出版社 : 光文社
お滝は、女衒にたぶらかされ、京の島原で遊女となった。童女だったころのお滝に憧れていたと、訪ねて来た男。その本性は!?(「かわたろ」)河童、雪女、ウブメ。画家で俳人の与謝蕪村が見聞きした妖たちの、こころに響く物語九編。幽霊となった武家のご新造と出逢った植木職人の宗七。宗七がたぐり寄せた、切ない結末とは…。(第三回小説宝石新人賞受賞作「梅と鴬」を収録)
一人の資産家が絞殺されて一千万円が奪われた。彼は、その金で「荒城の月」の作曲家・滝廉太郎の幻の原曲楽譜を買うつもりだったらしい。偽物で釣られ、金を奪われて殺されたのか?十津川警部の元を訪れた男の娘は、自らの手で犯人を捜し出そうとしていた。さらに、引退した贋作者が刺殺されて…。十津川が美術界の深い闇に迫る長編ミステリー!
駆け込み寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」に、寺を出て普通の暮らしに戻ったはずのお妙が火付けの罪で捕縛されたという報せが入る。お妙を救えなかったことに傷付き悩む橘屋の女主人お登勢はー。(「雨の萩」)お登勢をはじめ橘屋の用心棒・塙十四郎や慶光寺の主、寺役人にまで未曾有の危機が次々に訪れる。手に汗握る出色の四編を収録した、著者の代表シリーズ第十弾。
ファンクラブ会誌「三毛猫ホームズの事件簿」で、毎号書き下ろされているショートショート。「封印された贈りもの」「幽霊の忘れ物」「シンデレラの誤算」「テレビの中の恋人」など。会員から募集したタイトルを元に、創作された二十七の物語。ミステリーはもちろん、サスペンス、ファンタジー、ラブストーリー…。赤川ワールドの魅力が、ぎゅぎゅっと詰まった一冊。
裁判官だった高島裕子は、同僚たちとの集団破廉恥行為によって逮捕された。だが、取引を持ちかけられる。無罪放免の条件は!?なんと、参議院議員選挙への立候補!見事、当選した彼女たちにさらなる特命が待っていた。永田町特区警察の議員刑事。警察権の及ばない国会議事堂内、さらには永田町、霞が関の巨悪を炙り出すための秘密組織だ。その標的とは!?
犯人は、水底から現れて、水底へ消えて行った。ある大雨の夜に殺された冴えない中年男。不倫相手の妄想女、残された妻子、そして男の家族の苦い思い出となった、キャンプでの出来事…。事件の周縁をなぞるような捜査は、決して暴いてはならない秘密をつきとめる。女たちの心の奥底にうずまく毒感情が、少しずつ溢れ、歪み、凶器となって、人の命を奪うまでを描いた、イヤミスの衝撃作!
熊本藩の大秀才、井上多久馬(後の井上毅)は、戊辰戦争によって傷ついた会津若松城を見上げ、学問を用いてこの国を豊かにすることを誓う。やがて欧州各国の法律を学び帰国した多久馬は、統一した法を持たぬ未開の地として不平等条約を結ばされた日本にも、独自の憲法が必要だと痛感する。多久馬は岩倉具視や伊藤博文などの理解者と憲法草案の研究を進めるが、諸外国には決してない「二千五百年も続く皇室」の信頼に応えられるか苦悩する…。国のために才を尽くした井上毅の実直な生き方と、家族愛に溢れた人間性を丁寧な筆致で書き下ろした、長編時代小説の傑作誕生!!
明治二十六年、杉山潤之助は、旧知の月輪龍太郎が始めた探偵事務所を訪れる。現れた魚住という依頼人は、山縣有朋の影の側近と噂される大物・漆原安之丞が、首のない死体で発見されたことを語った。事件現場の大邸宅・黒龍荘に赴いた二人を待ち受けていたのは、不気味なわらべ唄になぞらえられた陰惨な連続殺人だったー。ミステリ界の話題を攫った傑作推理小説。
ぼくらが公園に行くたびに見かける男の人の名前は「よみさか」。ジャンケンに負けたぼくが初めて声をかけた日、友達のタクミがいなくなった!(「すれちがう」)小説家の俺は稀代の殺人犯・佐藤誠について調べていた。これから会う人は、彼の真実に最も近しい名探偵だ。(表題作)変わらぬ日々にもがく人々の姿を通して、郷愁と感傷の先に待つ、かすかな希望を描く青春小説。
平安時代、一条天皇の御代。京の都に鬼が出没し、貴族の娘たちが攫われる騒ぎが頻発していた。源頼光から解決の命を受けたのは、剛勇名高い坂田公時だった。公時は、次に攫われるのは藤原為時の娘・紫式部と目星をつける。美貌の才女は、自らが囮となって鬼に対峙するのだがー。公時と酒呑童子、さらに陰陽師・安倍晴明も加わった凄絶な闘いの行方やいかに!!
上野公園の不忍池から、子供の手首が発見された。唯一の手がかりは人差し指付け根に残る骨折の痕。M署の刑事・如月七と相棒の土橋は、被害者がシングルマザーに育てられていた少年であることを突きとめる。さらに消息不明の母親が偽名を使っていたことが判明して…。母子に何があったのか?謎が謎を呼ぶ展開と息づまるサスペンス。人気シリーズ第二弾!
海に転落した車の中から、大財閥・火枝家の一族である広治と若い女の遺体が発見された。これは、心中に偽装した殺人なのか!?捜査を進める過程で、片山は火枝家の娘・みゆきと婚約することになる。みゆきが「死の館」と称した火枝家の屋敷で、次々と事件がー。大財閥の複雑な人間関係に隠された真相とは!?そして、片山が本気になった「恋」の行方は…。
若い芸術家の憧れの的である美貌の人妻・竜崎亜矢子。彼女は夫・重隆との愛なき結婚に苦しむ“名家の囚人”であった。カメラマンの奈津井久夫は亜矢子に惹かれながらも見合い結婚をした。取材で出向いた青森県十三潟で男の死体に遭遇した奈津井は、その写真で脚光を浴びる。亜矢子への憧憬をカメラに託す奈津井だが、彼女は新聞社勤務の久世俊介と…。彷徨う愛の行方は!?
心の通い合わない結婚をした奈津井。妻との関係が悪化する久世。亜矢子への思いを断ち切れない二人の男たち。それでも三人は微妙な愛情関係を保っていた。だが、海外に単身赴任していた亜矢子の夫・重隆が帰国したことで、三人の危うい均衡は崩れていく。都会を漂う孤独な男女の愛の終着点は!?圧倒的な人間洞察力と筆力で、愛の虚無と憂愁を描く恋愛サスペンス!
落語と推理小説は昔から深い縁があった。明治期、黒岩涙香が探偵小説を紹介する前に、かの大名跡、三遊亭円朝が、なんと翻訳ミステリーを高座にかけていたのだ。また、大乱歩は英人落語家、快楽亭ブラックの探偵小説に注目、以後多くのミステリー作家が落語を題材にさまざまな作品を発表してきた。本書は古典的名作から気鋭の秀作まで、ハズレなしの八編を収録!
ならず者の弥蔵が遺体で見つかった。「慶光寺」御用宿「橘屋」の十四郎は、遺体の傍らに落ちていた鈴が以前、駆け込みをした女の付き添いで来たお春の物ではないかと危惧する。そして、お春は町方の手に落ち、岡っ引は罪を認めないお春に迫る。そこには我が子への母の想いが。涙なくしては読めない母子の情愛を描いた「東風よ吹け」など全四話を収録したシリーズ第九弾。
奥歯の痛みで口中医を訪ねたおたねは、風采の上がらない安斎と名乗る男と出会う。二人の子を亡くして失意のうちに生きる安斎は、夢屋の手伝いに入ることになるのだが…。大地震、大あらしに続き、安政の江戸を襲う「コロリ」と呼ばれる恐ろしい流行り病。たび重なる厄災に立ち向かい、支え合いながら生き抜こうとする人々の姿が胸を打つ、好評シリーズ第四弾。
父の跡を継ぎ、上絵師として身を立てたい律だが、ままならず落ち込むことも多い。幼馴染みの涼太への想いも、深く胸に秘めるばかりだ。しかし副業の似面絵の評判は上々で、引きも切らず注文が舞い込んでいた。そんな折、母を殺めた辻斬りの似面絵そっくりな男に出会うのだがー。仕事に恋にひたむきに生きる女職人の姿を鮮やかに描く、待望のシリーズ第二弾。