小説むすび | 出版社 : 慶應義塾大学出版会

出版社 : 慶應義塾大学出版会

エーコ『薔薇の名前』エーコ『薔薇の名前』

▼巨人(エーコ)の肩の上から望む「中世」の景色 『薔薇の名前』の緻密な物語は、ディテールを押さえてこそ楽しめる! 本書では、エーコの想像力の源泉にして「舞台装置」である中世ヨーロッパを、背景知識から丁寧に解説。 知の巨人が綿密に作り上げた「中世」の世界を、鳥の目と虫の目を通じて読み解いてみよう。 序  『薔薇の名前』の解読  『薔薇の名前』と西洋中世研究  エーコと「中世」との距離  美学から記号論へ  知の巨人エーコ、小説を書く 1 『薔薇の名前』の舞台  物語の枠組み  プロローグ──時代背景  宗教と政治──教権と俗権の対立  宗教と社会──異端と教会改革  民衆的異端の拡大──ヴァルド派とカタリ派  托鉢修道会の成立──ドミニコ会とフランチェスコ会  一四世紀における聖俗権力の対立構図  中世の世界へ──舞台としての修道院  修道院の建物の配置──ザンクト・ガレン修道院の平面図  修道院の生活──『聖ベネディクトゥスの戒律』  吹きすさぶ雹──アデルモの死  血の甕──ヴェナンツィオの死  迷宮の謎  アドソの冒険  茶色く変色した指と真黒な舌──ベレンガーリオの溺死  再び迷宮へ──〈アフリカノ果テ〉  渾天儀──セヴェリーノの惨殺と「奇妙な書物」の行方  異端審問官ベルナール・ギー  千匹もの蠍の毒──マラキーアの死  『キュプリアヌスの饗宴』  〈四ツノ第一ト第七デ〉  ホルヘとの最後の対決  世界燃焼──崩れ落ちる図書館  最後の紙片  言うまでもなく、中世から  2 『薔薇の名前』の構造  『薔薇の名前』の読み方  メルクのアドソ  バスカヴィルのウィリアム  『ヨハネの黙示録』とアドソの幻視  修道院の殺人と『ヨハネの黙示録』  ブルゴスのホルヘ  笑いと破壊、あるいは神聖なる秩序の行方  イマジネールの怪物たち  バベルの塔としてのサルヴァトーレ  村の娘とアドソの恋  迷宮としての図書館  始まりと終わり──タイトルとその意味 3 『薔薇の名前』の世界への鍵  写本と羊皮紙  巻物から冊子へ  写字室と写本の製作  読むことと眼鏡  聖なる読書から学者の読書へ  写本製作の新時代  紙の製造  異端の烙印  「キリストの清貧」をめぐって  『ヨハネの黙示録』と終末論  異端審問と刑罰  異端審問記録の作成・保管・利用  ある異端審問記録の数奇な運命  失われてしまった写本をめぐる物語  書物は何を伝えるか──世界を読み解くとは? 注 参考文献 あとがき 図版出典一覧

真実が揺らぐ時真実が揺らぐ時

▼真実を追い求めよ 1989年の革命、9.11の犠牲、イラク戦争、深まる中東の危機、 そして、アメリカ共和国の没落ーー。 時代の変化に抗い、飽くことなく真実を追究した知識人、 トニー・ジャットの魂の軌跡。 トニー・ジャットは中央ヨーロッパのユダヤ系一族にルーツを持つ、 イギリス出身の歴史家であった。 奨学金少年(スカラーシップ・ボーイ)として、戦後福祉国家の恩恵を受けて育ったジャットは、 ヨーロッパ的な社会民主主義を徹底して擁護し、 反知性主義や反エリート主義の風潮に抗った知識人であった。 そう、ジャットは確かに知識人であった。 彼は歴史家として、歴史を書くだけではなく、 歴史に学び、得られた洞察と知恵をもって、現代世界に語りかけた。 1989年のさまざまな革命、9.11の犠牲、イラク戦争、深まる中東の危機、 そして、アメリカ共和国の没落ーー。現実が変化し事態が展開していくにつれて、 ジャットは、時代の潮流に逆らって進み、彼の知力のすべてをもって、 思想という船の向かう先を、異なる方向に向けるための戦いを繰り広げた。 本書は、飽くことなく事実と真実を追究した知識人、トニー・ジャットの 魂の軌跡である。 序 誠実さをもって  ジェニファー・ホーマンズ<  I 一九八九年ーー私たちの時代 第1章 終わりなき下り坂 第2章 ヨーロッパ、大いなる幻想 第3章 重罪と軽罪 第4章 冷戦が機能した理由 第5章 自由と自由の国(フリードニア)  II イスラエル、ホロコースト、ユダヤ人 第6章 どこにも辿り着かない道 第7章 イスラエルーー代案 第8章 「イスラエル・ロビー」と陰謀論 第9章 戦後ヨーロッパにおける「悪の問題」 第10章 地に足の着いたフィクション 第11章 イスラエルは民族的神話を解体せねばならない 第12章 常套句(クリシェ)なきイスラエル 第13章 何をなすべきか?  III 9.11と新世界秩序 第14章 『ペスト』について 第15章 みずからの最大の敵 第16章 私たちの現在の生き方 第17章 海外の反アメリカ派 第18章 新世界秩序 第19章 国連は命運尽きたのか? 第20章 私たちはいったい何を学んできたのか?  IV 私たちの現在の生き方 第21章 鉄道の栄光 第22章 鉄道を取り戻せ! 第23章 革新という名の破壊の鉄球 第24章 社会民主主義の何が生き、何が死んだのか? 第25章 揺れる二つの世代 息子ダニエル・ジャットとの対話  V 人はいずれみな死ぬ 第26章 フランソワ・フュレ(一九二七ー九七年) 第27章 アモス・エロン(一九二六ー二〇〇九年) 第28章 レシェク・コワコフスキ(一九二七ー二〇〇九年) 原注 訳注 訳者あとがき 索引

西遊記西遊記

▼シリーズ「世界を読み解く一冊の本」(全10巻)、第三弾。 ▼映画やマンガにリメイクされつづける『西遊記』は子ども向けの本ではない? 長大な物語のあらすじを追いながら、中国の誇る〈神怪小説〉のなりたちと伝播を、妖怪たちの目線から語りつくす。 西天取経の旅とともに、飲めや歌えのどんちゃん騒ぎがはじまる! 序 『西遊記』は子供に読ませるな! 1 『西遊記』はどんな本か  『西遊記』三大トリビア  『西遊記』を飛ばし読みする  『西遊記』ができるまで  玄奘三蔵の大旅行  『大唐西域記』(だいとうさいいきき)  『大唐大慈恩寺三蔵法師伝』(だいとうだいじおんじさんぞうほうしで  ん)  西天取経を描いた図像資料  『大唐三蔵取経詩話』(だいとうさんぞうしゆきようしわ)--物語ら  れる三蔵法師  『取経詩話』はどんなおはなしか  『大唐三蔵取経詩話』のなかの『西遊記』  モンゴル時代の『西遊記』  明代『西遊記』の完成ーー世徳堂本と李卓吾(りたくご)本  全ページ挿し絵入りの短い『西遊記』  清代のすっきりした『西遊記』  朱八戒から猪八戒へ  きまぐれ皇帝のブタ肉抜きメニュー  改姓への力学  海を渡る三蔵たち  通俗小説の作者  『西遊記』はだれが書いたのか  こころもとない呉承恩作者説 2 妖怪たちのカーニヴァル  『西遊記』はどう読まれてきたか  『西遊記』はどうして進む?  三蔵の肉が食いたい!--妖怪たちの証言  食材としての三蔵法師  妖怪たちのレシピーー三蔵法師の料理法  食いしん坊はだれ?  食か色か  人の肉を食らうこと  腹がへっては……  宴会が大好き  饒舌と羅列のエネルギー  カギは八戒にあり?  食ったら出すーー世界は〈うんこ〉であふれている  巨人たちと『西遊記』  サンチョ・パンサと猪八戒  聖者を引きずりおろす  人は見た目がだいじ?  おそまつな顔をめぐる議論 3 ゆれる『西遊記』・ふくらむ『西遊記』  神怪小説の隆盛  神怪小説の筆を執る文人たち  『封神演義』(ほうしんえんぎ)の誕生  阿呆船(あほうぶね)、地獄へーー『西洋記』  『西遊記』の続書の世界  清末の『西遊記』続書  アニメやら絵本やら  社会主義的『西遊記』論  『孫悟空、三たび白骨精を打つ』を学習せよ  連環画(れんかんが)の『西遊記』  文化大革命と〈妖怪〉退治  童恩正『西遊新記』--〈文革〉から〈六四〉へ  八戒故郷の伝説  英語圏における『西遊記』  三蔵の表象  弟子たちも色いろ  ひとつの怪物論ーーサイのテーマ  ゾウを想え!  『西遊記』はどのようにして終わるか  八戒いじめのテーマ?  『西遊記』よ、どこへ行く? 注 参考文献 あとがき

グレアム・グリーン ある映画的人生グレアム・グリーン ある映画的人生

小説家と映画の終わらない「情事」-- 文学史と映画史を交差させながら、シネフィルで映画批評家だった小説家の創造の軌跡をよみがえらせる。 『スタンブール特急』『ブライトン・ロック』『第三の男』『情事の終わり』--映画批評家としても活躍した小説家グレアム・グリーン(1904-1991)の映画的側面に光をあて、ヒッチコック、チャップリン、ルネ・クレール、フリッツ・ラングなど、同時代の映画作家とのかかわりからグリーンを〈遅れてきたモダニスト〉として捉えなおす。 文学と映画の橋渡しをする、野心的試み。  プロローグ   <b>第一部 トーキーの夜明け</b> 第一章 ミドルブラウのアダプテーション空間 ーー『スタンブール特急』と『オリエント急行殺人事件』  1 一九三〇年代初頭のミドルブラウ文化  2 嫌々ながらのミドルブラウ作家  3 アダプテーションとアプロプリエーション  4 グリーンの動くホテル  5 鉄道、映画、モダニティ  6 ロシアより愛をこめて  7 列車の停止 第二章 風刺としての資本主義批判 ーー『ここは戦場だ』と『自由を我等に』  1 モダニズムの余白に  2 日常生活と出来事の弁証法  3 モダニズムにおける映画的技法  4 ヒッチコックの影、あるいは視覚的な無意識について  5 二つの初期トーキー映画  6 コメディの巨匠たち  7 機械の時代の風刺劇   <b>第二部 ジャンルの法則</b> 第三章 メロドラマ的想像力とは何か ーー『拳銃売ります』と『三十九夜』  1 「エンターテインメント」とは何か  2 イギリス時代のヒッチコック  3 サスペンス、あるいはメロドラマの表層的位相  4 メロドラマ的想像力  5 スクリューボール・コメディの影  6 二つのスクリューボール・コメディ  7 平等性のコメディ  8 ジャンルの法則、あるいは初夜について  9 メロドラマの深層 第四章 聖と俗の弁証法 ーー『ブライトン・ロック』と『望郷』  1 カトリック小説とは何か  2 宗教と道徳の弁証法  3 世俗の逆襲  4 生と死の哲学  5 サスペンスとしての恩寵  6 三つの映画  7 フランスの詩的なリアリズム   <b>第三部 映画の彼方へ</b> 第五章 プロパガンダへの抵抗 ーー『恐怖省』と『マン・ハント』  1 グリーンの「神経戦」  2 ラングとグリーン、あるいは二つの『恐怖省』  3 反ナチス映画  4 「敵」の表象  5 だまし絵のヴィジョン 第六章 男たちの絆 ーー『第三の男』と『ヴァージニアン』  1 偽装するモダニズム  2 二つの『第三の男』  3 ダブルの増殖  4 ホモソーシャルとは何か  5 フロイトのパラノイア理論  6 西部劇への偏愛  7 西部劇としての『第三の男』  8 ジャンルの法則、あるいは救済の原理について  9 暴力の原風景 エピローグ あとがき グレアム・グリーン年譜 初出一覧 参考文献 索引

エリアーデ=クリアーヌ往復書簡エリアーデ=クリアーヌ往復書簡

▼20世紀に新生した〈宗教学〉を代表する2人が1972年から86年にわたり交わした111通の往復書簡 。 ▼ルーマニア人亡命者、宗教学者、小説家、師弟、そして友として、親しみ溢れる筆致で交わした魂の対話。 宗教学の世界的泰斗ミルチャ・エリアーデと異端の弟子ヨアン・クリアーヌが、1972年から1986年にわたり、母国語ルーマニア語で交わした111通の往復書簡。 エリアーデとクリアーヌは、共に祖国ルーマニアから亡命し、世界を舞台に活躍した宗教学者であり小説家であった。この往復書簡は、書簡を通じた2人の運命的な出会いにはじまり、次第に師弟関係が築かれ、クリアーヌがエリアーデの助言と援助を得て、大成していく軌跡、さらには師を超えゆこうとする師弟間の物語が現われている。 この書簡集はまた、知られざるエリアーデのルーマニア人亡命者としてのアイデンティティと、宗教学者、小説家、そして人として、弟子であり友であったクリアーヌから受けた多大なる影響をも物語っている。 20世紀に新生し、興隆した宗教学は、現代に何を問いうるのか --。2人の異能なる宗教学者の対話から、新たな宗教学の可能性を問う一冊。 序文(マテイ・カリネスク) 編者覚書 往復書簡 1972年8月4日ー1986年1月14日  訳者あとがき  エリアーデ = クリアーヌ略年譜  エリアーデ = クリアーヌ著作一覧  人名索引

魔法使いの国の掟魔法使いの国の掟

サウダーヂ=郷愁、とは何か。 ▼20世紀ブラジルのリオデジャネイロで活動した4人の詩人、マヌエル・バンディラ、カルロス・ドゥルモン・ヂ・アンドラーヂ、ヴィニシウス・ヂ・モライス、セシリア・メイレーリスの詩作品を哲学や小説を含む西洋近代の思考の変遷に照らしつつ明らかにする。 ▼西欧文学との影響関係の分析を通して、リオデジャネイロという都市に流れる〈時〉、ブラジル、ポルトガル、リオの詩人や人々にとって神聖な言葉「サウダーヂ」(郷愁)の意味を読み解く。 序 リオデジャネイロに降る雪   第1章 魔法使いの国の掟 マヌエル・バンデイラと幼年時代     1 至福の時は忘却のなかからよみがえる 2 詩人たちは意のままに幼年時代を見出そうとする 3 詩は魔法を言葉によって失い言葉によって取り戻す 4 もっとも偉大な魔法使いはみずからをも欺く魔法使いである 楽園の日常   第2章 儚いものと永遠のもの セシーリア・メイレーリスと過ぎ去る女   1 絶えず逃げ去ろうとするものが永遠と出会う 2 詩は一瞬を永遠のものにすることができる 3 儚く失われるものが美しいものとして現れる 4 過ぎ去ることが永遠に留まることでもある 美しい季節の終わりの花嫁   第3章 前夜祭の予感 ヴィニシウスとカーニヴァル   1 祭りのなかで悲しみとよろこびはひとつである 2 祭りの直中にあるときそれについて語ることはできない 3 祭りの日々とは祭りに先立つ日々である 4 祭りを待ち望むよろこびが悲しみのなかで語る 愛はそれが続いているあいだは永遠である   第4章 言葉と幽霊 マヌエル・バンデイラと憑依   1 あらゆる作家はみずからの幽霊作家である 2 死を想う者は生きながらすでに幽霊として存在する 3 言葉を知らない者はまた死をも知らない 4 生とは未来の亡霊としてみずからに憑依することである カーニヴァルの遠い響き   第5章 見出されぬ時 ドゥルモンと無意志的記憶   1 おまえひとりは生き存えてこの物語を語り伝えよ 2 証言することができない者が真の証人である 3 すべてが廃墟となったあとに記憶という建物が残る 4 途方もない惨劇の証言となるのは証言の不在である コパカバーナ海岸の緩やかな弧   第6章 人魚姫の叶わぬ恋 セシーリア・メイレーリスと沈黙   1 声を失った人魚姫は海の泡となって消える 2 語り伝えられないことがもっとも重い悲劇である 3 純粋な悲劇ほど証人を持つ可能性は小さくなる 4 言われた言葉や開かれた言葉は空気のうえの空気でしかない 最初で最後のまなざしで落ちる恋   結 失われた幸福な結末を求めて     註   謝辞

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