小説むすび | 出版社 : 文藝春秋

出版社 : 文藝春秋

紙の梟 ハーシュソサエティ紙の梟 ハーシュソサエティ

出版社

文藝春秋

発売日

2022年7月13日 発売

ここは、人を一人殺したら死刑になる世界ーー。 私たちは厳しい社会(harsh society)に生きているのではないか? そんな思いに駆られたことはないだろうか。一度道を踏み外したら、二度と普通の生活を送ることができないのではないかという緊張感。過剰なまでの「正しさ」を要求される社会。 人間の無意識を抑圧し、心の自由を奪う社会のいびつさを拡大し、白日の下にさらすのがこの小説である。 恐ろしくて歪んだ世界に五つの物語が私たちを導く。 被害者のデザイナーは目と指と舌を失っていた。彼はなぜこんな酷い目に遭ったのか?--「見ざる、書かざる、言わざる」 孤絶した山間の別荘で起こった殺人。しかし、論理的に考えると犯人はこの中にいないことになるーー「籠の中の鳥たち」 頻発するいじめ。だが、ある日いじめの首謀者の中学生が殺害される。驚くべき犯人の動機は?--「レミングの群れ」 俺はあいつを許さない。姉を殺した犯人は死をもって裁かれるべきだからだーー「猫は忘れない」 ある日恋人が殺害されたことを知る。しかし、その恋人は存在しない人間だったーー「紙の梟」

ブータン、世界でいちばん幸せな女の子ブータン、世界でいちばん幸せな女の子

出版社

文藝春秋

発売日

2022年6月29日 発売

忘れられていた「ブータン」は、中学の同級生だった。アラフォーになった彼女は、出会った人たちに幸せを運んでくれている……。 せつなさに胸が熱くなる、女ともだちの物語。 いつの頃からか、私は生涯の友というものを望まなくなった。女はいっときの悩みを共有できるともだちがいればじゅうぶんなのだ……。 四十を過ぎて、そんなことを思っていた頃、伯父の介護に通っていた病院の玄関を出ようとしたら、「覚えてない? この顔」と、嬉しそうに駆け寄ってきた女性がいた。 彼女の名前は、丹野朋子さん。中学の同級生で、昔は存在感ゼロだった。ブタみたいに太っていたので、「ブータン」と呼ばれていた。 アラフォーになって再会した彼女は、ブータンという国に暮らしている人びとのように、世界一幸せ度の高い人間になるというのが、人生の目標になっていた。そして彼女は、夢を実現しているらしい。 ブータンに強引に連れられて、私は生まれて初めてカラオケボックスに行った。深呼吸するように、自分の思いを吐き出していた……。(「ブータンの歌」より) 不思議な存在感のある「ブータン」をめぐって、さまざまな女性たちの人生が交錯する。懐かしい同窓会のような物語。

N/AN/A

著者

年森瑛

出版社

文藝春秋

発売日

2022年6月22日 発売

選考会で異例の満場一致!  第127回文學界新人賞受賞作 松井まどか、高校2年生。 うみちゃんと付き合って3か月。 体重計の目盛りはしばらく、40を超えていない。 ーー「かけがえのない他人」はまだ、見つからない。 優しさと気遣いの定型句に苛立ち、 肉体から言葉を絞り出そうともがく魂を描く、圧巻のデビュー作。 ★★★ 文學界新人賞・全選考委員激賞!! ここには誰のおすみつきももらえない、肉体から絞り出した言葉の生々しい手触りがある。--青山七恵 安易なマイノリティ表現への違和感の表明であり、同時にそのような表明の安易さへの批判でもあるという点で、まさにいま求められる文学なのではないか。--東浩紀 本作には紛うことなき現代を生きる人間が、そして現代がぶち当たっている壁が克明に描かれている。--金原ひとみ 世界が傷つくとみなす事項に対する、最初からの「傷ついてなさ」が、ぐっとくるのだ。--長嶋有 満場一致の受賞となり、今後の活躍を楽しみにしている。--中村文則 主人公にとって、また小説にとって、とても重要なもの、安易に言語化できないものたちが、物語の力によって、この小説の中に確かに存在している。--村田沙耶香

雨滴は続く雨滴は続く

出版社

文藝春秋

発売日

2022年5月25日 発売

二〇〇四年の暮れ、北町貫多は、甚だ得意であった。同人雑誌「煉炭」に発表した小説「けがれなき酒のへど」が〈同人雑誌優秀作〉に選出され、純文学雑誌「文豪界」に転載されたのだ。これは誰から認められることもなかった三十七年の貫多の人生において味わったことのない昂揚だった。次いで、購談社の「群青」誌の蓮田という編集者から、貫多は三十枚の小説を依頼される。貫多にとって純文学雑誌に小説を発表することは、二十九歳のときから私淑してきた不遇の私小説作家・藤澤清造の“歿後弟子”たる資格を得るために必要なことであった。しかし、年が明けても小説に手を付ける気にはなれなかった。貫多に沸き起こった、恋人を得たいとの欲求が、それどころではない気持ちにさせるのだ。貫多は派遣型風俗で出会った〈おゆう〉こと川本那緒子の連絡先を首尾よく入手し、デートにこぎつける。 有頂天の貫多は子持ちの川本と所帯を持つ妄想をする。しかし、一月二十九日、恒例の「清造忌」を挙行すべく能登を訪れた貫多は、取材に来た若い新聞記者・葛山久子の、余りにも好みの容姿に一目ぼれをしてしまう。東京に戻るや否や、小説家志望の葛山に貫多は自作掲載誌を送るが、その返信はそっけないものだった。手の届く川本と脈のなさそうな葛山、両者への恋情を行きつ戻りつしながらも、貫多は「群青」に短篇、匿名コラム、書評を発表していく。そして、「群青」九月号には渾身の中篇「どうで死ぬ身の一踊り」が掲載されたが、その反響は全く感じられなかった。同じころ、葛山からは返信が途絶え、川本にはメールが通じなくなる。順風満帆たる新進作家・貫多の前途に俄かに暗雲が立ち込めるのだった。 完成直前で未完となった、著者畢生の長篇1000枚。

孤剣の涯て孤剣の涯て

出版社

文藝春秋

発売日

2022年5月10日 発売

徳川家康が天下を統一し、世の中からは急速に戦国の気風が消えていった。かつて戦場で名を馳せた宮本武蔵の剣も、時代遅れの遺物になり果てていた。弟子たちは武蔵を見捨て、道場の存続は危ぶまれている。父親の病いも手伝って、借金まみれの生活をするまでに落ちぶれていた。 武蔵が自分の剣も終わりと観念し、さる大名に形ばかりの免許皆伝の免状を出し、その見返りとして借金の肩代わりをしてもらう話がまとまりかけたがーー そのとき武蔵の元に「五霊鬼の呪い」の探索の依頼が舞い込む。この呪いをかけられた者は二年以内に死ぬと言われているが、大御所・徳川家康が「呪い」の標的になったというのだ。家康に呪いをかけた者(=呪詛者)を生け捕りにするのが武蔵の役割だという。 世を捨てると決めた武蔵は、最初依頼を固辞する。しかし、武蔵の唯一のそして最大の理解者である弟子・佐野久遠が呪詛者に殺されたかもしれないことがわかり、事態は一変。 呪詛者を探しだすことは、弟子の仇を討つことに繋がる。武蔵は自身の中に再び生への衝動が湧き上がるの感じ、呪詛者探索へと旅立つ。

このエントリーをはてなブックマークに追加
TOP