出版社 : 共和国
ウクライナとベラルーシの一部を占領した2030年代のロシア。引退して別邸で暮らす元大統領ウラジーミルPは認知症を患い、夜な夜なチェチェン人に襲われる夢を見る。その介護人シェレメーチェフは誠実に元大統領に尽くすが、反政府活動によって逮捕された甥を獄中から救い出すために多額の賄賂が必要となる。金策に行き詰まった彼は、ついに元大統領の私物に手を出して、物語は急展開を見せるが…。現代ロシアの暗部を巧みに諷刺するカオスな「滅茶フィクション」。
本巻には代表作「木橋」「土堤」「なぜか、アバシリ」「破流」のほか、「小説家以前」となる異稿や習作を単行本初収録。貧困、DV、ネグレクト、バックレ、密航、窃盗、そして…。故・永山則夫の自伝的小説を全2巻に初めて集成。
20世紀初頭のチェコを代表する革命詩人、イジー・ヴォルケル(1900-24)が短い生涯に遺した数多くの童話と詩から精選する、日本初の作品集。子どもや虐げられた者たちの低い視線に映し出された社会を描く物語5篇に、故郷モラヴィア地方や性愛をうたった詩24篇、さらに評論1篇を収録。この稀有な詩人の姿が、没後100年を前についにあきらかになる!
関東大震災からの復興をとげた、一九三〇年代の東京。都心から周縁部へと蔓延してゆく不良住宅、工場街、そして貧困。戦争に突入する“非常時”にあって帝都の底辺をアクチュアルに描き出し、ファシズムと対峙した小説家、武田麟太郎の都市文学を集成する。これはメガイベントで再開発が進む、日本の首都の未来図なのか?
メルボルンに実在したカフェ“シェヘラザード”。故国ポーランドでのナチスによる過酷な迫害を逃れ、杉原千畝のヴィザを取得。神戸や上海を経由してオーストラリアにたどりついた人びとの声が、カフェを舞台にポリフォニックに響くー。モノクローム映画のように静謐な筆致で現代史の局面を描き出す、著者の代表作。
戦後フランスを代表する作家ロマン・ガリ(一九一四ー八〇)が、自殺する直前に遺した最後の長篇小説(原著一九八〇年刊)。稀代の凧揚げ名人を叔父にもつ主人公の少年リュドは、ポーランド人の令嬢リラに恋をするが、対ナチス戦によって2人は引き裂かれる。リラへの思いを募らせるリュドは、凧がふたたび自由に空を舞う日を取り戻すためにレジスタンスへと身を投じるが、それはフランス=善/ナチス=悪という図式が崩壊してゆく過程でもあった…。日本でも再評価著しい作者の遺作。
史上唯一、ゴンクール賞を2度受賞した作家で外交官、女優ジーン・セバーグの伴侶にして、拳銃自殺を遂げたロマン・ガリ。その代表作であり、戦後フランスを象徴する自伝小説の白眉、ついに刊行。