出版社 : 徳間書店
幼子の母亜矢子の最近の苛立ちの原因は、ママ友仲間の中心人物麻由による理不尽な嫌がらせ。コミュニティ唯一の独身女性時恵や旧友志穂を心の支えとしつつも、無関心な夫、育児疲れもあいまって、亜矢子は追い詰められ、幸せな日常から転落していく。その破滅の裏側には、思いも寄らない「悪意」が存在していた…。不世出のストーリーテラーが新境地を拓いた、傑作心理ミステリー!
地球に生命が誕生して以来の記憶を受け継がせるため、エマノンは必ず一人の娘を生んできた。しかし、あるとき男女の双生児が生まれて…。「かりそめエマノン」小学四年生の夏休みを曾祖母の住む九州で過ごすことになったぼく。アポロ11号が月に着陸した日、長い髪と印象的な瞳をもつ美少女エマノンに出会った。それは忘れられない記憶の始まりとなった。
最先端の施設警備システム・ROMESを擁する西日本国際空港で、密輪の摘発が続いた。税関から協力要請を受けた空港警備チームは、ROMESを駆使して次々と運び屋たちを発見していく。だが、うまく行きすぎる。疑問を抱いたシステム運用の天才・成嶋優弥はひそかに調査を開始する。大模規密輪を隠れ蓑にして進んでいた恐るべきテロ計画。成嶋は首謀者の男の執念に対抗できるか?
江戸中期、宝暦の京と江戸に怪異が生じた。数珠屋の隠居が夜ごと憑かれたように東山に向かい、白花の下で自害。紀州藩江戸屋敷では、不思議な蓮が咲くたび人が自死した。はぐれ公家の庭田重奈雄は、この世に災厄をもたらす異界の妖草を刈る妖草師である。隠居も元紀州藩士であることに気づいた重奈雄は、紀州徳川家への恐るべき怨念の存在を知ることにー。新鋭が放つ時代伝奇書下し!
かつて御小人目付として剣と隠密探索の達人だった九十九九十郎。だがある事情で職を辞し、今は「仕舞屋」と称してもみ消し屋を営んでいる。そんな九十郎の家を、ある朝七と名乗る童女が賄いの職を求めて訪れた。父母を失ったという七は断っても出て行かず、父仕込みの料理で九十郎を唸らせる。「侍」のもとで働きたいという七の真の目的とは?九十郎の情と剣が、事件と心の綾を解く!時代小説・書下し。
文化二年、お盆の頃。摂津尼崎藩江戸家老・塩谷隼人は胸に虚しい思いを抱えていた。それは、還暦を過ぎた今となっても父の仇討ちを果たせていない悔恨からきている。そんな折、両国広小路で暴漢たちに絡まれていた一人の武士を助けた。松崎と名乗るその武士は、聞けば四十年の間、親の仇を追う身であり、奇しくも隼人と同い年であった。因縁を感じた隼人は、助太刀を決意するが…。
「わたしは、天下布武の子なのだ。何があろうと、決して上様を裏切らない。上様の御為に生きて死ぬ」。信長に初期から仕え、武名高き森三左衛門。その子として美濃・金山城に生を受けた森乱丸は、幼き日に、敬愛する父と兄を戦で失った。やがて美しく才気溢れる若者に成長した乱丸は、信長自らに請われ、近習として仕えることになる。完成間近の安土城、天下の頂点に立とうとする主君。その傍らで苦楽を共にする近習、そして名高き戦国武将たち。十三歳の若武者の目に映じたその姿と心の内とは…。百年の乱世を畢わらせる。主君の大望を果たすため、若武者は、自らの生を賭ける!
永年の宿敵だった本願寺をくだし、朝廷さえ足下におき、天下布武の大望を果たす目前まできた信長。だが、心のうちは孤独だった。長く信長に仕える武将たちはおろか、もっとも身近な近習でさえ信長を恐れ、惑う。ただひとり乱丸のみが、「魔王の子」としてひそやかに信長と父子の絆を交わしていた。やがて乱丸は、光秀の心に兆した翳りに気づき、探りはじめる。すると、乱丸の心を揺らす者が現れた。女郎屋を営む謎のキリシタン女性・アンナ。主君への忠誠とアンナへの想いは秤にかけるものではないはずだったが…。運命の日の朝。乱丸は自らの想いを問われることになる。
渋谷猿楽町署内で奇妙な事件が発生。クスリで保護された12歳の少女が、同時刻に逮捕されてきた万引き主婦のふくらはぎに噛みついたのだ。少女は、「前世で、その主婦が私を殺した復讐だ」と主張。猿楽町署の刑事・一条風太と、モノに残っている残留思念を読む“心の探偵”井伏美潮のコンビが事件の謎を解いてゆく。日本推理作家協会賞受賞の実力派が描く連作ミステリ5篇収録。不思議ミステリー。
世界で最後に生き残った象“ビヒモス”が逃げだし、人々を襲った。由紀彦は、犠牲となった父の仇を討つため、象のいる場所へむかう。その途中、一緒に連れて行ってくれという風変わりな美少女エマノンと出会う。彼女は、ビヒモスに五千万年前に助けられたと話しはじめて…。地球に生命が誕生して三十億年。総ての記憶を、母から娘へ、そして、その娘へと引き継いでいるエマノンの軌跡。
一九八六年に生を受けた僕、宇津木の鬱屈の正体、それはアメリカという国家だ。都合のいいようにルールを決め、世界の覇者気取りで澄ましているあの国を、心の底から軽蔑している。嫌いじゃない、大ッ嫌いだ。では、僕の取るべき行動は何か。強者の脳天に斧を振り下ろすこと。そう。テロルこそもっとも有効な手段なのである!僕はまずアメリカの大学への留学を決め、そこから事を始めた。
「何しに来たんだ、俺は?」伝説の大金持と言われている坂西家へ泥棒に入った淳一だったが、その夜はツイてなかった。一家四人が心中していたのだ。姿を見られつつも淳一は、まだかすかに息をしている学生服姿の少女を助けた。坂西家が気になり、搬送先の病院へ行った淳一は少女と再会してしまう。「私、あいつをこらしめてやる!」思いがけない言葉に秘められた大金持一家の秘密とは?元祖ユーモアミステリー!
奈良の由緒ある尼寺・尊宮寺の養女として迎えられた櫻香は、尼僧・妙蓮たちに大切に育てられた。尼になることに疑問を抱くことなく育った櫻香だったが、中学生になると不審な事件が相次ぐ。「櫻香を出家させるな」と書かれた差出人不明の手紙、突然声をかけてきた見知らぬ女性ー。不安を覚えた妙蓮は、浅見光彦に相談を持ちかける。謎に包まれた櫻香出生の秘密を浅見光彦が解く!
徒党を組み、大店を襲っては殺戮を繰り返し、金品を奪う兇賊赤不動が江戸を去ったとの情報が入った。その探索のため、火附盗賊改方の同心・鏑木十左が御用旅に出た。しかし、その最中、旅籠に火を放ち、彼に襲いかかる者が次々に現れた。赤不動の手の者か、それても怨恨か?十左配下の岡っ引きの八十助と、老中・松平定信の命を受けた隠密の紫乃も駆けつけ、未知なる敵に立ち向かう。
駆け落ちを計画していた十七歳の真琴だったが、彼はあっさりと金で彼女を捨てた。真琴の祖父で大企業の会長・城ノ内薫が手切れ金を渡したのだった。そんな祖父は三年後、二十代の妻・美保と再根。美保は会社経営に口を出し、会社が分裂の危機にー。それに気づかない祖父にあきれた真琴は戦略を考えることに。ある日パーティで美保のネックレスが何者かに狙われた!これは誰かの罠?元祖ユーモアミステリー!泥棒と刑事が夫婦!?
人生に七味あり、と辻占いの老婆が告げたのは、樫村が営々と勤めてきた銀行が吸収合併されたときだった。うらみ、つらみ、ねたみ、そねみ、いやみ、ひがみ、やっかみが振りかかり、これからが本当の人生だと。合併行での居場所を失い飲食フランチャイズ会社に転職した樫村だが、隠蔽された巨額負債が発覚、社は倒産の危機に陥った!絶望しつつも前を向き、巻き返しサラリーマン小説。
大学生のぼくは、失恋の痛手を癒す感傷旅行と決めこんだ旅の帰り、フェリーに乗り込んだ。そこで出会ったのは、ナップザックを持ち、ジーンズに粗編みのセーターを着て、少しそばかすがあるが、瞳の大きな彫りの深い異国的な顔立ちの美少女。彼女はエマノンと名乗り、SF好きなぼくに「私は地球に生命が発生してから現在までのことを総て記憶しているのよ」と、驚くべき話を始めた…。
日本プロ野球のチームに、女性選手が入団。東京レオパーズ所属の楠田栞は、左腕で下手投げの中継ぎ投手。客寄せパンダと陰で囁かれつつも、同僚で親友の早蕨麻由と励まし合いながら、野球に恋に奮闘している。ある日栞は、臨時コーチの雲野と出会う。雲野は言う。おまえの恵まれた体と素質を活かせ、一流になれ、と。女性投手では前例のない、ある目標のための特訓が始まった…。