出版社 : 光文社
幼馴染の汀女とともに故郷の豊後岡藩を出奔し、江戸・吉原に流れ着いた神守幹次郎は、剣の腕を見込まれ、廓の用心棒「吉原裏同心」となった。時は流れ、花魁・薄墨太夫が自由の身となり、幹次郎は汀女、薄墨改め加門麻との三人で新しい生活を始める。幼い頃に母と訪ねた鎌倉を再訪したいと願う麻に応え、幹次郎らは鎌倉へ向かう。旅からはじまる新しい物語、開幕。
中学高校の同級生だった洋美とリラは乳児の予防接種会場で偶然に再会。育児に悩む洋美にリラは手を貸し、二人は“ママ友”となった。やがて洋美の子・敏光とリラの子・光鳥は同じ幼稚園、小学校へと進むが、“問題児”の敏光の乱暴がひどくなり、その対象は光鳥に。リラはついにあることを決断する…。母親の無力感、悔しさ、葛藤を浮き彫りにする著者会心の長編!
堺町通松原下ル鍛冶屋町。家々の並びにぽっかり口をあけた露地の奥、「鉄輪の井戸」の脇に、その店はひっそりと佇んでいた。百年は経とうかという町家カフェの女主人キリとの出会いが、私を古都にうごめく様々な怪異へと誘ってゆく。切るに切れない「縁」をテーマに、京都エッセイの第一人者が綴る、美しくも怖い「京都小説」。裏京都案内とも言える著者解題を収録。
北町奉行所の隠密廻り方同心、萬七蔵は、目的遂行のためには手段を選ばぬやり方から、「夜叉萬」と呼ばれ密かに恐れられていた。脂粉の香りを残し去ってゆく辻斬りの探索の過程で七蔵が見た卑劣な真実とはー。七蔵のふるう豪剣は、誰を斬り、何を裁くのか?悪道を歩む人間を見つめ、その因果や定めを鮮やかに描き出す、名手による時代小説、超絶の醍醐味ここにあり。
駆け込み寺「慶光寺」に突然、侵入者が現れた。御用宿「橘屋」の用心棒・塙十四郎がすぐに捕まえ、事情を聞いたところ、新助という桧物師で、幼馴染みのおひさを救ってほしいと訴えた。おひさは献残屋「赤松屋」へ嫁いでいたが、十四郎が探ると、夫の治兵衛に怪しい過去が現れたー。(「侘助」)親子の情愛を描いた表題作など四編を収録した、著者の代表シリーズ第十一弾。
薬研堀の煙草問屋・肥前屋の番頭、庄助の様子がおかしい。まじめ一本で商売熱心だった店のあるじの壱右衛門が、商売を顧みず柳原堤の女を囲ったことを気に病んでいるという。杢之助は意外な色恋沙汰に驚くが、そんなとき、堀に庄助の溺死体が揚がった。色恋沙汰を利用し肥前屋を狙う一味の魔の手が、米沢町に伸びるのを感じ取る杢之助だがー。シリーズ第四弾。
古道具乙で買った枕が、夜な夜な赤子のように大声で泣き喚く。八幡様の祭りの絵に描かれた人物がいつの間にか増えていたー。「不思議」を売買する九十九字屋には、今日も怪しい品々が持ち込まれて…。るいは、憑きものの正体を求め、気はいいがちょっと迷惑な『ぬりかべ』の父親らとともに奔走する。切なくてほっこりとあたたかい、新感覚時代小説シリーズ第二弾!
マンションで孤独死体となって発見された女性の名は、鈴木陽子。刑事の綾乃は彼女の足跡を追うほどにその壮絶な半生を知る。平凡な人生を送るはずが、無縁社会、ブラック企業、そしてより深い闇の世界へ…。辿り着いた先に待ち受ける予測不能の真実とは!?ミステリー、社会派サスペンス、エンタテインメント。小説の魅力を存分に注ぎ込み、さらなる高みに到達した衝撃作!
総理大臣官邸にプラスチックのコインを投げつけていたホームレスは、IRを誘致し町おこしをと気炎を上げ、総理の指南役とまで呼ばれていた元名物町長・鈴木一郎だった。日本初のIRは、5年前、土壇場で総理大臣・松田勉のお膝元に持って行かれていた。彼を破滅に追いやった誘致失敗の裏に何があったのか!?東西新聞社の編集局次長・結城洋子は、特別取材班を組み、IRやカジノの問題を徹底的に追及しようとするがー。
東京・立川で発生した女子高生モデル殺人事件。昇進を懸け、一心不乱に捜査する刑事の兄と、独自の情報網と行動力で解決しようとする高校生の妹。だが、ふたりを待ち受けていたのは驚愕の結末だったー。家族と仕事の在り方を問う、緊迫のサスペンス!
二十世紀文学の最高峰と言われる、プルースト『失われた時を求めて』。この大作に挑戦するには、まばゆい日差しのもと、ゆったりとした時間が流れる夏休みが最適だー。本書は、現代フランスを代表するプルースト研究者、作家などが、それぞれの視点から『失われた時を求めて』の魅力をわかりやすく語った、プルースト入門の決定版である。
あのドラマチックな夜会から半年。白夜の季節の到来とともに、相続の手続きを終えたムイシキン公爵がモスクワに戻ってくる。炎の友ロゴージンと再会したとき、愛のトライアングルが形を変えはじめた。謎の女性ナスターシャはどこに?絶世の美少女アグラーヤの不思議な思惑は…。
水野忠邦の天保の改革を支えた鳥居耀蔵は、南町奉行の座を追われ、讃岐国にお預けの身である。奢侈禁止令で庶民に圧政を強いた鳥居に、般若同心・柚木源九郎は反撥。その鳥居が、かつての配下を束ね、謀略を仕掛けてきた。源九郎は、同僚の同心たちから「獅子身中の虫」を炙りだし、難局を乗り越えられるのか!?大人気シリーズ最終章。
宗次と同じ長屋に住む少女二人が、権力者に愛玩される珍犬、狆を近所の寺で拾った。その直後に、殺気漂う侍たちが寺に駆け込んで来たのを目撃した宗次は、悪い予感を覚える。そんな最中、大身旗本、筆頭大番頭の西条山城守貞頼一行が襲撃された。不気味極まりない全身白装束ー謎の“白忍び”の一団に!不穏に蠢く幕閣の権力争いを、武炎の剣で宗次が斬る!
夢伝心眼流最高師範皆伝の大剣客・式部蔵人光芳に、宗次と西条貞頼暗殺の下命が!大老・酒井忠清の勢力による、宮将軍招聘に反対する老中・堀田正俊一派への攻撃は苛烈さを増していた。穏密情報機関「白夜」の頭領・貫鬼四郎五郎高房は、正俊を狙い襲撃をかけるも、堀田家家臣の決死の一矢に討たれ絶命。悲壮な決意を秘める宗次と蔵人との最終決戦が迫るのだった。
北関東の山間にたつグループホーム「若葉荘」。そこには元天才少女小説家の世話人と、自在に歳を重ねた高齢者たち、車椅子暮しの元刑事らが暮らす。だが穏やかな日々は、その冬いちばんの雪の日、密室で発見された射殺死体の出現によって破られる。十七歳の住み込みスタッフ・綾乃は、一癖も二癖もある住人のなかで隠された因縁を解き明かし、真相に迫ることができるのか!?
伝えるべきプロポーズの言葉は、悲鳴にかき消された。フラッシュモブの最中、ひとりの女性が刺し殺されたのだ。直後、犯人と思しき男は自殺。しかし、その一年後に男の冤罪を主張したのは、傲岸不遜な警視正・安孫子弘だった。丹念かつ大胆な捜査の果てに、真犯人は存在するのか!?破天荒な名探偵が、五つの不可能犯罪に挑む連作ミステリー第二弾!