出版社 : 徳間書店
心理学者キャサリンは、昏睡状態にある分裂症の少年に対し、患者の心の中に入っていくという実験的な技術を使って治療を試みていた。一方、若い女性を狙った連続猟奇殺人を追うFBI捜査官ピーターはついに逮捕に至るが、犯人は意識不明の状態に陥っていた。最後の被害者の行方を知るため、わずかな望みをかけてキャサリンは殺人鬼の心の中に入っていく。しかし、そこは美しくも恐ろしい世界だった…。
依藤警部補は十一年前の死体なき殺人事件を追っていた。埼玉県大宮市郊外の五階建てのマンションで起こった事件である。五〇三号室の住人は当時二十三歳になる女性で大手モデル事務所に所属していた。毛足の長いベージュ色の絨毯が、おびただしい量の血で赤黒く染まっていたのだ。残された血液から被害者を断定したが、死体がないのである。その容疑者と目された男が台湾から戻って来たが…。生まれ変わりの謎に挑む超伝承ミステリー第二弾。
綿密な取材、緻密な構成、ユニークな人間観察、スリリングなストーリー展開、犯人を追いつめるプロファイリング…。警察小説の新たな地平を切り拓く問題作。ミステリー界に新風を吹き込む驚異の大型新人登場。
イスラエル建国の英雄を父にもつ、兄弟。多くのユダヤ人たちを救出した元ナチス将校を父にもつ娘。三人の男女が巻き込まれた、血塗られた惨劇。ニューヨーク、エルサレム、パリ、フィレンツェ、ウイーン、事件の真相を求めて世界中を駆け抜ける彼らの旅はまた、ホロコーストの時代に彼らの父たちが行った、ユダヤ人救出という英雄的行為の暗黒面を暴く旅でもあった。ジョン・ル・カレの深みと、グレアム・グリーンのスリラー性を兼ね備える、と絶賛された傑作ミステリー。
早春の軽井沢。広告代理店「日広」のCMプランナー・戸嶋大作は、恋人の霧島純花を乗せ、車を走らせていた。早々と仕事をすませ、濃密なデートを楽しもうという計画だ。大作は、別荘の玄関に男の顔が浮かび上がっている心霊写真を純花に見せた。TVの怪奇現象特集でこの写真を紹介したら、女の声で怪電話が入り、写真の男は行方不明中の大作の知人だという。問題の別荘に立ち寄った二人だが…。書下し。
温子と喬。出会いは路上サーキット。温子のポルシェで、パトカーの包囲を逃れた。喬の仕事は窓拭き。温子、建築会社の重役の娘。そしてパキスタン人ハッサンと、タイ人娼婦パティ。パティは客のヤクザを刺殺。温子は父の会社の裏金強奪を企んでいた。交錯しない筈の人生が交差した時、事件は複雑に絡み、よじれる。発端は美術商殺害事件か?事件を追う老刑事と『死神』という殺し屋…。
横浜の公園で進学塾帰りの女子高校生が刺殺された。残されたノートには「55」という謎の言葉が記されていた。ルポライター浦上伸介は事件の取材に動き、被害者が半月前、姫路で偶然ある事件を目撃していたことをつきとめる。浦上がダイイングメッセージ「55」の意味を解き明かしたとき、女子高校生殺しの犯人として意外な男が浮かび上がってきた。しかし容疑者には、姫路で事件が起きたとき秋田新幹線に乗車していたという鉄壁のアリバイがあった。姫路-秋田間に横たわる時間の壁を、浦上は破ることができるか。
物語は2069年。人類の8割はP2という殺人ウイルスに侵され、迫りくる死の恐怖に脅えていた。唯一の治療法は健常な血液との総交換のみ。健康体の人々は特別地区〈ゾーン〉の中に自らを隔離し、いまや黄金より貴重なものとなった血液を、厳重警備の銀行に保管していた。そうした防犯警備の天才的設計者デーナ・ダラスは、幼い一人娘キャロが重病を患ったのをきっかけに、治安上の危険分子と見なされる。命を狙われる彼はさまざまな能力をもつ仲間を集めて、復讐と自らの生存を賭けた大勝負に出る。それは、量子コンピュータが一元管理する超堅牢な月の血液銀行を強奪することだった。ダラスたち一行は月へ飛ぶが、彼らを待っていたのは、想像を絶する、神の計画にも似た罠だった-。
三条河原の刑場で、油が煮えたつ大釜に投ぜられようとしているのは、大盗賊の石川五右衛門だった。高貴な女人との恋を得ようと内裏に忍び込み、彼女たちを辱めたもののうまくゆかず、失意にあった彼に、秀吉の暗殺とひきかえの任官話が持ちかけられた…。彼の胸中を知ってか知らずか、四人の男女が、いまそれぞれの思いを秘めて見つめていた。表題作他、己の価値観で生きる人々の時代短篇集。
草莽の志士として幕末の動乱期を駆け抜け、維新後は、岩倉使節団に随行。征韓論争の帰結を左右するほどの重要な役割を担い、日本の近代国家としての礎を築くことになった巨魁、伊藤博文。その全生涯を、本人の手記、書簡はもとより、現存する資料や文書を駆使して余すところなく描いた。日本の近代黎明期の政治過程を浮き彫りにする、圧巻の歴史大作!その維新動乱期から、日清戦争前夜までを収録。