出版社 : 光文社
眉目秀麗、頭脳明晰、白面の貴公子。輝かしい形容に彩られた名探偵、神津恭介。彼が挑むのは密室トリックの数々。鍵の掛かった部屋の外に残された犯人の足跡、四次元からの殺人を予告する男…。不可解極まる無数の謎を鋭い推理でクールに解き明かす!いつまでも燦然とした魅力を放つ神津恭介のエッセンスを凝縮した六つの短編を収録。傑作セレクション第一弾。
長患いを負い目にし、自害を試みた一三を救った若き医者・圭吾。日本橋福島町の長屋に居着き、住人から頼りにされていた。だが、懇意にする薬種問屋の若旦那とのいざこざから、薬が手に入らなくなる。亡き父から託された教えを胸に刻みながらも、圭吾は志を失いかけていた。そこに永代橋が落ち、多くの怪我人が出たとの報せが。小説宝石新人賞作家の長編デビュー作。
深夜帰宅中、変質者にナイフを突きつけられた三枝英子は見知らぬ男性に救われる。その男は「必ずあなたを見守っています」と言い残し、立ち去った。それ以降、英子を困らせる連中がけがをしたり、火傷をしたりー。ついには、彼女に嫌がらせをした上司が殺害された。英子を救った「用心棒」の仕業なのか?そしてその正体は!?(表題作)大人気シリーズ第46弾。
金融界の寵児・財田剛の長女の結婚式に現れた東都経済新聞の記者・西山照明が不審な死を遂げた。一方、金融探偵・七森恵子は、覚醒剤所持の罪で服役していた旧友の遠藤環を出迎える。その直後、恵子は追いかけてきた円経済研究所の調査員・秋場弦太のベンツに無理やり乗せられ、円詠一から強引に仕事を依頼される。依頼内容は、財田の運営する巨大ファンド“モネタ・ファンド”の調査だった。毎年確実に利益を上げ、リーマンショックの年ですら利回りを叩き出したという奇跡のファンドーその秘密を探るべく、恵子はパートナーである如月浩二郎とともに潜入捜査を開始する。しかしそこで思いもかけない人物と再会しー。
元高校球児の島野圭一は、高校野球史に残る名勝負の取材中に、預かった日記を奪われてしまう。日記は、12年前に不審死を遂げたライバル校の捕手・中尾がつけていたものだった。もしや、中尾とバッテリーを組んでいた紀田のウイニングショット“二軸スライダー”の投げ方が書かれていたのではないか?宿敵のエース・紀田に敗れて甲子園を逃した苦い記憶を胸に、島野は調査を始めるのだがー。
英国出身でペット葬儀社勤務のデニスは、友人の葬儀の手配のためハリウッドでも評判の葬儀社“囁きの園”を訪れ、そこのコスメ係と恋に落ちる。だが彼女の上司である腕利き遺体処理師もまた、奇怪な方法で彼女の気を引いていたのだった…容赦ないブラック・ユーモアが光る中編佳作。
若者になった「私」はジルベルトへの恋心をつのらせ、彼女の態度に一喜一憂する…。19世紀末パリを舞台に、スワン家に出入りする「私」の心理とスワン家の人びとを緻密に描きつつ、藝術と社会に対する批評を鋭く展開した第二篇第一部「スワン夫人のまわりで」を収録。
船頭として働く元南町奉行所の定町廻り同心、沢村伝次郎。ある日、派手な着物を着た女が数人の男女を引き連れて歩いているところを目撃する。翌朝、その一人が新大橋で女の土左衛門となってあがる。なぜ、謎に殺められたのか。探索を始めた伝次郎の前に深まっていく謎ー。シリーズ初の大仕掛けの事件に伝次郎の勘と一刀流の剣が冴えわたる。シリーズ史上最高傑作。文庫書下ろし長編時代小説。
冷夏霖雨のため米価が暴騰する文化五年、江戸の米問屋が相次いで襲われた。寺侍の棚橋市之丞は不順な天候と貧しさに喘ぐ者たちに心を痛めていたが、飢える者のために炊き出しをしている寺があると聞き、訪ねることに。しかし、そこに違和感を覚えた市之丞は、その寺を調べ始める。寺を舞台に繰り広げられる大活劇。江戸情緒と爽快感満載。待望のシリーズ第四弾。文庫書下ろし長編時代小説。
不眠症のサラリーマンを悩ませるマンションの住人。異常なのは彼らか自分か?(「冬の雨にまぎれて」)。アメリカ旅行の途上、「私」が出会った日本人夫婦には秘密があった(表題作)。悪徳警官の汚名を着せられた元刑事が息子とのキャンプ中、追い続けていた犯人を見つけ…(「海鳴りの秋」)。人生の歯車がずれていく人間たちの閉塞感を、短編の名手が七つの物語で紡ぐ傑作集。
四十二歳の有馬仙太郎は、製薬会社の営業マン。別れた妻に払う養育費の捻出に四苦八苦していた。ある晩、浅草での接待の後、観音裏の一杯呑み屋・金魚に立ち寄った。その店で、仙太郎は不思議な体験をする。便所を出ると、カウンターには若かりし日の父親がー。過去と現在を行き来し、仙太郎は競馬で一攫千金を狙う!疲弊したサラリーマンの鬱憤を晴らす爽快作。文庫書下ろし。
フリーのメイクアップ・アーティスト黒地渉。彼にメイクを施された女たちは、厚く身に纒った心の鎧を脱ぎ捨て、本当の自分をさらけ出す。雑誌編集者、新進女優、主婦、美術館学芸員、祇園の女将…その肌に渉のしなやかな指が触れるとき、彼女たちは今まで経験したことのない官能の悦びに目覚めていき…。女の肉体の深奥に潜む欲望を濃密に描き出す、文庫書下ろし&オリジナル連作官能小説。
ロンドンのオークションでゴッホ作「医師ガシェの肖像」を日本人が競り落とした。落札価格は約百八十億円。時は流れ、日本のバブルが弾け、借金で追いつめられた男女にある依頼が持ちかけられる。それは倉庫に眠る「ガシェの肖像」を盗んで欲しいというものだった…。第14回日本ミステリー文学大賞新人賞に輝く、痛快にしてスリリングなコンゲーム小説の傑作。
小金欣作は、福岡の歓楽街・中洲の街金業者。ヤクザ相手に一歩も引かず地上げで鳴らした時代もあったが、今は長いものには巻かれてしまう負け犬同然の日々だ。ある夜、小金は一人の少女を救おうとして、地元暴力団幹部を敵に回してしまう。勝ち目のない敵との闘いに挑む小金と仲間の運命は!?日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞した、痛快、中洲ハードボイルド。
深夜の自動車事故。犠牲者は、ヨットによる単独無寄港世界一周に成功し、一躍英雄となった内田洋一だった。遺体の毒物反応から、殺人事件と判明。警部補・十津川の前に次々と浮上しては消える容疑者たち…最後に真犯人と見込んだ人物には、鉄壁のアリバイがあった。東京ータヒチ間のヨットレースを舞台に繰り広げられる雄大なトリックに、十津川が挑む。長編推理小説。
社会の中でもがき苦しむ人々の絶望を抉り出す、魂を揺さぶるミステリー小説の傑作に、驚きと感嘆の声。人間の尊厳、真の善と悪を、今をいきるあなたに問う。第16回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。
劇団員の夏帆は、アルバイトをしながら日々の生計を立てている。一人暮らしの32歳。20代のころのように素直に夢を追うこともできず、かといって郷里には戻りたくない。アルバイトの住宅地図の調査に訪れた埼玉県のベッドタウンは、小学校の頃に一時期住んでいた街だった。夏帆は小学校の同級生と再会し、その夜、彼女の家に向かう途中で運悪く通り魔に遭遇してしまう…。「日常の些細な悪意」の連鎖が引き起こす長編サスペンス。
亡き両親が残したビデオを見た智子は、かつて自分に特殊な力があったことを知る(「朽ちてゆくまで」)。わたしは凶器になれるー。念じただけで人や物を発火させる能力を持つ淳子は、妹を惨殺された過去を持つ男に、報復の協力を申し出る(「燔祭」)。他人の心が読める刑事・貴子は、試練に直面し、刑事としての自分の資質を疑ってゆく(「鳩笛草」)。超能力を持つ三人の女性をめぐる三つの物語。
青木淳子は常人にはない力を持って生まれた。念じるだけですべてを燃やす念力放火能力ー。ある夜、瀕死の男性を“始末”しようとしている若者四人を目撃した淳子は、瞬時に三人を焼殺する。しかし一人は逃走。淳子は息絶えた男性に誓う。「必ず、仇はとってあげるからね」正義とは何か!?裁きとは何か!?哀しき「スーパーヒロイン」の死闘を圧倒的筆致で描く。