出版社 : 小学館
吉原の大見世・扇屋の禿であるおいちは、自分が青海藩高森家のお姫様として生まれたことを知らずに育った。しかも双子の姉がいるなんて!占い師の「女の双子が生まれたならば二人を共に育ててはならぬ。さもなくば必ず高森家は呪われて、一代で滅びるであろう。しかし一人だけを残すならば、千代まで続くであろう」という予言によって、生まれたばかりのおいちは屋敷の外へ出されたのだった。本に関わる仕事がしたいと願うおいちと、意に添わぬ縁談が進む姉の千代姫は、運命に導かれ巡り会う。生まれてすぐに引き裂かれた姉妹が巻き起こす、入れ替わり騒動記!
小説家の私は、末娘の問題行動を機に、半年ほどセラピストとの対話を続けていた。よき母親を目指してきたが、家族との不協和音に自身の精神状態も追い詰められていた。夫婦の再和合を目的に、南国の地へ旅に出かけるものの、その旅先で夫と問答してしまう私。セラピストとの会話を反芻し、現地の男とのエロティックな対話や経るうち、家庭内の問題や、自身が抱える心の闇の根源に気づくが…。妻、母、そしてひとりの女として「性」と向き合い、既成の価値感から自己を解放していく姿を大胆に描いた革新的小説!
覆面作家として発表した幻の小説を初文庫化 <ぼくは今、学説を覆すに足る新事実を発見しようとしています。村人は語りませんが、蝦夷からアイヌ民族の出現に至るまでの空白期間を埋める幻の狩猟民族の末裔が、暗火岳に生きているのです。その所在を確かめるために明日暗火岳に向かうつもりです> 友人の私にこのような葉書を送って北海道・知床半島で消息を絶った鴫沢澄夫。大学で考古学を専攻する私は、彼が主宰する北方の狩猟文化をテーマとした研究会にも顔を出していた。姿を消した鴫沢を追って、私は彼に心を寄せていた女性、奈美とともに、北海道に渡る前に出かけていたという新潟の山村へと旅立つ。その地は研究会にも参加していた考古学の権威、環教授がかつて調査に赴いた場所であり、そこで私は鴫沢と環教授の不思議な連関に気づくのだった。 【編集担当からのおすすめ情報】 石川啄木をモチーフにした小説「北帰行」で、東大在学中に本名の「外岡秀俊」で文藝賞を受賞した著者が、朝日新聞の記者であった1986年に「中原清一郎」名義で10年ぶりに発表した幻の第2作を初文庫化しました。古本市場でもかなり高額な価格で取引されていた名作がいまよみがえります。解説は書評家の三橋曉さんです。
中上健次が故郷・紀州に描く“母の物語” 「秋幸もの三部作」よりも以前の時代を描く、秋幸の母・フサの波乱の半生を描いた物語。 海光る3月。私生児としての生い立ちに昏い痛みを覚えながらも、美しく利発な娘に成長したフサは、十五になった春、生まれ育った南紀の町をあとにした。 若々しい肉体の目覚めとともに恋を知り、子を孕み、母となって宿命の地に根をおろすフサ。しかし、貧しくも幸福な日々は、夫・勝一郎の死によって突然に断ち切られた。 子供を抱え、戦時下を生き延びる過酷な暮らしの中で、後に賭博師の龍造と子を為し、秋幸と名付ける。しかし龍造が賭博で刑務所に入っている間、他の二人の女を孕ませていたことを知り、フサは秋幸には龍造を父と呼ばせぬと宣言する……。 中上健次が実母をモデルに、その波瀾の半生を雄大な物語へと昇華させた傑作長編。
直木賞受賞作含む、立原正秋の代表的短編集 日本と朝鮮の血を引く家系に生まれた兄弟が、戦争という得体の知れないものに翻弄されながらも、自分たちの存在を確かめようと、”血”とは何かを追求した「剣ケ崎」。 金貸業者を踏み倒す事を仕事にしている奇妙な男にひかれて、その不可解な魅力と付き合っているうちに、自らも破滅してゆく中年の教師を描いた「白い罌粟」。 没落寸前の旧家・壬生家。その終焉を闇夜に輝く篝火に象徴させ、従弟との愛を”死”で締め括った人妻を描いた「薪能」。 義弟との束の間の愛に燃えた若妻を描く「流鏑馬」、麻薬窟に出入りし、女と薬に溺れる男を描く「薔薇屋敷」。 直木賞受賞作、芥川賞候補作など立原正秋の代表短編5編を納めている。
浄土真宗の創始者・親鸞。苦難の生涯を描く 弾圧、非難と闘いながら、浄土真宗を創始し、あくまでも人間として生き抜いた親鸞の苦難の生涯を描く大作。 人心は乱れ、荒廃しきった平安末期、時の権力と結託した宗教界の腐敗、形式化は止まることを知らなかった……。 皇太后宮大進・日野有範の長男として京都日野に生まれた松若麿(親鸞)は、やがて比叡山に上り、出家して範宴(はんねん)と名乗る。 やがて民衆を救う真の仏の道は南都北嶺の諸大寺にはなく、俗聖の中にこそあると考えるようになった範宴は、苦悩の末、山を下りる決意を固める。 親鸞の苦難な生涯を壮大なスケールで描く4部作の第1巻。
青春=戦時下だった吉行の半自伝的小説 昭和19年8月ーー、僕に召集令状が届いた。その後の入営は意外な顛末を迎えるが、戦時下という抑圧された時代、生と死が表裏一体となった不安を内包し、鬱屈した日々を重ねていく。まさしく「焔の中」の青春であった。 狂おしいほどの閉塞感の中にあっても、10代から20代の青年らしい友人との、他愛のない会話、性への欲望、反面、母への慕情など巧緻な筆致で描かれる。また、戦争とは一線を引いたかのような、主人公の透徹した眼差しと、確固たる自尊心は一貫しており、吉行自身のメンタリティが垣間見える、意欲作である。
北斎の生涯を描いた時代ロマン小説の傑作 人々の生活を見つめ、大いなる自然を見つめ、その感動を絵にした男・葛飾北斎。妻・お砂との運命的な出会い、写楽、馬琴、蔦屋重三郎らとの交流を通じて画家として人間として成長していく姿を瑞々しいタッチで描く。 上巻では青年期の北斎の画家としての模索期間に、“異才”写楽との友情、そして絵画表現をめぐる議論が展開されていく。 写楽の個性的な言動に対比されて、北斎の青年期の人物像とその成長ぶりが浮かび上がってくる仕掛けが絶妙。 延々と続く絵画表現をめぐる議論が、不思議と退屈しないで読める。物語展開の軸になる人物視点が、北斎と写楽の二人に交互して効果をあげている。 また、北斎や写楽をとりまく女性達の人物造形にふくらみがあり、華やかで生き生きとしていて、江戸の女性の色っぽさも織り交ぜている。 北斎の伝記評伝ではなく、一人の絵描きを主人公にした、時代ロマン小説の傑作。
北斎の生涯を描いた時代ロマン小説の傑作 人々の生活を見つめ、大いなる自然を見つめ、その感動を絵にした男・葛飾北斎。妻・お砂との運命的な出会い、写楽、馬琴、蔦屋重三郎らとの交流を通じて画家として人間として成長していく姿を瑞々しいタッチで描く。 下巻では、画家として驚異的なほど活躍期間が長く、長命だった北斎の老年期の課題、晩年の老化との飽くなき戦いが展開される。 東洲斎写楽、お砂との死別により、悲嘆にくれる晩年の北斎だが、さらに、歌川広重の登場で、人気に翳りが出て、人気作家の晩年の悲哀を情感豊かに綴る。北斎を喝采と共に受け入れた時代が、やがて北斎を残して先へ進んで行ってしまうが……。
星新一の孫弟子が紡ぐショートショート小説 本書は、「星新一の孫弟子」と呼ばれる気鋭の作家・田丸雅智氏が、ささやかな幸せを追い求める家族たちの「一瞬の風景」を活写! 人情もの、ユーモアからファンタジー、ホラーまで、「思い出アルバム」をイメージしたショートショート集です。 ●分身が作れる石鹸で3人の妻と同棲生活をすることになった夫の悲哀をコミカルに描く「白妻、黒妻」 ●傷口に貼った絆創膏から育つ植物の実を食べる息子の闇を照らすホラー「吸血木」 ●変な趣味を持つ父親が娘の結婚式で披露する贈り物が泣ける「鳩の箱」 ●長年連れ添った最愛の妻に先立たれた老人が辿り着いた異次元の世界を紡ぎ出すファンタジー「おいらんちゅう」 ・・・・・・など、新たな書き下ろし作品を含めた異色の18編を収録。 田丸氏は、2014年に単行本デビュー以来、又吉直樹(ピース)、大森望(書評家)、新井素子(作家)など、各氏が絶賛する新世代ショートショート作家。非日常と懐かしさがないまぜになった摩訶不思議な読後感は、目眩がしそうなほどキョーレツです。 平成の「ショートショート」ブーム到来! 星新一に夢中になった、あの「熱読体験」を再びーー。 【編集担当からのおすすめ情報】 新世代ショートショート作家の田丸雅智氏は小学館の月刊小説誌『STORY BOX』に「ショートショート千夜一夜」を大人気連載中です。
佐藤浩市主演映画ノベライズ 北海道、美瑛。四季折々の彩り豊かな風景を見せてくれる美しい大自然のなかにたたずむ、赤い屋根のログハウス。第二の人生をこの素晴らしい景観のなかで過ごそうと、篤史と良子の夫婦は、長年住み慣れた東京から、この地にやってきた。 良子は篤史に家を囲む石塀作りを頼んだが、持病だった心臓の病を悪化させ、帰らぬ人となってしまう。失意の底に沈む篤史だったが、そんなある日、良子からの手紙を受け取る。そこには、石塀をぜひ完成させてほしい、と綴られていた。それからも、良子からの手紙は、次々と篤史のもとに届き続けたーー。
大人気コミックの映画版を完全ノベライズ! 行方知れずだった父の葬式で、三姉妹は腹違いの妹に出会う。大人以上に気丈な異母妹ーすずに、長女の幸は声をかける。「一緒に暮らさない?」 しっかり者の長女・幸。姉とぶつかることの多い次女・佳乃。マイペースな三女・千佳。そして、不倫の子であると負い目を抱えながらも鎌倉に来る決意をした四女、すず。四姉妹の生活が始まったが…。 鎌倉を舞台に、人の強さ、弱さ、優しさを温かい視点で描いた累計250万部突破・マンガ大賞2013受賞、「flowers」で連載中の大人気コミック『海街diary』を実写映画化、その完全ノベライズをお届け! 2015年6月13日公開。監督・脚本は是枝裕和、四姉妹キャストは綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず。
高校時代、同じ演劇部に所属していた女友だち五人。外資系の会社で働きながら劇作家を目指す聖衣子、劇団で芝居を続けるサキ、雑誌編集者で未婚の母の真利江、エステティックサロンのインストラクター・羊子、裕福な家庭で育ったピアノバーの演奏者・伊佐子。境遇も職業も違う五人は、今でも定期的に女子会で近況を報告し合っていた。五人それぞれの人生をそれぞれの目線で綴った、女性の生き方オムニバス長編の元祖。仕事や恋、対人関係に揺れ、傷つきながらも知的で美しいハンサムガールへと変身する女性の姿を鮮やかに描く傑作。