出版社 : 彩流社
ベストセラー小説『かがみの孤城』(辻村深月、ポプラ社、2018年本屋大賞受賞)は、学校で傷つき居場所をなくした少年少女が居場所を求めて不思議な居場所(孤城)で繰り広げる物語。大きな感動を呼んだ衝撃のラストシーンは、2017年単行本の元になったポプラ社のPR誌連載版では想定されていなかったものであり、むしろ矛盾さえするものであった。単行本への大改作を詳しく検証し、新しい結末が生まれた背景を考える。また、日本のSFアニメ史上最高傑作である『エヴァンゲリオン』シリーズと、『エヴァ』に強い影響を受けて生まれた『魔法少女まどか☆マギカ』の2作品を『かがみの孤城』の源流作品と位置づけ、パラレルワールドなどのキーワードから比較し、現実の相対化、虚構と現実の関係を問う。
「チャリティ(慈悲)」と名付けられた、複雑な出自をもつ若い娘のひと夏の恋──ニューヨークの上流社会を描いた『歓楽の家』、『無垢の時代』で知られ、女性初のピューリッツァー賞を受賞したウォートン中期の名作、本邦初訳 夏 訳注 イーディス・ウォートンと脱出を夢見る異端者たちーー『夏』を中心に 訳者あとがき
漂流民・薩摩の謝五郎はマカオに定住する。阿片禍に苦しむ人びとを見て西洋列強の牙を痛感する。孤児院を設立した謝五郎は道教の道士から自己の立ち位置を悟らされた。風評、疫病、放火等多くの苦難にめげず、広州に支部設立を決意。…支配する者とされる者、欲望渦巻く都市における波瀾の人間絵巻。
希望をすべて、うち捨てることさえできたなら。19世紀英国の田園地帯。少女マギーの安穏な生活は、父の裁判敗訴を引き金に、もろくも崩れ去ってゆく。復讐に燃える兄と宿敵の息子への恋慕の狭間で、少女の心は激しく揺れ動き、そしてまた、いとこの恋人との許されざる愛に苦悩する。
架空の王国ピスエルガに仕えるラウラ・デ・ナジアンジは疲倦宮ユーセフ親王と恋仲だった。宮中ではさまざまな悪謀が渦巻き、ゴシップが囁かれる。そこにユーセフとエルジー姫の結婚の話が持ち上がってくると同時にユーセフの女ったらしぶりも明らかとなり、ラウラは遊ばれていただけであることがはっきりする。裏切られたと感じたローラは、宮廷から身を引き、修道院へ向かうことになるが…。
男は美しいひとを食べたー真実の愛ゆえに。全篇にちりばめられた、古今東西の食人にまつわる膨大な逸話。この、妖しい輝きを発する告白体の小説こそ、カニバリズム文学のイデアへの最接近を果たした奇書と呼んでも過言ではない。
1940年春、ジャパン・ツーリスト・ビューローに入職して2年目の浅田海は、ニューヨーク事務所への赴任命令を受け、太平洋を越え米国大陸へやってきた。すると着任後すぐ、奇妙な電話が事務所へ入る。米国ユダヤ人協会からビューローへ協力を要請する一本の電話をきっかけに、海は壮大な運命に巻き込まれてゆく…。
政府高官ふくめた12名を殺害した容疑で死刑宣告を受けた、死刑囚の「男」。死を約束されたにもかかわらず、不気味なほど穏やかに日々を過ごす「男」に、好奇心を押し殺しながら接する担当刑務官のユン。殺害動機も自身の出自さえも明かさない「男」のもとへ、姉を名乗る女が面会に訪れる。沈黙していた「男」の感情は、それを機に少しずつ、静かに動き始める。
デラシネたちの人間模様…。異彩を放ち常に賞讃されてきたグウェンドレンとグランドコートの男女の描写…。そして物語は核心へ迫ってゆく。歴史を動かした稀有の作品!
ユダヤ問題の核心に迫ったロングセラー!自らのアイデンティティを求めて、ダニエル・デロンダの旅は続く…そして、苦難の果て、決定的な「事実」があった。歴史を動かした稀有の作品!
主人公のヴィは一家の末娘に生まれ、大切にかわいがられて育ってきた。そんな平穏な日々は政況の混乱により奪い去られ、故郷ベトナムからの脱出を余儀なくされてしまう。父を残し、国外へと逃れ、ボートピープルとしてカナダの地に降り立ったヴィを待ち受ける新たな人生の旅路とは…全世界でシリーズ累計70万部以上を売り上げ、29の言語に翻訳され、40の国と地域で愛されるベトナム系カナダ人作家キム・チュイの傑作小説、ついに邦訳刊行!
ジオノ最大の関心事といえる羊と羊飼いを扱った『蛇座』と、彼が生まれ育ち生涯を過ごしたマノスクについて書いた『高原の町マノスク』。書かれていることのすべてが「事実」とは限らない。想像力を奔放に発揮した作者が空想の「マノスク」を語る。ジオノ文学の「素材」がふんだんに撤種されている。
羊の大群と兵士の大群。無慈悲な戦場に送られた兵士たちと銃後を守る女や老人たちを対比して描写する画期的な構想の物語。戦場の「砲弾と砲火の大包丁の下」で右往左往する兵士たち、ヴァランソル高原で戦争の荒波に耐える住人たち。ヴェルダン近辺の熾烈な戦場にプロヴァンスから出兵した二人の青年が見たものは、そしてそこで受けた戦争の傷は?戦争を静かにそして鮮烈にプロヴァンスの視点から物語るジオノの最高傑作にして唯一の反戦小説。