出版社 : 彩流社
主人公デロンダの「アイデンティティ追求」の果てに 行き着いたユダヤ人問題、特異な男女の愛と背徳を ヨーロッパの時代風潮と交錯させ描いた一大ロマン…。 イスラエル建国問題で「歴史を動かした」と評され、 賛否の論争を巻き起こした問題作、新訳で登場! 「この小説で異彩をはなち常に賞讃されてきたのは グウェンドレンとグランドコートの描写である。 『この作品の並はずれた力はきわめて不愉快な男の描写にみられる』 (『英文学史』1927)とラフカディオ・ハーンは言っている」 (「解説」より)。
主人公デロンダの「アイデンティティ追求」の果てに 行き着いたユダヤ人問題、特異な男女の愛と背徳を ヨーロッパの時代風潮と交錯させ描いた一大ロマン…。 イスラエル建国問題で「歴史を動かした」と評され、 賛否の論争を巻き起こした問題作、新訳で登場! 「この小説で異彩をはなち常に賞讃されてきたのは グウェンドレンとグランドコートの描写である。 『この作品の並はずれた力はきわめて不愉快な男の描写にみられる』 (『英文学史』1927)とラフカディオ・ハーンは言っている」 (「解説」より)。
主人公のヴィは一家の末娘に生まれ、大切にかわいがられて育ってきた。そんな平穏な日々は政況の混乱により奪い去られ、故郷ベトナムからの脱出を余儀なくされてしまう。父を残し、国外へと逃れ、ボートピープルとしてカナダの地に降り立ったヴィを待ち受ける新たな人生の旅路とは…全世界でシリーズ累計70万部以上を売り上げ、29の言語に翻訳され、40の国と地域で愛されるベトナム系カナダ人作家キム・チュイの傑作小説、ついに邦訳刊行!
ジオノ最大の関心事であった、羊と羊飼いを扱う 『蛇座 Le serpent d'étoiles』、 そして彼が生まれ育った町について愛着をこめて書いた 『高原の町マノスク Manosque-des-Plateaux』を収める。 見習いの羊飼い、そして羊飼いたちを率いた親方。 羊飼いたちは年に一度、マルフガス高原に集まり、演劇のようなものを 上演する。海や山や河や風などに扮した羊飼いが壮大なドラマを演じる のである。題名『蛇座』は松明で煌々と照らされた広場で行われる夜を 上空から見守っている星座「美しくねじれた蛇座」から取られている。 モンドールの丘、デュランス河、ヴァランソル高原、アッス渓谷、 地元の人々…。ラルグ川で溺れそうになった娘との会話や村の公証人宅 での食事風景など、自然や人間についての描写がせまる。 その想像力を奔放に発揮したジオノが、空想の「マノスク」を語る のである。創作の準備倉庫とでも形容できる地元マノスクの内と外が 入念に紹介されるのが『高原の町マノスク』だ。 作家ジオノの懐をうかがうように読み進めることができる作品である。
ジオノによる唯一の反戦小説。 ヴァランソル高原を通過する羊の群れ。 羊の群れ(Troupeau)と兵士の群れ(Troupe)。 ジオノはフランス人の生活にとり、きわめて重要な「羊」の群れを 冒頭に登場させることによって、この作品に象徴的な意味を注ぎ込んでいる。 若者たちは戦争に出征していった。物語のなかで血なまぐさい 戦闘そのものが描写されることはない。 致命傷を負い瀕死の状態にある戦友を見守る兵士。 ドイツ軍が撃ってくる弾丸を塹壕のなかで避けている兵士。 妻からの手紙を読む兵士。死んだ赤ちゃんを齧っている豚に短刀を 突き刺し、豚と格闘する兵士。羊の群れのなかの もう動けなくなっていた子羊を預けていた老羊飼いがその子羊を 受け取りにアルルからやってくる。折しも赤ちゃんが生まれ、 ヴァランソル高原にも生命の兆しが感じられるようになっていく。 正義や平和のための戦争はありえない。戦争はいったん始まって しまうと、止められない。戦争は戦闘に参加する兵士たちだけでなく、 銃後を守る女や老人・子供にも悲惨さしかもたらさないことを、 この作品は雄弁に語っている。
謎に包まれた偽作も生まれた世界的ベストセラーの背景! 本書は『ドン・キホーテ』誕生の歴史的背景とエピソード、 十六・十七世紀当時のスペインのひとびとが何を考え、何を食べ、 どのような暮らしていたのかを綴る。図版多数! 1『ドン・キホーテ』を巡る考察 第一章 ドン・キホーテを狂わせた書物 第二章 もうひとつの『ドン・キホーテ』後編 第三章 『ヘロニモ・デ・パサモンテの生涯と苦難』 とレパント海戦 第四章 郷士ドン・キホーテの家系調査 II ドン・キホーテ時代の生活と技術 第五章 ドン・キホーテの経済状態 第六章 ドン・キホーテ時代の献立 第七章 四大河川の水利用 第八章 風車と水車 第九章 ドン・キホーテの衣服 文献 年表 索引
ジャン・コクトーも、アンドレ・ジッドも、ココ・シャネルも、敬愛するから利用したー。パリで青春を謳歌した作家による実名小説ならではの、20世紀の花形たちをこれでもかと散りばめた、豪華絢爛の人物絵巻!瀟洒と放蕩の間隙に産み落とされた作家の自省的私小説、本邦初訳。
事実と虚構を交えて語られる『木を植えた男』の作者 ジャン・ジオノの驚くべき少年時代を描いた物語。 妄想的な少年ジャン、女性に対する過敏とまで表現できるような 感受性、父親への揺るぎない信頼、音楽への本能的な共鳴、 樹木や動物への限りない親愛の情。 ジオノ文学を豊かに深遠にまた普遍的なものにしていく 創造活動の揺籃期が雄弁に喚起されている。
本邦初訳! 20世紀スペイン文学を代表する作家デリーベスの短・中篇集。 都会と田舎、異なる舞台に展開される四作品を収録。 「自然」、「身近な人々」、「死」、「子ども」 ──デリーベス作品を象徴するテーマが 過不足なく融合した傑作集。
再生の物語 男と女の再生、農業の復活、廃墟同然だった村の復興の物語…… 小川の流れとひとりの女の魔術と力強い犂(すき)が この再生の物語を支えている。 本作は、「牧神三部作」構成となっていた 第1作『丘』、第2作『ボミューニュの男』に続く、 第3作目の作品である。 再生の鍵を握っていたのは鍛冶屋ゴーベールが作った犂であった。 農業をはじめるには犂が必要不可欠だからである。 また、パンチュルルが農業に目覚めるにはアルスュールとの 出会いと彼女の助言が必要だった。 パンチュルルが滝に流れ落ちることによってはじめて パンチュルルはアルスュールとじかに知り合うことができた。 水もまた重要な役割を担っているということが了解される。 滝から流れ落ちたパンチュルルは、 今では頑丈な樹木と形容するに足るだけの男に変身している。 パンチュルルの方にアルスュールが誘導されていったのは、 マメッシュが演じた「樹木」のおかげである。 水と樹木と犂とひとりの女の魔術によって この再生の物語は完成することができたのである。
コンスタンチノープル防衛のための異教徒トルコ軍との戦い ーー天下無敵の父アマディス・デ・ガウラの子 『コンスタンチノープル皇帝エスプランディアン』の波瀾万丈の 世界を描く古典的名書。 スペイン版「騎士道物語」『アマディス・デ・ガウラ』の続編。 本邦初訳! 「父親への温情を息子(エスプランディアン)にもと言うわけには いかん。家政婦さん、窓を開けてこいつを裏庭へ放りなされ、 これからやる焚き火の火付け役に使うとよろしい。」家政婦は 喜々として言われるとおりにした。かくして英傑エスプランディアンは 裏庭へ舞い降り、迫り来る火炎をじっと待つことになったのである。」 ( セルバンテス『新訳 ドン・キホーテ』第6章より)
社会と隔絶した「ボミューニュ」の集落で 孤立して暮らす人びと…… 彼らの索漠とした生活は、平穏な暮らしへと変わって 行きうるものでもあった…… 本作は「牧神三部作(第1作『丘』、第3作『二番草』)」 の第2作である。 人びとは、主人公のハーモニカの演奏により 住人相互のコミュニケーションが取り戻され、 ふたたび人間らしい暮らしを楽しめるようになった。 人間社会の外にあるような世界の驚異を扱うのが 「牧神三部作」の特徴である。 主人公アルバンが奏でるハーモニカの限りなく雄弁な音楽に、 この世のものと思えない、それがあらわれている。
韓国文壇界、新進気鋭の若手作家による長編小説! 日経新聞に書評掲載など、 国内でも反響の大きかった 『娘について』の著者、キム・ヘジンが、 絶望の淵に立つ男女の愛を描き出す…本邦初訳! これがどん底だと思ってるでしょ。 違うよ。底なんてない。 底まで来たと思った瞬間、 さらに下へと転げ落ちるのーー (本文より) 路上生活者となった若い男、同じく路上で暮らしながら、 毎晩、際限なく酒をあおる病気持ちの女。 ホームレスがたむろする中央駅を舞台に、 二人の運命は交錯する。『娘について』 (亜紀書房刊)を著したキム・ヘジンによる、 どん底に堕とされた男女の哀切な愛を描き出す長編小説。 現在形の直線的な文章で断崖絶壁に追い詰めては 平地に連れ戻す、この文体の力は、永きにわたり 韓国文学の財産になるであろう。 ──「第5回中央長編文学賞受賞作」審査評 愛の本質を探究しつつも、限界に達した資本主義の 影と社会の問題を見逃さない若い作家の洞察…… 作品に深みを与えるまっすぐで流麗な文章 ──中央日報 書評
地球規模の環境問題が深刻化する現在、 進展めざましい 「エコクリティシズム」に、 環大西洋的(トランスアトランティック)交流の視点を導入。 エコロジー思想の源泉のひとつ、 イギリス・ロマン主義と アメリカのロマン主義(アメリカン・ルネサンス)の 環境文学・環境思想の相互作用、浸透を分析。 20世紀以降の自然保護運動や 環境意識に与えた影響、現代の環境批評に繋がる観点を捉える。 第1部 環大西洋の言語空間──自然・精神・歴史 第1章 「見えざる世界の証明」 ──スヴェーデンボリ、ブレイク、エマソン (鈴木雅之/京都大学名誉教授・宮城学院女子大学学芸学部特命教授) 第2章 「歴史」の解体 ──エマソンの自然像と環大西洋思想の文脈 (成田雅彦/専修大学経営学部教授) 第3章 トランスアトランティックな遡行とエコロジカルな再生 ──メルヴィルの小説におけるアメリカ独立革命 (竹内勝徳/鹿児島大学法文学部教授) 第2部 物語る自然のトランスアトランティックな共鳴 第4章 ミルトン、コウルリッジ、ソロー ──レテの川から難破の浜辺へ (伊藤詔子/広島大学名誉教授) 第5章 ワーズワスからソローへ ──「躍動する物質」のロマン主義的系譜 (小口一郎/大阪大学大学院言語文化研究科教授) 第6章 破局のエコノミー ──クレアとソローの自然史 (金津和美/同志社大学文学部教授) 第7章 メルヴィルとマテリアル・エコクリティシズム ──トランスアトランティックに捉えるその創造性 (藤江啓子/愛媛大学名誉教授) 第3部 自然と人の持続可能な関係性に向けて 第8章 環大西洋の田園共和主義と北方の原野 ──ウルストンクラフトの環境意識 (川津雅江) 第9章 鯨のエコロジー ──『白鯨』のテクノロジーとエコノミー (植月惠一郎/日本大学芸術学部教授) 第10章 楽しむ心を持つすべての人に ──風景観光・歩行の詩学・自然保護 (吉川朗子) コーダ 経験主義、情報管理、環境人文学 (スコット・スロヴィック/ アイダホ大学教授、ASLE機関誌ISLE編集長 【大野美砂(東京海洋大学学術研究院准教授)訳】)
不義の子アマディスのオリアナ姫との別離。 「緑の剣の騎士」としての苦難。怪物エンドリアゴとの死闘。 オリアナ姫との再会ならびに 「美貌の息子・エスプランディアン」の誕生など 「ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ」の頭を狂わせた スペイン最古の騎士道物語の大長編、後半。 「…アマディスは勇猛なる恋する騎士たちの指針、明星、 太陽であって、恋と騎士道の旗印のもとに戦うわれらは、 すべからくそのすべてを真似るべきである。 そう言う次第であるから、友達のサンチョ、アマディスを もっともよく真似る遍歴の騎士こそが騎士道の完成にもっとも 近くにいるとわしは考えるのだ。この騎士が分別、勇気、度量、 忍耐、ゆるぎなき愛を端的に見せたのは、オリアナ姫に疎まれて ペニャ・ポブレに身をもって苦行に身を投じたときだった。」 (セルバンテス『新訳 ドン・キホーテ』第25章より)
『ドン・キホーテ』の原点…「ドン・キホーテ・デ・ ラ・マンチャ」の頭を狂わせたスペイン最古の騎士道物語。 ガウラ(フランス)王とスコットランド王女との間に 生まれた不義の子「アマディス(アマデウス)」についての 物語「アーサー王伝説」につらなる、全ヨーロッパを舞台に したアマディスとオリアナ姫との禁断の恋と 各国との死闘を描く奇想天外な伝説の書、大長編、前半! 本邦初訳! 「ドン・キホーテはまだ眠っていた。…ニコラス親方がまず 手渡したのは『アマディス・デ・ガウラ 全四巻』であった。 司祭が言った。 「はて面妖な。聞くところによると、この書物こそが スペインで印刷された最初の騎士道本であって、ほかのものは これを手本とも模範とも仰いでいるそうな。 邪悪なる教義を説く一派の祖師であれば、迷うところなく火刑じゃ。」 「いやいや」と親方が言った。 「この分野の書物で最良の出来だとも聞いておりますよ。 最高傑作として許されるべきですな。」 (セルバンテス『新訳 ドン・キホーテ』第6章より)
ほかの作家と並置し、ある観点から比較することで立ちあがるベロー文学の広がりと深さ…。アメリカ文学史に顔を出す名だたる作家たちの重要作品と一緒にベローの小説が縦横に論じられていく本書では、その思わぬ影響関係をもつ文学世界に引きずり込まれてゆく。現代的問題と文学の癒しが交差するベロー文学論集。