出版社 : 文芸社
一乗谷残照一乗谷残照
福井市の南西、南北に細長い谷に四百年前の遺跡が眠っていた。戦国大名・朝倉氏がここ越前一乗谷に五代百年に亘って文化と芸術の華を咲かせた城下町跡である。天正元年(一五七三)朝倉氏は織田信長に滅ぼされ、一乗谷は灰燼に帰す。しかし朝倉義景は、四年に及ぶ戦いの中で信長を苦しめた男だった。本書は敗者の側から歴史を描いている。これまで朝倉義景は、学問芸術にうつつを抜かした凡愚な武将としてしか描かれてこなかったが、平和な時代ならば名君と評価されたはずである。その義景が戦国という時代に何を思い、何を望んでいたのか。そこに勝者の側からだけではわからない人間の哀歓を描くとともに、遺跡とともに埋もれた歴史の実相を探る。
赤い隻眼赤い隻眼
三つの物語からなる新感覚ミステリー。死者の世界を映す赤い瞳が真実を照らす。死者の魂を見ることのできる赤い隻眼をもって生まれてきた、斉藤八雲。何故自分の瞳は赤いのか?何故自分には死者の魂がみえるのか?自らの謎を抱えたまま、八雲は次々と起こる怪事件の謎に迫る。
わが愛はやまずわが愛はやまず
右の乳房に癌を発見された47歳の看護婦中条志津は、かつて犯した罪の報いとしてこれを甘受する。遠からぬ死を予感した彼女は、ある決意を秘め、罪の共犯者である外科医佐倉修平に手術を求めて秋田の鄙びた鉱山町に彼を訪ねていく…。
五度目のさよならを言う前に五度目のさよならを言う前に
古い考えと笑いたければ、笑え!九州に生まれ、上京し北海道に移り住むまでの、40年の軌跡を振り返りながら、30年前の情熱にあふれた若き日、未熟さから別れてしまった恋人を思いやる男の純情をつづる。時の流れの中で、失われつつある九州男児の思いと生き様は、今を生きる男たちへの熱い青春のメッセージ。