出版社 : 光文社
信長の世。バテレンの密送を依頼された船乗り。どうにもならぬしがらみがあり引き受けたものの、行く手には海賊やらキリスト教に厳しい勢力やらが待ち受けている。その上、船ではバテレンがわがままし放題。面倒ごとの尻ぬぐいは全て主人公にのしかかってきて(「バテレン船は沖を漕ぐ」)。他、登場人物に応援と同情をしたくなる上質な七つの物語。
長年勤めていた銀行を上司との軋轢から辞めた池澤。退職後は経験を生かしてコンサルティングや雑文を書いたりしてやっと食べているような生活ぶりだ。そんなときかつて後輩だったという女性から一通のメールが舞い込んだ-。
その夜わたしは人を殺しに車を走らせていた。突然、停電のため暗闇が街を襲う。そして二時間後、事件はすでにわたし抜きで起こってしまっていた。-わたしは小学校の教員。愛した女には危険な愛人がいた。ふたりで殺害計画を企てるが…。男は約束を守れなかった。女は実行した。思いがけない結末。ふたりを待つ現実。切ない「思い」が胸を打つ傑作長編。
広告代理店営業部長の佐伯は、齢五十にして若年性アルツハイマーと診断された。仕事では重要な案件を抱え、一人娘は結婚を間近に控えていた 。銀婚式をすませた妻との穏やかな思い出さえも、病は残酷に奪い去っていく。けれども彼を取り巻くいくつもの深い愛は、失われゆく記憶を、はるか明日に甦らせるだろう! 山本周 五郎賞受賞の感動長編、待望の文庫化。
小説短編集は売れないと言われる。複数作家によるアンソロジーとなると、さらに敬遠されがちになるのが実情だ。かく言う筆者も、どうせ読むならドシンと重たい長編を、と思ってしまう。が、ご存じだろうか?世に傑作と謳われる映画の多くは、短編小説を原作としている事実を。発想と構成という点において、作り手が投入するエネルギーは長編も短編も変わらないのだということを。本書に収録された玉編の中に、十年後の伝説が潜んでいる可能性は十分にある。決めるのは時間、確かめるのはあなただ。
14歳の少女が、友人、家族、憧れの人との関係のなかで、一つずつ自分の感情を増やしてゆく-進学や恋愛、就職の悩み…誰にでも訪れる当たり前のような出来事を、自分らしく受け止め、大人の入口に立つ23歳になるまでを丁寧に辿る。
東京・調布に自動車整備工場を構えた大道寺勉がテレビの中に見つけたのは、二十三年前、アメリカのサバイバルキャンプ時代に初めて愛を交わした女、マリアン・ドレイパーだった。来日中のハリウッドスターのボディガードを務めていて、大きな交通事故に巻き込まれたらしい。入院中の彼女と再会した勉だが、数日後、彼女は突然病院から姿を消した-。第十回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作家、待望の受賞第一作。
劇団「風呂上り」主宰、苫米地輝は、公演『戦場の面食いホリデー・怒涛の墓参り編』の脚本を数枚書いたまま消えた。残された劇団員、夕暮銀子の凶暴さが牙を剥く。何も知らない二人のゲスト(漫画家・日取河、小説家・満場雪太)のうち、餌食はどっち?体だけの関係の振りをしていた河の相手、安藤三津実もついに立ち上がる!内田春菊初の、ハッピーエンド恋愛長編。
小さなつまずきに大泣きしたり、急にいろいろ嫌になったり。かと思えば突然前向きな気持ちになったり-。ゆるやかに過ぎていく日々が、たまらなく愛しい青春の物語。実家を離れてはじめてのひとり暮らし-ベジタブルハイツ物語2。
藤崎翔は外資系のクレジット・カード会社に勤務する27歳。米国本社の意向による大幅な組織改革=大規模なリストラ計画に飲み込まれた翔は、信頼する上司や同僚たちとともに会社を去り、ベンチャー企業を立ち上げる決意をする。5人でスタートした新会社は「エキノックス」。既成の概念から抜け出した新しいビジネス展開を模索する翔たちだが、なぜか最年少の翔が社長をすることにー。
ゴールドラッシュに沸くカナダ・アラスカ国境地帯。ここでは犬橇が開拓者の唯一の通信手段だった。大型犬バックは、数奇な運命のもと、この地で橇犬となる。大雪原を駆け抜け、力が支配する世界で闘い、生きのびていくうちに、やがてその血に眠っていたものが目覚めはじめるのだった。
臨場ーー警察組織では、事件現場に臨み、初動捜査に当たることをいう。捜査一課調査官・倉石義男は死者からのメッセージを的確に掴み取る。誰もが自殺や病死と疑わない案件を殺人と見破り、また、殺人の見立てを「事件性なし」と覆してきた。人呼んで『終身検視官』--。組織に与せず、己の道を貫く男の生き様を、ストイックに描いた傑作警察小説集。全八編。
ホラー作家・鹿角南のもとに、旧友からメールが届く。ある廃墟で「肝試し」をしてから、奇妙な事が続いているというのだ。ネタが拾えれば、と軽い思いで肝試しのメンバーに会った鹿角。それが彼女自身をも巻き込む戦慄の日々の始まりだった。一人は突然の死を迎え、他の者も狂気へと駆り立てられてゆくーー。 著者の実体験を下敷きにした究極のリアルホラー!