出版社 : 徳間書店
恋愛で結びつくなどという結婚は、働かないと食べてゆけない人がすることー。上流階級でしか暮らせない男女のめぐり逢いを、醒めた文体で描いた、四篇からなるロンド小説。欲望を経た純愛、秘かな被虐性愛、静かに熱を帯びる片恋、南島での邪淫。満ち足りた暮らしの満たされない孤独を、四組の「わたし」と「藤沢さん」が織りなす。異才が贈る、正しい背徳と倦怠。
北町奉行所同心見習いの長谷啓之進に従っていた岡っ引の仙蔵が突然姿を消す。同じ長屋のおくまは「十日前に色白で綺麗な女が訪ねてきた」と言い、二人は不釣合だったと笑った。元巾着切りの仙蔵とその女は一体どんな仲なのか?隣に住む青柳新八郎は心配で行方を追っていく。すると、ちょうど用心棒を請け負っている買取り屋の大おかみと仙蔵とが思いもよらぬ糸で繋がっていた!
尼崎藩の元江戸家老、塩谷隼人もついに隠居。長屋の大家としての第二の人生が始まった。美貌の書道家弥生も新たに店子に加わり、穏やかな日常が続くかと思われた。そんなある日、長屋出入りの魚屋の太助が、棒手振りの同業者から逆恨みで襲われる光景に、隼人は出会す。天秤棒を振り回し、見事追い払う太助であったが、隼人は苦言を呈する。「生兵法は怪我の元と申すは、おぬしのことぞ」
防衛省情報官・伊吹司が護衛するアメリカの要人が襲撃された。しかし戦闘のプロを相手に司は手も足も出ない。そんな司をあざ笑うかのように、今度は日本の高官が暗殺されてしまう。誰が何のために殺しているのか混乱する司だったが、同日、特務機関ラバーズへの招集がかかる。生存率60%と言われるラバーズの日々が、また始まった。ド派手アクション満載の三カ月連続刊行第二弾!
突然、寄場詰同心の役を解かれた南町奉行所の帰山貴三郎。小りんという謎の女に連れて行かれたのは、南町奉行の根岸鎮衛配下の与力の元だった。犯科の増大を憂えた奉行は、隠密裡に探索し撲滅せよとの「特命」をくだす。帰山は元門前廻り同心の深草新吾とともに抜擢されたのだ。ある老婆の死に不審を感じて調べ始めると、つましい暮らしなのに、どこかに毎月一両もの大金を送金していた。書下し時代活劇。
東京・深大寺の参道でテレビ番組のディレクター、井上美奈子がお遍路姿の絞殺体で発見される。彼女が企画した“お遍路ゲーム”収録目前の出来事だった。翌日、捜査本部に「お遍路の途中で人が殺される」という電話が。徳島に飛んだ十津川はお遍路姿に変装し収録を見守るが、新たな殺人事件が発生する!!巻末に長篇推理「寝台特急トワイライトエクスプレスを爆破せよ」連載!!
将軍家綱のお髷番にして寵臣深室賢治郎は館林徳川家の黒鍬者に襲われるが、返り討ちに。老中阿部忠秋はこれを謀叛と取り、賢治郎に黒鍬者殲滅を命じる。一方、将軍正室の懐妊を確信した甲府藩家老堀田正俊は、大奥に刺客を送って害そうと画策。家綱の身にも危難が迫る。事態を打破しようとする賢治郎だが、目付に用人殺害の疑いをかけられーー。寵臣として最大の試練。その真価が問われる。
ローカル線の駅舎が改装寸前に著名な建築家の作品かもしれないとわかり、保存と改修でゆれる田舎町。久しぶりに帰省で戻ってきた大学院生の青年は、その騒動の渦中に思いっきり巻き込まれて……。傑作青春ミステリー。
「ハマの用心棒」と呼ばれ、暴力団から恐れられている神奈川県警みなとみらい署の暴対係長・諸橋。陽気な相棒・ジョーこと城島をはじめ、部下たちから尊敬、信頼されている。ある日、馴染みのやくざ・神野組唯一の組員・岩倉が身柄を拘束された。素人に手を出したという。昔気質の神野が素人に手を出すはずがない。諸橋と城島は岩倉の取調に立ち会う。 表題作「防波堤」他、横浜を舞台に悪と戦う諸橋班の活躍を描く6篇を収録。
殺人罪で六年の刑期を終えた小早川恵太が熱海に帰ってきた。平穏な温泉街に緊張が走る!!そして二週間後、湯河原に住む会計士が何者かに射殺される。そんな折、十津川警部は東京で発生した幼女誘拐事件の容疑者として小早川をマークする。ところが、新たに起きた連続殺人事件が十津川に立ちはだかる!!巻末に長篇推理「寝台特急トワイライトエクスプレスを爆破せよ」連載!!
どの藩の経済も傾いてきた寛延三年、藩札掛となった奥脇抄一郎は命を賭すにたる御勤めと確信。飢饉の際、藩が命ずる実体金に合わない多額の藩札刷り増しを拒み、藩札原版を抱え脱藩。江戸で、表向きは万年青売りの浪人、実はフリーの藩札コンサルタントとなった。各藩との仲介は三百石の旗本・深井藤兵衛。次第に、藩札による藩経済そのものを大本から立て直す仕法に至った矢先、東北の最貧小藩から依頼が…。剣は役に立たない時代、武家が穀潰しでなくなる方策とは?三年で赤貧の小藩に活気ある経済状況をもたらしうるか!
河村金志郎は北町奉行所で定町廻り同心を務めるかたわら、なんと金貸しをやっている。岡っ引きの銀治と下っぴきの音松も、元は闇の金貸し。とはいえ、十手を預かる金志郎が好きで金貸しをやっているわけではない。父親がトイチで借りた三十両を返すため、そして父親を殺した下手人を自らの手で挙げるためだ。銀治と音松の力を借りて、下手人捜しと借金返済を一挙に成し遂げられるか!?
K美を殺してやりたいー呪いの絵馬を出雲大社に掲げた堀井恵が殺された。ジョギング中に轢き逃げされたのだ。十津川警部らの捜査によって、K美とは、モデルあがりのデザイナー井崎清美と判明。当初、エリートサラリーマン栗田信彦をめぐる三角関係のもつれかと思われたが、栗田が、岡山から出雲へ向う特急「やくも」の車中で毒殺され、事件は予想外の展開を…!?傑作長篇ミステリー。
昔の記憶を甦らせてくれないか?いいのかい?頼む…。御門周平は、呪師チムの力によって東亜大学の研究者であった竹島丈二としての記憶を取り戻した。ああ、おれは泣いているのか。その瞬間の心の隙に、マヤの末裔ツァ・コルに、意識を乗っ取られてしまった。友のため、恋人のため、御門=竹島はそれでも疾駆する!ユカタン半島に谺する雄叫び。伝奇アクション、遂に堂々完結!
桑畑の黒い地面からまるで人間の手足がはえているような格好で死体が発見された。惨劇の状況が萩原朔太郎の詩そのもの。警視庁の岡部警部が被害者の上野義則を呼び出した人物を追うと、上野の出身地群馬県で起きた三十年前の中学教師殺人事件に突き当たった。上野は当時、教師の妻の犯行を証言した中学生の一人だったのだ!岡部は二つの事件の関連を読み、教師の息子の行方を追う!