小説むすび | 出版社 : 彩流社

出版社 : 彩流社

蛇座蛇座

ジオノ最大の関心事であった、羊と羊飼いを扱う 『蛇座 Le serpent d'étoiles』、 そして彼が生まれ育った町について愛着をこめて書いた 『高原の町マノスク Manosque-des-Plateaux』を収める。 見習いの羊飼い、そして羊飼いたちを率いた親方。 羊飼いたちは年に一度、マルフガス高原に集まり、演劇のようなものを 上演する。海や山や河や風などに扮した羊飼いが壮大なドラマを演じる のである。題名『蛇座』は松明で煌々と照らされた広場で行われる夜を 上空から見守っている星座「美しくねじれた蛇座」から取られている。 モンドールの丘、デュランス河、ヴァランソル高原、アッス渓谷、 地元の人々…。ラルグ川で溺れそうになった娘との会話や村の公証人宅 での食事風景など、自然や人間についての描写がせまる。 その想像力を奔放に発揮したジオノが、空想の「マノスク」を語る のである。創作の準備倉庫とでも形容できる地元マノスクの内と外が 入念に紹介されるのが『高原の町マノスク』だ。 作家ジオノの懐をうかがうように読み進めることができる作品である。

大群大群

出版社

彩流社

発売日

2021年3月3日 発売

ジャンル

ジオノによる唯一の反戦小説。 ヴァランソル高原を通過する羊の群れ。 羊の群れ(Troupeau)と兵士の群れ(Troupe)。 ジオノはフランス人の生活にとり、きわめて重要な「羊」の群れを 冒頭に登場させることによって、この作品に象徴的な意味を注ぎ込んでいる。 若者たちは戦争に出征していった。物語のなかで血なまぐさい 戦闘そのものが描写されることはない。 致命傷を負い瀕死の状態にある戦友を見守る兵士。 ドイツ軍が撃ってくる弾丸を塹壕のなかで避けている兵士。 妻からの手紙を読む兵士。死んだ赤ちゃんを齧っている豚に短刀を 突き刺し、豚と格闘する兵士。羊の群れのなかの もう動けなくなっていた子羊を預けていた老羊飼いがその子羊を 受け取りにアルルからやってくる。折しも赤ちゃんが生まれ、 ヴァランソル高原にも生命の兆しが感じられるようになっていく。 正義や平和のための戦争はありえない。戦争はいったん始まって しまうと、止められない。戦争は戦闘に参加する兵士たちだけでなく、 銃後を守る女や老人・子供にも悲惨さしかもたらさないことを、 この作品は雄弁に語っている。

二番草二番草

再生の物語 男と女の再生、農業の復活、廃墟同然だった村の復興の物語…… 小川の流れとひとりの女の魔術と力強い犂(すき)が この再生の物語を支えている。 本作は、「牧神三部作」構成となっていた 第1作『丘』、第2作『ボミューニュの男』に続く、 第3作目の作品である。 再生の鍵を握っていたのは鍛冶屋ゴーベールが作った犂であった。 農業をはじめるには犂が必要不可欠だからである。 また、パンチュルルが農業に目覚めるにはアルスュールとの 出会いと彼女の助言が必要だった。 パンチュルルが滝に流れ落ちることによってはじめて パンチュルルはアルスュールとじかに知り合うことができた。 水もまた重要な役割を担っているということが了解される。 滝から流れ落ちたパンチュルルは、 今では頑丈な樹木と形容するに足るだけの男に変身している。 パンチュルルの方にアルスュールが誘導されていったのは、 マメッシュが演じた「樹木」のおかげである。 水と樹木と犂とひとりの女の魔術によって この再生の物語は完成することができたのである。

中央駅中央駅

韓国文壇界、新進気鋭の若手作家による長編小説! 日経新聞に書評掲載など、 国内でも反響の大きかった 『娘について』の著者、キム・ヘジンが、 絶望の淵に立つ男女の愛を描き出す…本邦初訳! これがどん底だと思ってるでしょ。 違うよ。底なんてない。 底まで来たと思った瞬間、 さらに下へと転げ落ちるのーー  (本文より) 路上生活者となった若い男、同じく路上で暮らしながら、 毎晩、際限なく酒をあおる病気持ちの女。 ホームレスがたむろする中央駅を舞台に、 二人の運命は交錯する。『娘について』 (亜紀書房刊)を著したキム・ヘジンによる、 どん底に堕とされた男女の哀切な愛を描き出す長編小説。 現在形の直線的な文章で断崖絶壁に追い詰めては 平地に連れ戻す、この文体の力は、永きにわたり 韓国文学の財産になるであろう。 ──「第5回中央長編文学賞受賞作」審査評 愛の本質を探究しつつも、限界に達した資本主義の 影と社会の問題を見逃さない若い作家の洞察…… 作品に深みを与えるまっすぐで流麗な文章             ──中央日報 書評

トランスアトランティック・エコロジートランスアトランティック・エコロジー

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彩流社

発売日

2019年10月11日 発売

ジャンル

地球規模の環境問題が深刻化する現在、 進展めざましい 「エコクリティシズム」に、 環大西洋的(トランスアトランティック)交流の視点を導入。 エコロジー思想の源泉のひとつ、 イギリス・ロマン主義と アメリカのロマン主義(アメリカン・ルネサンス)の 環境文学・環境思想の相互作用、浸透を分析。 20世紀以降の自然保護運動や 環境意識に与えた影響、現代の環境批評に繋がる観点を捉える。 第1部 環大西洋の言語空間──自然・精神・歴史 第1章 「見えざる世界の証明」   ──スヴェーデンボリ、ブレイク、エマソン (鈴木雅之/京都大学名誉教授・宮城学院女子大学学芸学部特命教授) 第2章 「歴史」の解体   ──エマソンの自然像と環大西洋思想の文脈 (成田雅彦/専修大学経営学部教授) 第3章 トランスアトランティックな遡行とエコロジカルな再生   ──メルヴィルの小説におけるアメリカ独立革命 (竹内勝徳/鹿児島大学法文学部教授) 第2部 物語る自然のトランスアトランティックな共鳴 第4章 ミルトン、コウルリッジ、ソロー   ──レテの川から難破の浜辺へ (伊藤詔子/広島大学名誉教授) 第5章 ワーズワスからソローへ   ──「躍動する物質」のロマン主義的系譜 (小口一郎/大阪大学大学院言語文化研究科教授) 第6章 破局のエコノミー   ──クレアとソローの自然史 (金津和美/同志社大学文学部教授) 第7章 メルヴィルとマテリアル・エコクリティシズム   ──トランスアトランティックに捉えるその創造性 (藤江啓子/愛媛大学名誉教授) 第3部 自然と人の持続可能な関係性に向けて 第8章 環大西洋の田園共和主義と北方の原野   ──ウルストンクラフトの環境意識 (川津雅江) 第9章 鯨のエコロジー   ──『白鯨』のテクノロジーとエコノミー (植月惠一郎/日本大学芸術学部教授) 第10章 楽しむ心を持つすべての人に   ──風景観光・歩行の詩学・自然保護 (吉川朗子) コーダ 経験主義、情報管理、環境人文学 (スコット・スロヴィック/ アイダホ大学教授、ASLE機関誌ISLE編集長 【大野美砂(東京海洋大学学術研究院准教授)訳】)

アマディス・デ・ガウラ(上)アマディス・デ・ガウラ(上)

『ドン・キホーテ』の原点…「ドン・キホーテ・デ・ ラ・マンチャ」の頭を狂わせたスペイン最古の騎士道物語。 ガウラ(フランス)王とスコットランド王女との間に 生まれた不義の子「アマディス(アマデウス)」についての 物語「アーサー王伝説」につらなる、全ヨーロッパを舞台に したアマディスとオリアナ姫との禁断の恋と 各国との死闘を描く奇想天外な伝説の書、大長編、前半! 本邦初訳! 「ドン・キホーテはまだ眠っていた。…ニコラス親方がまず 手渡したのは『アマディス・デ・ガウラ 全四巻』であった。 司祭が言った。 「はて面妖な。聞くところによると、この書物こそが スペインで印刷された最初の騎士道本であって、ほかのものは これを手本とも模範とも仰いでいるそうな。 邪悪なる教義を説く一派の祖師であれば、迷うところなく火刑じゃ。」 「いやいや」と親方が言った。 「この分野の書物で最良の出来だとも聞いておりますよ。 最高傑作として許されるべきですな。」 (セルバンテス『新訳 ドン・キホーテ』第6章より)

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