一年余の闘病ののち妻は死んだ。残された二人の子を長良川に近い故郷にあずけ、一人で東京生活を送る男の胸によみがえる捕虜生活の屈辱の記憶。直木賞受賞作。(小木曾新)
戦争を知らぬ子供たちは戦争の日々に青春を過した少女の心の渇きに深い共感を抱き、戦争反対の願いを強めるだろう。女学生のノートのなかに青春をいたむ芥川賞受賞作。(宮原昭夫)
天気予報を正確にするには、富士山頂に観測所が必要だ、との信念に燃えて厳冬の山頂にこもる野中到と、命を賭けて夫と行をともにした夫人の行動と心情を感動的に描く。(山本健吉)
富士山頂に気象レーダーを建設するという大事業を軸に、それにまつわる錯綜した動きを追って現代社会のひろがりを捉え、さらに、山岳小説の興趣を深めた長篇。(尾崎秀樹)
鎖国日本に大ロシア帝国の存在を知らせようと一途に帰国を願う漂民大黒屋光太夫は女帝に謁し、十年後故国に帰った。しかし幕府はこれに終身幽閉で酬いた。長篇歴史小説。(江藤淳)