出版社 : 徳間書店
深夜の歌舞伎町。顔面の皮がよじれ、原型をとどめない惨殺死体が三つ発見された。上海クラブを襲ったイラン人たちが、謎の大男に素手で叩き殺されたのだ。男は広東訛りの北京語を喋っていたという。新宿署刑事捜査課一係の松崎は手がかりを求め、事件後に男を治療した外科医・犬養を訪ねる。報復が繰り返され、闇組織の抗争が激化する中、帰宅途中の犬養は例の大男に待ち伏せされ…。
大坂に到着した俊介らが真っ先に向かったのは、名医が営む診療所。原因の分からぬ頭痛で難儀する仁八郎が、ひとり一行を離れ、世話になっているはず。しかし、置き手紙を残したまま、彦根へ発ってしまったと医者は言う。仁八郎の身に一体なにが起こったか?急ぎ後を追う一行を巻き込む、恐るべき陰謀とは?さらに宿敵似鳥幹之丞の魔剣までもが俊介を襲うのか?若殿、危機一髪!傑作廻国活劇第八巻。
2013年に発表された中から、当代の読み手が選んだ名作14篇!新鋭からベテランまで、“いま”を代表する実力派作家が揃いました。ミステリー、ファンタジー、恋愛など、テーマや時代背景はさまざまですが、共通してどの物語からも“読む”ということの楽しさを再発見できるはず。短篇という限られた枚数だからこそ描くことのできた味わい深い物語の数々。
聖斗高校二年生・佐伯晶は、女子と見紛うほどの美貌の持ち主。近寄ってくる女子も多いが、男子のいじめの対象になることも。ある日、二人の男子に詰め寄られているところを養護教諭の水上花に助けられる。それからたびたび保健室を訪れるようになった晶に、次第に翻弄されていく花。そして、晶らしからぬ冷酷な行動を偶然目にして…。学園を舞台に繰り広げられる恋模様。「恋愛教室」シリーズ“保健室”篇。
大学生の麻美はバイト先の書店で、幼馴染みの拓磨に偶然再会。有名化粧品メーカーの社長を父に持つ彼は、大学に通う傍らメイクアップアーティストを目指して修業中だった。引っ込み思案で男性経験もない麻美は、彼の練習台になってメイクをしてもらううちに、少しずつ自分に自信が持てるようになっていくのだが…。誤解が誤解を生み、予想外の展開!?果たして麻美は幸せな恋愛を手にすることができる?
川島美咲は、家柄の良いお嬢様育ち。周囲から特別扱いされ、何不自由ない高校生活を送っていた。美術部顧問・柏木に、ある行為を目撃されるまでは…。「この世には、どんなに欲しがっても手に入らないものがあるってことを、君に教えてあげるよ」。柏木は美咲を翻弄し、支配し、拘束する。自分の存在価値が揺らぎ始めたことに気づいた美咲は…。学園を舞台に繰り広げられる恋物語「恋愛教室」シリーズ・美術室篇。
東京で働く友里子の母校が、近くの高校に統合され、閉校することになった。所属していたヨット部のOB会が開かれることになり、好きだった佑介に久々に会えることを期待して、参加することに…。高校を卒業して十七年。就職、結婚、とそれぞれの人生を歩んでいた彼らは、いろいろな悩みを抱えていた。『探し物は恋なんです』などで評判の著者が、等身大の男女たちの生活・恋愛・仕事を描く。書下し友だち小説。
北アルプス常念岳に通じる林道沿いの小屋から男女の変死体が発見され、長野県安曇野署・道原伝吉の捜査が始まった。男女とも身元がわかる所持品はなく、死亡日時が二〜三日違うことが判明。女のバッグから、大相撲の入場券、奈良正倉院展や銀閣寺のチケット、男の所持品の中に東京・世田谷の酒屋の名刺が見つかった。次第に明らかとなる二人の関係と二人を取り巻く人間模様。女の家族全員の失踪、殺された男の親友だった警察官の拉致…。謎が謎を呼ぶ会心の傑作長篇。書下し。
まるで時の女神が回収し忘れたようだ。北の大地の片隅に、ぽつんとたたずむ中学校分校には、一年生四人と三年生一人が学んでいた。たった五人でも、自称霊感少女もいれば、嘘つきな少年もいる。そこに赴任してきたのは、まったくやる気のない若い教師。けれど、やがて彼が知ることになる少年の嘘の痛ましい理由とは?ときには悩み、傷つきながらも、成長していく五人の、胸を打つ青春前期物語。
清六と四郎は四十年以上「四六漫才」という名で芸人を続けているが、勢いを失い客も入らない。そんな二人に奇跡が!舞台上に乱入してきた男を清六が鮮やかに倒したのだ。会場は大盛り上がりで一躍彼らは時の人に。だがその映像をTVで見た今野淳一は「あれは間違いなく相手を殺すための技だ」と見抜く。清六の過去を探りはじめると謎の殺し屋組織に狙われていることがわかり…!
御家人やくざの白九郎の相棒は、牙黒と名付けた雑種の犬。なぜか、話ができる。柳原の土手を縄張とする野犬たちも、義侠心で結ばれた仲間だ。その土手になんと三万両の埋蔵金が隠されていた!?嗅ぎつけたのは旗本、川舟役人、やくざ者。お宝を掘り出すのに野犬は邪魔と、土手に毒をバラ撒いた。「許せねえ!」と白九郎と牙黒は、その埋蔵金を餌に一網打尽の罠を仕掛ける。
平安末期、源氏方の十六歳の武者、草十郎は、野山でひとり笛を吹くことが好きな孤独な若者だった。将として慕った源氏の御曹司・義平の死に絶望した草十郎が出会ったのは、義平のために魂鎮めの舞いを舞う少女、糸世。彼女の舞に合わせて草十郎が笛を吹くと、その場に不思議な“力”が生じ…?特異な芸能の力を持つ二人の波乱万丈の恋を描く、『空色勾玉』の世界に連なる荻原規子の話題作!
惹かれあう天性の舞姫・糸世と笛の名手・草十郎。二人が生み出す不思議な“力”に気づいた上皇は、自分のために舞い、笛を奏でよと命ずる。だが糸世は、その舞台から神隠しのように消えた。鳥たちの助けを得て、糸世を追い求めていく草十郎の旅は、やがてこの世の枠を超え…?四つの文学賞を受賞した、日本のファンタジーの旗手・荻原規子の不朽の名作、待望の文庫化!
エマノンが旅を続けているのは、特別な目的があるのではなく、何かに呼ばれるような衝動を感じるからだ。人の住まなくなった島へ渡り、人里離れた山奥へ赴く。それは、結果として、絶滅しそうな種を存続させることになったり、逆に最期を見届けることもある。地球に生命が生まれてから現在までの記憶を持ち続ける彼女に課せられたものは、何なのか?その意味を知る日まで、彼女は歩く。
銀次郎の全身から、さながら音を立てて炎を噴き上げていくかのような凄まじい殺気が放たれつつあった。双方まったく動かない。敵の「雷がえし」は殺意を隠し激情を抑え、黙々として暗く澄んでいる。月に雲がかかり、濃い闇が二人を包んだ。闇の中空で鋼の激突しあう音が聞こえ、無数の小さな火花が闇の中を走る。月明かりが戻り、二人の姿が浮かびあがった。ともに息ひとつ乱れていない。
栃木県の那須で開催されるゴルフのビッグトーナメント直前に、「この大会中に、あいつを殺してやる」という脅迫状が舞い込む。競技委員の吉田は十津川に警備を依頼するが、その夜、ひき逃げ事故で死亡。そして、大会最終日、小銃狙撃による殺人事件が起きる。姿を見せない殺人者の狙いは?十津川の推理は!?巻末企画・特別連載「寝台特急トワイライトエクスプレスを爆破せよ」。スペシャル・インタビュー。都道府県別データ。わが故郷の駅弁自慢。
のどかだった町は、すっかり変わってしまったー。移り住んできたよそ者たちの度重なるトラブルに頭を抱えていた桃ノ木坂互助会会長の光太郎。元海自曹長でもある彼は、悪い芽は早く摘まねばと、町に害を及ぼす人物を仲間たちとともに次々と町から追放することに。次なるターゲットは、大家とトラブルを起こしていた男、武藤。しかし、男を狙っていたのは光太郎たちだけではなかった。とある事件を機に、互いの思惑は狂い始め…。江戸川乱歩賞作家の新機軸ミステリー。