出版社 : 文藝春秋
強大な国家権力とジャーナリズムの全面戦争に沸騰する世論。その時「起訴状」という名の爆弾が炸裂した。「弓成亮太、逮捕する!」。ペンを折られ、苦悩する弓成。スキャンダル記事に心を乱す妻・由里子。弁護団の真摯な励ましが家族を支える。そしてついに、運命の初公判が訪れたー。毎日出版文化賞特別賞受賞の傑作全4巻。
古いひな人形が、記憶の中の春とともに、母の面影を思い起こさせる「めぐりびな」、子どもが生まれたばかりの共働きの若い夫婦が直面した葛藤と、その後の日々を鮮やかに描き出した「ツバメ記念日」など、美しい四季と移りゆくひとの心をテーマにした短篇集「季節風」シリーズの春物語。旅立ちとめぐり合いの12篇を収録。
金の便器にまたがり宇宙遊覧を夢みる現代中国の大富豪・李光頭は、かつて公衆便所で覗いた美女の尻の話でタダ飯にありつく田舎町の「尻ガキ」だった。彼には血のつながらぬ偉丈夫な父と、宋鋼という兄がいたが、文化大革命の濁流はささやかな家族の幸せも押し流していく。中国で刊行されるや大ベストセラーとなった傑作長篇小説。
廃品回収業から身を起こした李光頭はのし上がり、女好きが高じてついには「処女膜美人コンテスト」を開催する。一方公営工場を失職した兄・宋鋼は、豊胸クリーム行商人として辺境をさすらう。大絶賛された文革篇に続く開放経済篇は、金と欲望にまみれた現代中国を下品すぎる描写で活写し、顰蹙と議論を巻き起こした大問題作。
幕府海軍の設立から、その終焉まで立ち会った男、矢田堀景蔵。幕府学問所で秀才の名をほしいままにした景蔵は、阿片戦争の波及を恐れた幕府の命により、長崎の海軍伝習所に赴任した。そこでは勝海舟、榎本武揚等、その後の幕府の浮沈を共にする仲間と出会う。幕府海軍総裁まで昇りつめた男の生涯。
「どうしても夫と別れたい」。離婚を望み、決死の覚悟で駆け込み寺にやってきた女たち。けれどもその理由はどれもこれも一筋縄ではいかなくて…。夫婦の絆、名もなき人々の強さ、生きる喜びを謳いあげた遺作。
浅草の古びたアパートで発見された女の絞殺死体。被害者は大手旅行代理店のOLだが、夜になると街で男を誘っていたという。この事件に興味を抱いたノンフィクション作家が彼女の生い立ちを取材すると、その周辺に奇妙な事件が相次いで起きていたことが分かる。彼女を殺したのは誰か?その動機は?「騙りの魔術師」折原一が贈る究極のミステリー。
女優、OL、キャバクラ嬢、資産家令嬢ー年齢も職業も異なる四人が耽溺する、美容整形の世界。次第に彼女たちは「触れてはいけない何か」に近づいてゆき…。女性の欲望を極限まで描く、美と恐怖の異色作。
小児科医の押村悟郎のもとに、刑事から電話が入った。18年間、音信不通だった姉・千賀子が銃弾を受け、意識不明で病院に搬送されたというのだ。しかもそれは、千賀子がかつて殺人を犯したことのある男との婚姻届を出した翌日の出来事だった。姉は一体何をしていたのかー。悟郎は千賀子の足跡を追い始める。
「一生に一度でいい、恋っての、してみたかったの」-平凡な主婦が飛び込んだNYへの恋の道行を描いた表題作、嫁き遅れた女の心の揺れを浮かび上がらせた「幸福」「胡桃の部屋」、異母兄弟の交流を綴った「下駄」、絶筆となった「春が来た」の五篇を収録。温かい眼差しで人間の哀歓を紡いだ短篇集。
出産のために離れて暮らす母親のことを想う5歳の女の子の素敵なクリスマスを描いた『サンタ・エクスプレス』ほか、「ひとの“想い”を信じていなければ、小説は書けない気がする」という著者が、普通の人々の小さくて大きな世界を季節ごとに描き出す「季節風」シリーズの「冬」物語。寒い季節を暖かくしてくれる12篇を収録。
“ウォッチメイカー”と名乗る殺人者あらわる。手口は残忍で、いずれの現場にもアンティークの時計が残されていた。やがて犯人が同じ時計を10個買っていることが判明、被害者候補はあと8人いるー尋問の天才ダンスとともに、ライムはウォッチメイカー阻止に奔走する。2007年度のミステリ各賞を総なめにしたシリーズ第7弾。
サックスは別の事件を抱えていた。公認会計士が自殺に擬装して殺された事件には、NY市警の腐敗警官が関わっているらしい。捜査を続けるサックスの身に危険が迫る。二つの事件はどう交差しているのか!?どんでん返しに次ぐどんでん返し。あまりに緻密な犯罪計画で、読者を驚愕の淵に叩き込んだ傑作ミステリ。2007年度「このミステリーがすごい!」第1位、「週刊文春ミステリーベスト10」第1位、「日本冒険小説協会大賞・海外部門」大賞。
舞台は、アパートの一室。別々の道を歩むことが決まった男女が最後の夜を徹し語り合う。初夏の風、木々の匂い、大きな柱時計、そしてあの男の後ろ姿ー共有した過去の風景に少しずつ違和感が混じり始める。濃密な心理戦の果て、朝の光とともに訪れる真実とは。不思議な胸騒ぎと解放感が満ちる傑作長編。
京で屈指の茶道具屋の娘・ゆずと奉公人の真之介は、駆け落ち同然で夫婦となり、道具屋「とびきり屋」を三条木屋町に開く。そこでは近藤や芹沢、龍馬がお客にやって来ては、騒動が起こり…。混乱する幕末の京を舞台に、“見立て”と“度胸”で難題を乗り切ってゆく夫婦を描く「はんなり」系痛快時代小説。
ヒモのヨシキは、ヤクザの恋人に手を出して半殺しにあうところを、妖艶な女性に助られる。同じころ、池袋では獣牙の跡が残る、完全に失血した惨殺体が発見された。その手口は、3年前の暴力団組長連続殺人と酷似していた。事件に関わったとされる女の正体とは?「姫川」シリーズの原点ともなる伝奇小説が復刊。第2回ムー伝奇ノベルス大賞優秀賞受賞作。