出版社 : 文藝春秋
花嫁修業には目もくれなかった花世が源太郎と祝言をあげることに。源太郎も法律を学ぶ身で十分な収入がなく、不安を抱えていたー。表題作など全六篇。若い二人の門出を描く「明治のかわせみ」第三弾。
死せる禿鷹、生きるキャリアを走らす!史上最悪の悪徳警官が、死を賭して守った署内裏帳簿のコピー。それが、警察庁幹部によって葬り去られようとしていた。南米マフィアの復活と共に、血腥い暗闘の火蓋が切って落とされる。
作り事は一切無用。ほんとうにあった怖い話だけを披露し合うという集まりに顔を出すようになった清兵衛は、いつしかその妖しい魅力に取り憑かれてゆく。やがて各々の身辺に奇妙な出来事が起こりはじめ、ひとり、またひとりと…。老境を迎えた男女の迷いと、人知の及ばぬ事件が絡み合う、哀愁味あふれる怪奇譚。
おとっつあんは、みんなのために命を懸けて火事を退治しに行くんだ…。おのれの命とひきかえに町を守った深川・南組三之組の火消し頭徳太郎。幼いときからその背中を見て育った息子の銑太郎は、やがて一人前の火消しへと成長していく。炎の恐怖と闘い、火消しに体を張る男たちの誇り高い姿を描いた、山本一力の真骨頂。
職を追われた悪徳刑事の夢。迷宮入りした幼女神隠し事件の解明に執念を燃やす老刑事。仕事に追われ息子を失った刑事の悔恨。三代続く名門警察一家に隠された闇。様々な事情を抱え、職を辞した刑事たちに訪れた“人生最後の事件”とは?刑事という特殊な職業の生態を迫真の筆致で描く警察小説短編集。
芦村節子は旅で訪れた奈良・唐招提寺の芳名帳に、外交官だった叔父・野上顕一郎の筆跡を見た。大戦末期に某中立国で亡くなった野上は独特な筆跡の持ち主で、記された名前こそ違うものの、よもや…?という思いが節子の胸をよぎる。節子の身内は誰も取り合わないが、野上の娘の恋人・添田彰一は、ある疑念をいだくのだった。
新聞記者・添田彰一は、恋人・野上久美子の父の生存を確かめるため、ひそかに調査を始める。口を閉ざす当時の関係者、京都のホテルでの発砲騒ぎ…次々と起きる不可解な事件にはいったい何が隠されているのか?停戦工作の裏事情と一外交官の肉親への絶ちがたい情愛が交錯する国際謀略ミステリーの傑作。
悲しみに暮れる彼女のもとに突如かかってきた電話の主は…愛する者への思いを静かに綴る「ニューヨーク・タイムズを特別割引価格で」、ある医師を訪れた患者が語る鬼気迫る怪異譚「N」、猫を殺せと依頼された殺し屋を襲う恐怖の物語「魔性の猫」ほか全6篇を収録した最新短篇集。
アイドル好きのオタク大学生・乙島侑平は研究者の従兄から、美少女メイドロボット・キララのモニターを頼まれる。普段はどじっ娘メイドのキララだが、スイッチが入れば女王様キャラに大変身し頭脳も超明晰に。そんなキララが侑平の周辺で起る難事件をズバリ解決する。史上初の美少女メイドミステリー。
「初めまして、お父さん」。元ヤンでホストの沖田大和の生活が、しっかり者の小学生・進の爆弾宣言で一変!突然現れた息子と暮らすことになった大和は宅配便ドライバーに転身するが、荷物の世界も親子の世界も謎とトラブルの連続で…!?ぎこちない父子のひと夏の交流を、爽やかに描きだす。文庫版あとがき&掌編を収録。
「赤鬼」の綽名を持つ、南町奉行根岸肥前守のもとに、商いの評判が良かったもろこし屋の主人、幸右衛門が殺されたとの知らせが寄せられる。現場近くでは、「かのち」という書き付けを残して失踪した大店の若旦那が目撃されるが…。奇談集「耳袋」を記した根岸肥前守が、江戸の怪事件を解き明かす好評シリーズ、新展開の第一巻。
近代日本美術の父・岡倉天心の直筆画が発見された!?「筆を持たない芸術家」と呼ばれた天心の実作はきわめてまれだが、神永はズバリ、破格の値をつけた。果たして本当に天心の作なのか。
長年の旅と探求がこの作家にもたらした、深沈たる一滴、また一滴ー。酒、食、阿片、釣魚などをテーマに、その豊饒から悲惨までを、精緻玲瓏の文体で描きつくした名短篇小説集は、作家の没後20年を超えて、なお輝きを失わない。川端康成文学賞を受賞した「玉、砕ける」他、全六篇を収める。
海坂藩士・葛西馨之介は周囲が向ける愍笑の眼をある時期から感じていた。18年前の父の横死と関係があるらしい。久しぶりに同門の貝沼金吾に誘われ屋敷へ行くと、待っていた藩重役から、中老暗殺を引き受けろと言われるー武士の非情な掟の世界を、端正な文体と緻密な構成で描いた直木賞受賞作と他4篇。
博雅のもとを夜な夜な訪れる異国の美しい女性。語れども声は聞こえず、哀しい眼で見つめ、翌朝には、残り香とともに消えるその女が気になった博雅は、晴明に相談する。晴明は、帝より博雅が賜ったという、吉備真備が唐より持ち帰った音のならぬ琵琶に興味を惹かれる。果たして女性の正体は?「月琴姫」など全九篇を収録。
A新聞の「読者のニュース写真年間最高賞」に輝いたのは、東名高速での凄惨な事故の報道写真だった。“十万分の一”と評されたそのシャッターチャンスは果たして本当に偶然なのか?すぐれた作品を残したいというアマチュア・カメラマンのエゴイズムを軸に「作られた報道写真」問題を活写した社会派ミステリー。
新作の撮影中に謎の失踪を遂げた鬼才の映画監督・大柳登志蔵。すでにラッシュは完成、予告編も流れているが、実はこの時点で作品の結末を知るのは監督のみ。残されたスタッフは、撮影済みのシーンからスクリーン上の「犯人」を推理しようとするが…。『探偵映画』というタイトルの映画をめぐる本格推理小説。
原子力潜水艦内で乗組員多数が謎の攻撃により変死、アメリカ海軍は海底基地に調査員を派遣する。一方、新種の鯨を追う学者・須藤もパイロットのホノカとともに同海域に潜航開始した。軍、企業、テロ組織の思惑が絡み合う深海教千メートルの世界にひそむ脅威とは!?圧倒的リアリティの傑作海洋冒険小説。