出版社 : 北烏山編集室
20世紀初頭のニューヨーク。裕福な家庭で育った美貌の娘リリー・バートは、父の破産後もなお、華やかな社交界で生き抜くために、良縁を求めて悪戦苦闘する。耳に痛いことも言ってくれる友人の男性セルデンに心惹かれながらも、彼との結婚は考えられない。上流階級にひそむ悪意と嫉妬、運命のいたずらによって、リリーの人生は少しずつ、転落へと向かってゆく。『無垢の時代』『イーサン・フロム』など近年新訳の出版が相次いでいるイーディス・ウォートンの出世作、待望の新訳。 解説:小林久美子(アメリカ文学者、京都大学准教授) 装釘:宗利淳一
日系カナダ人4世の著者の手による自伝小説(オートフィクション)。本書の著者であり主人公でもあるレスリー・シモタカハラは、名門ブラウン大学で文学博士号を取得、カナダの田舎の大学で文学を講じている。だが、学生から〈史上最悪の教授〉と揶揄され、転職も恋愛も失敗、精神的にひどく追いつめられてトロントの実家へ帰郷。定年退職した父のために作った「リーディングリスト」=読むべき本リストに添って、日系カナダ人としての両親や祖父母の人生をたどり、自分自身の生と死を見つめる日々を送ることになる。 本書は13章から成りたっており、各章のタイトルがすべて、リストの作品名、つまり英米加の文学作品の名前になっている。たとえば、ソロー『森の生活』、ウォートン『歓楽の家』、ジョイス『ダブリナーズ』、ウルフ『ダロウェイ夫人』、ナボコフ『ロリータ』、ハメット『マルタの鷹』など。この13作品はすべて翻訳が出ていて、日本語で読むことができる。 解説・倉本さおり(書評家) 第一章 ヘンリー・デイヴィッド・ソロー『森の生活』 第二章 イーディス・ウォートン『歓楽の家』 第三章 ジェイムズ・ジョイス『ダブリナーズ』 第四章 ヴァージニア・ウルフ『ダロウェイ夫人』 第五章 ウラジーミル・ナボコフ『ロリータ』 第六章 ダシール・ハメット『マルタの鷹』 第七章 ウィリアム・フォークナー『死の床に横たわりて』 第八章 アーネスト・ヘミングウェイ『日はまた昇る』 第九章 ウィラ・キャザー『教授の家』 第十章 マーガレット・アトウッド『浮かびあがる』 第十一章 ラルフ・エリソン『見えない人間』 第十二章 ジョイ・コガワ『失われた祖国』 第十三章 マイケル・オンダーチェ『家族を駆け抜けて』 訳者あとがき 解説 「わたし」の脚注から「あなた」の脚注へ 倉本さおり
記憶と鎮魂のファミリー・ヒストリー 第2次世界大戦をきっかけにドイツからカナダへ移住した家族を描く連作短編集。静かで平和に見える一族の生と死が詩情豊かに語られる。点景としてのオリンピック、断片としての家族の歴史。 ーーレニ・リーフェンシュタールが編集したあとの映像から、この話を語ることはできないだろう。何マイルにも及ぶサブプロットや暗示的な映像が切り刻まれて黒いリボンに何度もまとめられ、忘れ去られた。 ーーぼくたち家族の才能は永遠のものだと思っていた。 装釘 宗利淳一 1 結婚式 2 オリンピア 3 ゴーレム 4 ルビー 5 荒天 6 スペイン 7 マドリード上水道 謝辞 訳者あとがき