道程を描く傑作。
あなたはなぜ書いたのか、一人で子を成す孤独を。あなたも知っていたのか、子を奪われる苦しみを。千年の時を超え、平安時代の王朝物語「夜の寝覚」の作者とともに、人間の幸福の意味を問いかける名著。 解説=木村朗子(津田塾大学国際関係学科教授) 夜の光に追われて 人間存在が時の流れを超えるとき 木村朗子
ヴェトナム戦争末期、プロパガンダを練るエリート青年。18世紀、南部アフリカで植民地の拡大に携わる白人の男。ふたりに取りつく妄想と狂気を、驚くべき力業で描き取る。人間心理に鋭いメスを入れ、数々の傑作を生みだしたノーベル賞作家、J・M・クッツェー。そのすべては、ここからはじまる。 ヴェトナム計画 ヤコブス・クッツェーの物語 J・M・クッツェーと終わりなき自問 くぼたのぞみ J・M・クッツェー全作品リスト
1985年の春、その人は息子を失った。そして絶望の果てに、夢と記憶のあわいから、この「連作」を紡ぎはじめた。彼女は何を信じ、何に抗いつづけているのか。聞き届けられるべき、不滅の物語。
ディストピアではない。これが現実だ。星野智幸の代表作を4テーマに分類。単行本未収録の作品等とあわせた初の自選作品集〈第3巻〉 私を死に追いやるのは誰か。自死の連鎖の中でもがく「無間道」三部作、植物的な死生観を人間世界に持ち込んだ「アルカロイド・ラヴァーズ」、単行本未収録の短篇四篇を収録。 「自死への境界を見つめ、異類である植物としての生命を幻視する。読み終えれば、緑いろの他者があなたに奇怪な生への呼びかけを始めるだろう。」-いとうせいこう氏(作家) 無間道 アルカロイド・ラヴァーズ 植物転換手術を受けることを決めた元彼女へ、思いとどまるよう説得する手紙 スキン・プランツ 記憶する密林 桜源郷
ディストピアではない。これが現実だ。星野智幸の代表作を4テーマに分類。単行本未収録の作品等とあわせた初の自選作品集〈第4巻〉 私は移民に何を見るのか。私/かれらの境界を突破する「目覚めよと人魚は歌う」「砂の惑星」「チノ」「ハイウェイ・スター」、単行本未収録「人魚の卵」「風の実」等を収録。 「人も価値観も想像力も、越境していく愉悦の書。遠いどこかの何かと、今ここにいる自分を結び付けてくれるのが、星野作品である。」-瀧井朝世氏(ライター) 目覚めよと人魚は歌う 砂の惑星 ノン・インポルタ チノ ハイウェイ・スター エア 紙女 砂の老人 トレド教団 ペーパームーン 雛 人魚の卵 風の実
ディストピアではない。これが現実だ。星野智幸の代表作を4テーマに分類。単行本未収録の作品等とあわせた初の自選作品集〈第1巻〉 私はなぜ権力になびくのか。人々が政治に求める欺瞞と暴力をえぐる「在日ヲロシヤ人の悲劇」、大幅改稿「ファンタジスタ」、短篇三篇の他、単行本未収録「先輩伝説」を収録。 「何度でも読み返されるべき小説。この社会の酷薄さ(リアル)を知るために。星野さんはずっとひとりで、最悪を想像し、現実の醜さを暴き、警鐘を鳴らし続けてる。」-中島京子氏(作家) 在日ヲロシヤ人の悲劇 ファンタジスタ ててなし子クラブ われら猫の子 味蕾の記憶 先輩伝説
ディストピアではない。これが現実だ。星野智幸の代表作を4テーマに分類。単行本未収録の作品等とあわせた初の自選作品集〈第2巻〉 私はいつ集団に呑み込まれたのか。家族依存・国家依存からの脱出口を探る「毒身」二部作、「ロンリー・ハーツ・キラー」の他、単行本未収録「フットボール・ゲリラ」を収録。 「この国を支配する空気をかき乱す、やわらかな思考がここにある。星野智幸の小説とともに生きることが、どれほど幸せなことか、読者は実感するだろう。」-陣野俊史氏(文芸評論家) 毒身温泉 毒身帰属 ロンリー・ハーツ・キラー フットボール・ゲリラ
『閨房哲学』は、18世紀以前の思想や同時代の啓蒙思想が入り込み、豊饒なテクストが形成されている。サドの哲学が性と見事に結びついたリベルタン文学の集大成であり、とりわけ途中挿入された「フランス人よ、共和主義者になりたければあと一息だ」は有名だ。これまでにも翻訳がみられるが、本書は18世紀初版本の当時のテクストを忠実に再現し、最新の研究成果をともなった詳細な注と解説を付す決定版といえる。
厳格さで知られる初老の美術鑑定士と決して姿を見せない謎の女。美術と骨董とオークションの世界に彩られた鮮やかなミステリー。『ニュー・シネマ・パラダイス』の監督による初めての原作小説。