出版社 : 恒文社
良寛さまの晩年にあたたかな春が再来したような親愛の時をもたらした女性。師とも父とも慕い仕え、ともに学芸に遊び、清らかな情愛をはぐくんだ。下級藩士の家に生まれ、医者に嫁いだのち離別し、仏門に入った貞心尼の生涯と、良寛さまとの魂の交情を情感豊かに描く。超高齢化、介護の時代を迎える今日にこそ通ずる愛の形が、この物語の中に示されている。
時代が、体制が音を立てて崩れ、移り変わってゆこうとする幕末に生きた九州は柳川藩の一剣士・神影流大石進の一代記である。六尺余の長身に長刀を持たせ、必殺の突き技を使わせたら江戸の千葉周作道場、斎藤弥九郎道場を破るほどの腕を持ち、天保年間の剣術界に旋風を巻き起こし、剣技・剣道具の改良にとり組んだ異色の剣豪である。
劇作家V・ハヴェルが、幽囚の遍歴の旅から妻へ宛てて書きつづけた特異な記録文学。現チェコ共和国大統領ハヴェルは、かつて社会主義政権下で反体制運動家として逮捕され、四年余の囚人生活を余儀なくされた。執筆行為を禁じられた獄中で、不条理と闘いながら、愛妻オルガへの手紙に自己表現の機会を得た作家が赤裸につづる、人生論、芸術論、哲学論も兼ねた話題の書簡集。
右、中国街道。左を下れば京…老の坂わかれ路光秀、決断の時。森蘭丸は蘭ではない。世を乱す乱臣、侫者、乱れ丸が本性。明智一族の女に邪悪な情念の炎をもやす。そして、魔王信長の非道な仕打ちが、光秀の上に雨と降る-。決断の時、老の坂わかれ路。あなたは決断できるか。
1944年6月5日、史上最大の作戦が始まるその前日、ベルリンの戦火を逃れてクリスチーナはボヘミア・モラビア保護領にあるドイツ軍の基地へ戻ってきた。翌日、基地の司令官である父親は、娘の誕生日のためにバレエの先生を求める。ゲットーから連れてこられたアンナ・バロンタイはハンガリー王立バレエのプリマバレリーナだった。祖国の崩壊を感じながらも頑強にそれを受け受れようとしないクリスチーナと、親衛隊員ワイズミュラーとの絶望的な愛、副官の妻モニカのワイズミュラーに対する爛れた恋、そしてユダヤ娘アンナの性と死…。作者の体験を踏まえた異国の民への愛と死の鎮魂歌。
本書は、ある四合院を舞台に、そこに暮らすさまざまな人物がかかえる住宅、結婚、離婚、教育、差別、老後の問題等を織りまぜながら、庶民生活の喜怒哀楽と風俗を生き生きと描く。現代中国社会の深奥を知る、話題の長篇小説。