出版社 : 彩流社
いま再び注目される光州事件にいたる時代背景。軍事独裁政権下で、弾圧を覚悟し、民主化のために信念を貫いて発表した著名な詩人たちの抵抗詩ー。
原作以上におぞましい悲劇! 世界文学の「モナリザ」と言われるシェイクスピア「ハムレット」を翻案/パロディ化した異色の創作。実は、若き日の母ガートルードと義弟クローディアスは恋仲にあったのだ、とする仮定の妙。原作を超えるような抜き差しならぬ「夫殺し」と「父殺し」の交錯。太宰治「新ハムレット」、橋本治「老いぼれハムレット」、トム・ストッパード「ローゼンクランツとギルデスターンは死んだ」等、数多の小説や戯曲がある中、本書は、作品ハムレットの本質にもっとも根源的に迫らんとする小説と言えよう。 「おまえは、絶対に蛇に手を触れてはならない。蛇に手を触れるとき、おまえは破滅する」と私に魔女が言ったのです。
1997年、日本海の島から湘南へ。2006年、戦時下の生と謎に包まれた八丈島の海へ。2011年、思い出の地で遭遇する“悲劇”の三陸の海。大らかな海が秘めた青く小さい涙の粒…女たちの「悲しみの海」物語。附 青木磨崖梵字群ー実録・新宿ゴールデン街。新宿ゴールデン街で有名だった文壇バー「まえだ」のママ前田孝子さんと作家の中山あい子さん、脚本家の大野靖子さん三人の奇しき関係を描く。
主人公クララは35歳。離婚して、幼稚園児と小学生の二人の男の子を抱え、テレビのプロダクション会社に勤め、番組制作の仕事、アルバイト、離婚した前夫、息子たち、セックスライフなど、問題を抱えながらもごくふつうの生活を送っている。…電気技師だった元夫は、会社経営を始めては失敗ばかり、クララに内緒で家を抵当に銀行から借り入れをするが、返済を迫られ大騒ぎになる。…クララに辛く当たる母親、父には昔からの愛人マイテがいて、離婚されるが娘とは連絡し合い、元の妻も愛している。登場人物は、スタイル、長所、欠点など活き活きと描かれ、いつでも市井で知り合えるような人々ばかりである。…あるきっかけで登場人物全員が一堂に会し、歌劇のフィナーレさながらの大団円。
発表当時は近未来的といわれた「小説」がいまになって現代的問題としてとらえられつつある。地球温暖化、気候変動、医療過誤、幼児虐待、セックスレス、性的倒錯、コンピュータゲーム中毒、薬物乱用、内戦、爆弾テロなど、あらゆる「問題」が描かれた。これぞまさに小説。
著者チョ・ヘジンが二〇一三年から二〇一六年までに発表した九つの短篇を収録した本書。傷つき忘却される人びとを記憶し続けなければならないという作家の切実な思いは、優しくも力強い言葉に乗って誰かの希望となり、強者に押し込められた孤独から、救う者と救われる者を護り照らす、ぬくもりに満ちた一筋の光となるだろう。
この記憶は いつまで わたしに残るのだろうか 天皇の庭師だったアリトモと、日本軍の強制収容所のトラウマを抱えるユンリン 1950年代、英国統治時代のマラヤ連邦(現マレーシア) 日本庭園「夕霧」を介して、ふたりの人生が交錯する── 同名映画『夕霧花園』【トム・リン監督/リー・シンジエ、阿部寛出演】原作 (2019年映画化、2021年7月24日、日本公開)。http://yuugiri-kaen.com/ マン・ブッカー賞最終候補に選ばれ、現代アジア文学で最も優れた小説に贈られるマン・アジア文学賞等を受賞。17ヵ国語に翻訳され、高い評価を受けている。 【あらすじ】 封印していた数々の記憶が、「夕霧」でふたたび流れ出す── 1980年代のマレーシア。 連邦裁判所判事の職を離れたテオ・ユンリンは、キャメロン高原の日本庭園「夕霧」を再訪する。 そこは、30数年前、日本庭園を愛する姉の慰霊のために、日本人庭師ナカムラ・アリトモに弟子入りした場所だった。 日本軍のマレー半島侵攻、戦後マラヤの「非常事態」を背景に、戦争で傷ついた人びとの思いが錯綜する。 夕霧花園 著者による注釈 訳注 訳者解説 訳者あとがき
荘園制の残り香がかおるスペイン南西エストレマドゥーラの大農園。還暦を過ぎ認知症を患ったアサリアスは暇を出され、義弟の家へやっかいになる。義弟はすぐれた嗅覚をもち、主人の狩りのお供にと重宝されていたが、ある日事故で足を骨折してしまう。義弟のかわりにアサリアスがお供をするも、いつもどおりとはいかない。狩りの調子は振るわず、苛立った主人が怒りをぶつけた先は…。広がる果てない原野と鬱蒼とした森、そして無垢なる労働者たち。生命の息づかいは漂い流れるーエストレマドゥーラの乾いた風に乗って…。戦後スペイン文学の巨匠ミゲル・デリーベスによる名著。農園主とその労働者たちの生きる姿を圧倒的な筆致で描き出す。
至急、魂を解放せよ!-音楽は人間の喜怒哀楽とは切っても切れない関係にある。楽しい時、哀しい時、人は気持ちを音楽に託す。ジャズももちろんそうである。ジャズは黒人から発生したもので、奴隷の苦しみから逃れていく“自由への讃歌”が音楽にこめられていた。つまり、魂の解放だ。ジャズがニューオーリンズで誕生してから多くのミュージシャンが「魂の解放」の音楽を時代ごとにつくりあげてきたのだ。本書では「魂の解放」「魂の叫び」をテーマとして、人生をジャズに捧げたミュージシャンたちをモデルに12篇の短編推理小説「ジャズメガネの事件簿」を掲載。ジャズ史に隠されたエピソードと謎をジャズ探偵、成瀬涼子が解き明かす。そして、モデルのミュージシャンたちに捧げられたエッセイが各小説ごとに付随されている。それらのテーマはまさにスピノザの名著「エチカ」に通じるものがある。
台湾と日本。歩行と走行。二ヶ国を行きつ戻りつ、足とスケボーを興じ分けつ、そんなササキの日常に浮かび上がる落語家志望の元台湾人留学生。病み上がりの師匠が台湾語落語を完成させれば、消えた学生求めて物語が動き始める。学生は何故に消え、何故そこにいるのか。聞こえて来たのは台湾統一地方選挙の盛り上がり。師弟の二人会は実現するのか?ドタバタでもありながら歴史を汲んで大まじめ。台湾(語も)、落語、スケボー、これらが必然に絡んだ400枚!