出版社 : 徳間書店
僕達に、生まれてからの記憶はない。左眼のバーコード、ドッグタグ、十六歳。それだけが、僕のアイデンティティ。何をしても自由、モノに溢れたこの街では十七歳になると、みんな消えてしまう。一花の十七歳のバースデイまで、あと一週間。壁に囲まれた永遠に真夏のこの世界から、僕は彼女を連れて逃げられるのだろうか。“十七歳の儀式”を通じて描かれる、美しくも残酷な思春期の寓話。「教室」シリーズ、待望の完全版。
身なりはみすぼらしいが、宝蔵院流十文字槍術の手練れ、末法院不覚。荒れ寺に住みついた貧乏坊主に、かわら版屋の佐一が次々と事件を持ち込んでくる。口車に乗って事件に首を突っ込むうちに…。無精で意地汚いが、心根までは腐っていない、どこか憎めぬ快坊主が大活躍!痛快時代活劇。
天下の難曲「笑傲江湖」を奏でる者を探し求め、身の証を立てようとする令狐冲。ようやく探し当てた名手は、竹林に住む老婆だった。神秘的なその女性に胸中の悩みを明かすうち、次第に打ち解けていく令狐冲。しかし彼女には恐るべき秘密が…。
江戸町奉行所に“うぽっぽ同心”二人在り。南町に長尾勘兵衛、北町に占部誠一郎。顔も姿も、まこと瓜ふたつにて、違いといえば、眉間の黒子ほどのもの。その“北町うぽっぽ”、妊婦が大八車に轢かれた一件を預かることになったのだが…。
何かが記憶の底で閃いた。あの果てしなく深いプールの底で見たものは、こんな感じに似ていたっけ…。「それが、あなたを引きずり込んだものの正体?」結子は立ち上がって、白い木蓮を見つめながら言った。「その白い花のようなものは、向こうの世界に行きかけた僕を、そっとこちらに押し戻してくれたような気がするんですよ。あの花を見なかったら、僕は…」木蓮を木恋と書いた人…(『木蓮忌』より)。命こそ絶ゆとも絶えめ、定めなき世の常ならぬ仲の契りを。狂気と享楽、愛と幻想の世界へ。
失業中の元銀行員・大原次郎は、再就職活動中に金融絡みの難題について相談を受けた。これまでの経験と知識を生かし、怪事件を鮮やかに解決していく。出納記録だけの謎めいたノートの持ち主を推理するスリル満点の「誰のノート?」他全七篇。ミステリー連作集。
誤配された一通の封筒が若き総会屋・井田を事件に巻き込んだ。配達人は殺され、本来の受取人は謎の自殺を遂げていた。友人と共に封筒を開くと、凶弾に倒れた世界的ミュージシャンの歌が録音されたテープが。そして綾乃と名乗る女が現れ…。傑作ハードボイルド長篇。
総帥・岳不羣より、一年間の謹慎を命じられていた令狐冲は、ある日偶然、正・邪両派を結ぶ珠玉の曲譜「笑傲江湖」を手に入れる。また、華山派の隠士・風清揚の知遇を得て、天下最強の剣術「独孤九剣」を授けられ、一躍武林の名手となるが…。
一族を惨殺され、秘伝書「辟邪剣譜」を奪われた林平之は、復讐を誓い武林の名門・華山派に弟子入りする。一方、華山派の一番弟子・令狐冲は、謹慎中に幻の楽譜「笑傲江湖」を手に入れるが…。二つの秘譜の謎をめぐる魔界魔道の大伝奇ロマン。
捕らえ損ねた盗賊の嘉三郎捜しに励む文之介だが、お克の嫁入りで肩を落としている中間の勇七に気をとられてばかり。一方、なかなか踏み切れなかったお知佳との仲に、ついに丈右衛門が求婚を決意!?が、その合間にも影の手は伸びてきて…。書下し長篇時代活劇。
京には悪を懲らしめる、足引き寺といわれる寺がある-。宗徳が助けた娘は、無実の罪で打ち首になる兄を助けたいと訴えた。弱者の声なき叫びが刻まれた符牒をくわえ、豪が京の町を走る!ご存知、闇の仕事師、四人と一匹。好評シリーズ最新刊。
MBA取得の才色兼備銀行ウーマン。町工場相手に良心的融資を実践する銀行支店長。鉄道マニアのリタイア官僚。廃線が決定したローカル鉄道を救うため、三人が株式会社ドリームトレインを興した。奇想天外、破天荒な方法で田舎町に旋風を巻き起こす、ロマンチック・ビジネス・ストーリー。
一九六八年、日本人青年医師に、ルソーの魂が降臨した。彼は『エミール』の理想を実現すべく、理想の子供を育てることを決意し、孤児院を創設する。集められた子供たちは、“世界の救い主”を作り出すための、実験体であった…。天使が舞い、混沌が支配し、血と精液にまみれた溟い幻想が憩う、濃密な作品世界。第8回日本SF新人賞受賞作品。
相撲を観に来ていた大河内右京は、大関を投げ飛ばした大男・与茂平と出会った。彼は甲州の村で起きた神隠しから、救ってくれる人を探しにきたと言う。その頃、大目付の父政盛は、甲府勤番への栄転を命ぜられていた。父子の前に蠢く陰謀が…。
妻子を殺した下手人を誤って斬った罪で囚われた佐久間音次郎は、死罪のかわりに、極悪非道の輩を成敗する役目を言い渡される。標的は、極悪人・漁り火の権佐。追い詰める音次郎、逃げる権佐…。音次郎は権佐を仕留めることができるのか。
預かった刀を盗まれた研ぎ師が遊女と心中してから数日、先祖重代の家宝である太刀を盗まれた老侍が愛娘の身を売った。不幸を運んだ銘は、どちらも徳川家に仇なす妖刀村正。吉原をも巻き込んだ、将軍位継承を巡る御三家の権謀術数に緋之介は。
北町奉行所の隠密廻り同心、鏑木十左は、主君の子息を疵つけた中間の探索を命ぜられた。しかしその裏には…。御定法の網の目をかい潜って生きる非道の者どもを、相役の老同心、犬甘八兵衛と、岡っ引きの八十助とともに懲らしめる。