出版社 : 光文社
明治三十三年、東北地方の山間集落・触別村の猩紅川に、双頭の犬と猫足の猿という異形な動物の死体が流れてくる。その数か月後、バラバラにされた人間の死体も流れてきて、村に不穏な空気が立ち込める。同じころ、東京で新人医師として働く衛藤真道は、医科大学時代の恩師・岡に勧められ、触別の鉱山病院へ赴任することに。そこには優秀な医師・殿村がいた。しかし、愛想なく対応され、真道は歓迎されていないのを感じる。貧困と医療の限界に悩みながら、助けられない命と向き合う真道。村に馴染んできたころ、秋祭りの最中、猩紅川にまたしても人間の腕と足が流れてきて…。明治時代の山間集落で起きた猟奇的殺人事件。鉱山で働く囚人たちの不穏な動き。若き医師が辿り着いた哀しい真実。
戦国末期の天正十四年十二月、九州最大の大友家が、今、滅びの時を迎えている。大友宗麟の重臣吉岡家の鶴崎城では、ひとりの留守居の女武将が、御仏に仕える尼僧の身でありながら、女子供年寄りたちと残り、島津軍相手に籠城していた。「一戦も交えずして敵に降るなぞ、武門の恥」と降伏を拒絶し、抗戦の道を選んだ妙。十三年前、激烈な政争によりキリシタンの右京亮との恋は無惨にも引き裂かれ、吉岡家に嫁いだものの、島津との戦で若くして夫覚之進を失う。復讐に燃える妙は、滅びゆく国の小さな城で、驚異の抵抗戦を展開してゆく。著者のライフワーク「大友サーガ」初の女武将を生き生きと描く、戦国ロマン小説!!
中世イングランド、おたずね者となった弓の名手ロビンはシャーウッドの森の奥に隠れ住む。棒術の名人、吟遊詩人、飲んだくれの修道僧など個性豊かな強者たちを仲間に引き入れながら、強欲な役人や聖職者らを相手に痛快な戦いを繰り広げるロビンだが…。著者による挿絵全点収録!イングランドの義賊伝説を元にした痛快活劇。
「八枝様を助けて」。日に二度三度とるいの前に現われては訴える少女おコウの幽霊。おコウは生前、座敷牢で非業の死を遂げた八枝の世話をしていらしいのだが……。九十九字屋主人の冬吾の忠告を守らず、るいはおコウが落としたいわくありげな櫛を持ち帰り、亡魂の怨念騒ぎに巻き込まれてしまう。冬吾と八枝の間にある深い因縁とは? 好評シリーズ第五弾!
「しばらく京で過ごせ」-将軍吉宗の命で道中奉行副役となり、京へ着いた水城聡四郎。「世間を見て来い」という命を果たすべく、吉宗の想い人、竹姫の実家の清閑寺家から紹介された炭屋「出雲屋」へ。出雲屋を訪れた聡四郎は、“京の裏”を探るために木屋町に案内されるのだが…。古都で聡四郎は何を見るのか。著者だけが描ける緊迫したドラマのシリーズ第四弾。
大学生・茶谷は、結婚式場でのバイト中、美しい花嫁・眉子に一目惚れをした。彼女を分かってあげられるのは僕だけだからと、夫の会社に潜り込んで近づいていく。しかし、人を喜ばせることに依存して生きる眉子には、その過剰な自意識すら満たすべき対象となっていたーー。過去の記憶も呼び起こし、思いのすれ違いが生んだひずみは、--暴走を始める。
ふだん離れて暮らす母親を喜ばせようと、お邸のアフタヌーンティーにお呼ばれした凪子。新緑の庭に、英国風のお菓子とおいしい紅茶を運んできたのは、想像を超えた、とてもユニークな人物(?)だったー(「アフタヌーンティーは庭園で」)。中身は中年男性、見た目はキュートな、ぶたのぬいぐるみ。おなじみ山崎ぶたぶたが、周囲に温かい気持ちを広げていくファンタジー!文庫書下ろし。
放浪の碁盤師・吉井利仙が、かつて棋士だったころの打ち回しに魅せられ、彼を先生と呼んで追いかけている若手囲碁棋士の愼。姉弟子の衣川蛍衣も巻き込みながら、囲碁を巡る数々の事件に遭遇し、棋士としても成長していく。コンゲームあり、サスペンスあり、異なる味わいを持つ物語を重ね、囲碁という宇宙に魅入られた人間を描ききった傑作ミステリ登場!
東京入国管理局の難民調査官・如月玲奈は、後輩の高杉純と共に、日本に難民申請したクルド人・ムスタファの調査を行うことに。聴取中、彼の吐く不可解な嘘に玲奈らは困惑する。彼は本当に難民か?真実を追ううち、玲奈たちは国境を越えた騙し合いの渦に巻き込まれていくー。若き調査官らの活躍をスリリングに描く、ポリティカル・サスペンス!
赤坂署の刑事だった見城豪は、不祥事で警察を辞め、一匹狼の私立探偵となった。相手の悪事がわかると容赦なく脅して金を強請り取る一方で、甘いマスクを武器に、夫や恋人に浮気された女依頼人たちの情事も請け負い、報酬を得ていた。そんな見城の許に、人妻・多島奈穂からの依頼が舞い込んだのだが…。甘く鮮烈でハードな犯罪サスペンスの傑作シリーズ第一弾。3社合同出版企画。新たに大幅修正の決定版。
ソ連の最高軍事機密を奪取し、クレムリン要人一家の亡命を幇助せよ。さらにKGB幹部三名を暗殺せよー遂行不可能とも思える数々の密命を受け、鉄のカーテンの向こうへの潜入を図る西城秀夫。だが、その動向はすでにKGBに察知されていた。組織を挙げての襲撃に絶体絶命の窮地へと追い込まれる西城の運命は!?殺人機械の最後の戦闘を描くシリーズ最終章!
赤羽をこよなく愛する黒瀬大翔は、向かいのチーズケーキ店の美人オーナーパティシエ・三条歩花に頼まれ、本格的にバイトに入るようになった。ある時「赤いジャムはつけないで」と謎の言葉を言い残したお客が翌日も来店、再度パンケーキを食べたいと言い出すのだが…。歩花さんの気まぐれは相変わらず、大翔の淡い恋心も膨らんだり萎んだりで目が離せない!
米沢町の家具商い・相州屋の娘お夕に、急な縁談が持ち上がる。相手は日本橋の大店・柏木屋の一人息子だというが、条件のよすぎる縁談に、木戸番の杢之助は不審を抱く。相州屋の番頭松吉のお夕への純な思いを知り、杢之助は縁談の背後を探るが、案の定、怪しい男女が米沢町にやって来て、相州屋のことを探り始めた…。奇妙な縁談から、一触即発の危機が訪れる!
佐久間象山が凶刃に斃れて一年。江戸時代最後の年号「慶応」の世を迎えた夢屋では、象山が考案した料理“象山揚げ”が評判をよんでいた。横浜から仕入れる堅パンを砕いて衣にした揚げ物だ。おたねと誠之助は、福沢諭吉の助言も受けつつ、南蛮渡来の新しい食材を進んで取り入れてゆく。激動の幕末、料理屋を舞台に、江戸の庶民の姿を温かく描く、好評シリーズ第九弾。
公事宿「巴屋」の出入物吟味人となった、もと秩父忍びの日暮左近。ある日、左近が手裏剣で襲われた。出入物吟味人として狙われたのか、それとも秩父忍びの過去に関わりがあるのか。探ると、かつて秩父忍びの仲間で許嫁でもあった陽炎たちも襲われていた。怒る左近を、権力亡者と凋落した忍びたちの暗闘が待ち受けていた。大好評を博したシリーズ待望の続編、第六弾。
大坂夏の陣。劣勢に立つ豊臣秀頼は、一縷の望みをかけ自ら出陣することを決意する。だが、母の淀殿はそれを頑なに阻むのだったー。衝撃の結末に息を呑む珠玉の傑作「お拾い様」ほか、山本勘助、今川義元、徳川家康ら名高き武将たちが死を迎える最期の二十四時間を、濃密に描く全六編を収録する。斬新な歴史解釈と鮮やかなどんでん返しに彩られた奇跡の作品集。
昭和十六年の横浜。五歳の少年・桧垣壽雄は、色街・真金町の廓『永代楼』の一人息子だった。壽雄は、廓を切り盛りする祖母いねに可愛がられ、何不自由なく暮らしていた。しかし、母のきくが突然家出すると、その寂しさから、壽雄は落語や漫才などのSP盤を聞くようになり、笑いに目覚めていくー直弟子が故・桂歌丸をモデルに描く、傑作長編小説。
この町には怪人がいるんだよ。女の人と子供は殺されるから、気を付けなきゃいけないんだ。どことなく閉塞感を感じさせる小さな町に、怪物が生まれる。未解決の殺人事件は、人間の仕業だとは思えなくなった。都市伝説×コージーミステリーの野心作。
家老からの密命に背き、丹波篠山藩を出奔した若き武士・小柴陽太郎。杜氏についてきた灘の酒蔵で、名酒「一分」造りに勤しんでいた。陽太郎は「一分」を江戸に運ぶ船に乗りこむものの難破する。酒蔵は窮地に追い込まれ、時を同じくして篠山藩は財政難に陥っていた。藩と酒蔵の危機を同時に打開するため、陽太郎が持ちだす起死回生の秘策とは…。幕末の激動の時代、その仰け反るほどの逆風に立ち向かう青年を鮮烈に描く物語。