出版社 : 文藝春秋
どこにでもありそうな地方都市の、よくある退屈なオフィスで、上司に怒鳴られ後輩から軽んじられる三十歳手前のOL。疲れ果てたある日、ふと立ち寄った不思議な理容店。女主人からマッサージを受けているうちに睡魔に襲われる。目覚めてみると鏡の中の自分は別人になっていた!現代の痛快な変身譚六話。
下級役人の甚八郎は、三代将軍足利義満の命により、遣明使の右筆という大役を命じられる。一行には一山当てようとする商人、渡明で箔をつけようとする僧も加わって、甚八郎は右往左往。しかしその裏では、日本国の根幹を揺るがす陰謀が進行していたー。明までの航海を、史実に基づき描いた壮大な歴史小説。
チンギス・カンの長子ジュチの子でありながら、父の出生疑惑を理由に後継者候補からはずされたバトゥは、暗闘を繰りひろげる一族に背を向けひたすら帝国の拡大に力を注ぐ。モンゴル高原から遠く地中海まで遠征し勝ち続けた名将にして、「賢明なる王(サイン・カン)」と呼ばれた男の鮮烈な生涯。
実行犯は、ジジババと幼稚園児?隣接する有料老人ホーム「ひまわり苑」と「ひまわり幼稚園」。老人とガキどもの不思議な交流、やがて起こるカゲキな「事件」とは?荻原浩渾身の熱血幼老小説!-。
江戸から明治へ。時代の節目に、男が変わる、女が変わる…。「牡丹燈籠」や「真景累ヶ淵」などの怪談噺をはじめ、「文七元結」「塩原多助」など数々の創作落語を残し、近代落語の祖と言われる落語界のスーパースター、三遊亭円朝。江戸から明治へ、幕府の崩壊によりすべての価値観が揺らいだ歴史の転換期に生きた大名人と、彼を愛した五人の女たちの物語。
「光秀が生きていたぞよ」。山崎の合戦で明智光秀の首を取り、甲賀から離れた小五郎に、かつて命を救った仲間の助七がささやく。驚愕と執念に翻弄される小五郎。だがその背後には幾重もの陰謀があったー。戦国から江戸へ、世情とともに移り変わる忍者たちの葛藤と悲哀を、乾いた筆致で描き出す七つの短編。
列島を縦断しながら殺人や詐欺を重ね、高度成長に沸く日本を震撼させた稀代の知能犯・榎津巌。捜査陣を翻弄した78日間の逃避行は10歳の少女が正体を見破り終結、逮捕された榎津は死刑にー。綿密な取材と斬新な切り口で直木賞を受賞したノンフィクション・ノベルの金字塔を三十数年ぶりに全面改訂した決定版。
漱石の代表作『坊っちゃん』の登場人物、うらなり。個性豊かな教師たちのなかにあって、マドンナへの思いを残しながら、新任地へ赴いた彼から『坊っちゃん』の世界をみるとどうなるか。さらに、その後の彼の人生とは。明治、大正、昭和を生きたひとりの知識人の肖像を、卓抜な着想と滋味あふれる文章で描き出す。第54回菊池寛賞受賞!小林信彦が描く『坊っちゃん』の後日談。
戦いは男たちのするもので、女たちは家を守ると信じられていた昔々、女だてらに甲胄を着込み、兵たちを叱咤し、敵と斬り結んだ姫君たちがいた。木曾義仲の愛妾・巴御前を始め、瀬戸内の海賊を率いた大三島のつる姫や、石田三成に攻められながらも武州忍城で見事な籠城戦を指揮した甲斐姫の活躍など、全六篇を収録。
最近の私の好みは、「生々しい小説」に尽きる。良くも悪くも、作者の生理が感じられるものー。衝撃の書を世に問い続ける作家が、ひとりの読者に立ち返って選んだベスト・オブ・ベスト。島尾敏雄・ミホ、菊池寛、太宰治、坂口安吾、林芙美子、谷崎潤一郎ら、ともに生きながら哀しく行き違わざるを得ない生の現実を描いた11篇を収める。
恋する男に身請けされることが決まった吉原の女が、真実を知って選んだ道とは…。表題作ほか、ワンマン社長とガード下の靴磨きの老人の生き様を描いた傑作「シューシャインボーイ」など、市井に生きる人々の優しさ、矜持を描いた珠玉の短篇集。著者自身が創作秘話を語った貴重な「自作解説」も収録。
九州へと向かうフェリーで、光彦と出会った元刑事の後口が、静岡の御前崎の海岸で死体となって発見された。彼は、三十年前に、長崎・軍艦島で起きた連続変死事件を追っていた。光彦は、後口の足跡を辿るうち、娘が暮らす長野の松代で出会った人物に興味を抱いていたことを知った。浅見光彦、百番目の事件は、手ごわすぎる。
光彦は、長崎・軍艦島の生まれである教師の篠原雅子とともに、御前崎で元刑事の後口が殺された事件を探るうち、島で不審死した神主が、「大切なもの」を娘に託したことを知る。三十年前の夜、島では何が起こったのか…。そして、誰もが口をつぐむ過去の真相とは?光彦の前に、最大の「巨悪」が姿を現す。自作解説付き。
現代社会とは無縁と思われる習わしや言い伝え。その禁忌を破ったとき、平穏だったはずの世界が、恐ろしいものへと豹変するー。人の死にまつわる不思議な力を持つ家系に生れた女性の哀しみを描いた、著者のデビュー作「雨女」、その続篇となる表題作など、哀しみと恐怖に溢れる八篇を収録した短篇集。