出版社 : 小学館
JR御茶ノ水駅でOL・玉恵がおじさんと運命的な出会い。玉恵のストーキングから始まったふたりの恋の終着駅は…?妄想界の最高顧問、辛酸なめ子がついに解禁!リアルな恋愛を凌駕するプラトニックラブストーリー。
バンコクからの帰国子女である高校1年生の漣は、日本の生活に馴染むことができないでいた。ある日高校の渡り廊下で見つけた先輩に、漣の心は一瞬で囚われてしまう。先輩との距離を縮めようとする漣だったが、それは好きになってはいけない人だった。気持ちを抑えることができない漣は、大好きな家族に嘘をつくようになり…。
大正時代の北海道を舞台に、貧しい家庭に育った“私”が、少年から青年になるまでの紆余曲折を描いた自伝的小説。幼いころからひそかに恋心を抱いていた「姉や」のシモがなぜか家を出ていき、やがて父の子を出産する。ショックでしばらく疎遠になっていたが、やはり気持ちが抑えられずに会いに行くと、シモは“私”を心身ともに受け入れてくれるー。“私”と家族の性生活や厳しい暮らしを、赤裸々に、かつ独特の歯切れのいい筆致で綴る傑作長編。第9回日本文学大賞受賞作。
川端康成文学賞受賞作を含む秀逸な短編7編。「もう来たらあかんよ。ほんまに来イへんな」昭和11年、大阪の置屋で出会った若い娼婦は、男が深みにはまってしまいかねない魔性を秘めており、実際に6人の男が破滅に追いやられていた。“私”ももうしばらく一緒にいたいと願うがー。和歌山、大阪をめぐる旅に出た男が40年前の一夜の記憶を辿っていく「なぎの葉考」のほか、70代の老夫婦が重い病気を抱えながら命を長らえていることにささやかな幸福を感じる「しあわせ」、“私”と確執のある父とその2番目の妻、子が入水自殺してしまう「耳のなかの風の声」など全7篇を収録した名作短編集。
最小で最弱の情報機関(ヒトなし、カネなし、武器もなし!)公安調査庁に迷いこんだマンガ大好きオタク青年、国際諜報戦争で大金星!?諜報後進国に現れた突然変異種のインテリジェンス・オフィサー。本邦初の脱力系インテリジェンス小説。
メキシコ、オアハカ。天涯孤独、90歳のマルおばあちゃんは、手作りのお菓子アルファホールを売ってつましく暮らしていた。ある日、遥か昔に別れた一人息子がすでにこの世にいないこと、そして自分に孫息子がいることを知る。マルは自分の人生の環を閉じるべく、青いおんぼろ自転車で孫をさがす旅に出るー
台湾の新世代作家、堂々のデビュー! この小説はプロレスについて書いている。 それはつまり、人生について書いているということだーー西加奈子(作家) 知りたかった事が書いてあった。みんなの生活の中でのプロレスの存在意義。 そうか。プロレスラーは記憶の中で、画面の中で生き続けるんだなぁーー棚橋弘至(プロレスラー) 【作品紹介】 「ばあちゃんのエメラルド」 あの頃、親父は漁船に乗っていつも家を空けてるし、お袋も出て行って、家にいるのはばあちゃんと 俺、それに黒犬の来福の3 人だけだった。ばあちゃんと俺は毎晩、古い試合を何度も繰り返し放送する ケーブルテレビで三沢光晴を応援していた。だけど、俺はある日、とんでもないことを知ってしまったんだーー。 「タイガーマスク」 安ホテルの受付バイトをする大学四年生(留年決定)の俺は、バイトの先輩からなぜかタイガーマスクのマスクをもらう。ホテルに“ 配達” される女の子の一人が気になり、ある日、意を決して隣のホテルに彼女を呼んだ。でも、俺にできたのはマスクをかぶったまま彼女としゃべり続けることだけだった。 ーープロレスと出逢い、魅せられた人びとの人生ドラマ10話からなる連作短編集 【編集担当からのおすすめ情報】 本作品は、2016年に台湾で出版されました。著者の林育徳氏は、台湾を代表する作家・呉明益氏に師事する新世代の作家で、本作品にてデビューしました。言うまでもなく、熱烈なプロレスファンです。 台湾ではプロレスはメジャーとは言えず、興行も限られています。ファンが日頃、接するのは日本や米国の興行の衛星中継やケーブルテレビによる再放送です。そうした制約がありつつも、プロレスファンはそれぞれの方法で「愛」を深めていきます。 たとえば、18回台北文学賞小説部門大賞を受賞した「ばあちゃんのエメラルド」は、三沢光晴氏の試合を楽しみにする「ばあちゃん」が描かれています。 三沢氏は、2009年に物故されています。 「ばあちゃん」はその事実を知らず、再放送の映像を見ながら、三沢氏への熱を持ち続けるのです。主人公の孫はネットで悲報を知ったものの、その事実を「ばあちゃん」に伝えられずーーといった物語です。 そのほか、台湾のインディーズ団体を題材にしている短編もあり、台湾という島国でいかにプロレス文化が華開いているかがよくわかります。 本書の各話は独立していますが、花蓮がモデルとされる地方都市を舞台として、緩やかに繋がっています。台湾のローカル文化に関心がある方にもオススメです。 著者まえがき 退任の辞 タイガーマスク 西海広場 紅蓮旅社 無観客試合 テーブル、はしご、椅子 ばあちゃんのエメラルド オレンジアナウンサー失踪事件 パジロ 青い夜行列車 訳者あとがき
魔王。それがワシ、ガルトー・リューゼンの職業だ。妻と死別してからは、仕事一筋の毎日ーだった。レイティアさんのおめでたから、新たな家族が増えるのを待ち望んでいた。そんな中、レイティアさんに異変が起こり、ワシとアンジェリカは二人で解決のため冒険へ向かう。そしてついにその時が…。新たな一員が加わり、相変わらずにぎやかな家族だと思う。ワシは素晴らしい家庭を築けているだろうか?…家族の顔を見れば、答えは明らかだな。いよいよクライマックスの異世界式アットホームコメディ、第4巻。
エレナの裏切りの真相を知るためにハルジオン王国でのスパイ任務を開始したエリックたち一行。捜査を進めていくなかで、闇での奴隷取引など王国の闇が見え隠れする。一方、ベゴニア王国からは先のリンドウ帝国の襲撃を知らせてくれたハルジオン王国への礼を伝えるべく、レオナルド国王、クリストファー王子直々の訪問が執り行われていた。すでにその情報は知れわたり、両者の暗殺命令が王国を駆け巡る。エリックたち一行は、国王、王子の命を守りつつ、エレナに再び会うために、死力を尽くすのだった。
「あんたの中に、怒りの子が見える…人のうちに、潜んでる、外から見えんけど、何処かにいる、人の奥のほうに。」自分自身のやりたいこと、望んでいることなどが定まらず、ビジネス学校に通いつつ悶々とした日々を送る主人公・美央子。美央子が姉のように慕う、どこか浮き世離れした雰囲気を持つ初子。そして美央子と同じアパートに住み、親しくするそぶりを見せながら、いちいち美央子の感情を逆撫でしていくますみー。3人の感情は、初子の義弟・松男の存在を触媒として、大きく揺れ動いていく。人間の心情を、平易な言葉を使いつつ、豊かな描写力で見事に描ききった、第37回読売文学賞受賞作。
名峰ドライチンネで遭難死したイタリア人ガイドの娘・マリアは、ガイドのバディーであった日本人・鳥羽省造の元に引き取られ、2歳上の双子・博、豊とともにすくすくと成長する。10歳だった少女は、双子と同じく山登りが大好きな美しい女性になり、やがて省造が勤める会社のマスコットガールを務めるまでに。一方、大学生になっていた博と豊は、マリアへの募る思いを抑えることができず、ほぼ同時に愛を打ち明ける。ふたりのどちらかを選ぶことができないマリアは、タレント活動に没頭する日々を送るが、ある日、博と豊が北アルプスで遭難したという知らせを受けてー。きょうだいだが恋愛も結婚もできるという微妙な関係にある3人が織りなす、山を背景とした濃厚な人間ドラマ。
古びた喫茶店の装いながら、本格的なスパイスカレーを出す「麝香猫」。そこで働く山崎成美は調理師学校に通う19歳。成美は幼い頃に両親が離婚、育ててくれた祖母も失踪してしまい天涯孤独の身であった。そんな彼女の運命を変えたのは、小学校の先生が作ってくれた一杯のカレーライス。成美はその味を自分でも作りたい一心で調理を始め、ようやく、きっかけを掴みはじめていた。そんな矢先、ある事情から「麝香猫」が店を閉めることになってしまいー。
昭和19年、いわゆる“三文文士”の木川正介は、永く喘息と神経痛とを患っており、招集も受けずにくすぶっていた。そこへ、某開発公社の嘱託の話が舞い込んできて、厳寒の満州に赴くことに。物資不足などで環境は厳しいものの、内地にいるより自由がきく日々をそれなりに楽しんでいた正介だが、突然、召集令状が舞い込んできてー。戦争、あるいは上官に対してシニカルに見る姿勢を保ちつつ、現地の人々との交流など満州での日常を、生々しくユーモラスに描いた傑作長編小説。第13回芸術選奨文部大臣賞受賞作。
「もうすぐ結婚五〇年の年を迎えようとしている夫婦がどんな日常生活を送っているかを書いてみたい」-。庭に咲く四季折々の花々、かわいい孫たちの成長、ご近所さんが届けてくれる季節の風物など、作者の身のまわりの何気ない日常を、まるで花を育てるように丹念に描く。「棚からものが落ちてきても、すぐには反応できない」「歩くスピードが明らかに落ちた」などという老いの兆候も、戸惑いながらも受け入れ、日常の一コマとして消化していく。事件らしい事件は何も起こらないが、些細な驚きの積み重ねで読み応えある文学作品にしてしまう、まさに庄野潤三の世界。
物語は「女性エイト」編集部に入ってきたニュースで幕を開ける。週刊誌編集者が事件を追う令和2年とお嬢様女子大生がパパ活に翻弄される平成30年。新型コロナから芸能スキャンダル、御代替わりまで激動の“いま”を舞台に事件は思わぬ展開へー。
緑内障、高血圧、関節症、肥満、アトピー…。患者と家族の一大事は、ごくありふれた病気から始まった!規格外の名医青島倫太郎。メスを入れるのは、病気でこじれた人間関係!次の患者はあなたです!!
従軍経験を持ち、サンドイッチ店の創業者として成功を収めた忠一郎と、終戦の翌年に生まれた新聞記者の異母弟・良也。世代も価値観も違い、まったく別の人生を歩んできた二人だが、ともに若い頃に愛した人の幻影を追い続け、またかつての戦争にこだわり続けていた。忠一郎は弱肉強食の企業戦争と自身の従軍体験を重ね合わせて精神的に疲弊していき、良也は昔の恋人・茜が失踪してしまったのは、茜の父の戦争体験が関係していたことを知るー。実業家でもある著者らしく、戦後の経済成長や、企業間の争いを交えつつ、戦中・戦後派が引きずる戦争の暗い影を描いた大作の完結編。
物置小屋で生まれた、「小津もの」含む名私小説9篇。小田原の魚商の長男として生まれた著者・川崎長太郎は、家督を弟に譲り、文学の世界へ。たびたび東京暮らしを経験するが、30歳になる頃、小田原の海岸にある実家の物置小屋に住み着き、物書きのかたわら私娼窟通いを続けるー。そんな著者の尋常ならざる日常を切り取った、味わい深い私小説集。「淡雪」「月夜」「浮雲」はうだつの上がらない物書きとのつかず離れずの関係を、若い小田原芸者の視点で描いた佳作。映画監督・小津安二郎(ここでは「大津」として登場)と、「小川」として登場する著者、そして小田原芸者との三角関係を描いた、いわゆる「小津もの」のひとつ。そのほか、実家で働いていた奉公人を描いた「ある生涯」、著者を批判し続けるが薬物におかされてしまった友人を描く「ある男」など、全9篇を収録。