出版社 : 文藝春秋
「僕らの愛は、悲劇的な終わり方をした」憧れの女性との幸福な結婚生活に潜んでいた切ない真実(「彼女の宝石」)、大切な人たちの首元にふと現れる不思議なモノ(「さみしいマフラー」)他、アイドルへの一途な愛、巨大でピュアで惚れ惚れするような愛の姿が、一つ一つ心に染みわたる。名手が放つ感動直球!短編集。
失業中の28歳青年の冴えない日常に押し入ってきた強盗。「大声をだすな」というその声はやけに甲高く、背が低くて…。逆転につぐ逆転のストーリーの面白さ、軽やかな文章が光る「オール讀物推理小説新人賞」受賞作ほか、ふと引っかかる言葉の謎から、事件の意外な真相をこまやかに解き明かす7編の快感ミステリー。
【心揺さぶる長編ビジネス小説の傑作】 職場では左遷の危機、妻は不倫、娘は万引き あなたなら、どうする!? 競合デパートとしのぎを削る大松屋銀座店の法人外商部課長・津川直二郎は、突然、大口顧客から取引停止を通告される。年商二億円の商権を失う危機に、左遷を仄めかす上司。津川が挽回に奔走する最中、妻は不倫に走り、娘は万引き事件を起こし、家庭にも深刻な亀裂が……。 人生最悪の逆風に直面した男の選択とは?
石川啄木の死の1年後、同じ肺結核で死の床にある妻の節子の回想で始まる小説で、全編を節子の視点で描き、二人の錯綜した愛を掘り下げます。互いに14歳のときに出会い、結婚し、故郷を追われて漂泊し、貧窮の中で生きた二人。27歳で若き命を散らす啄木の生涯に重ねて、節子の救われ難く見える一生にスポットライトを当て、その心情に寄り添います。これまで節子は、世に埋もれた天才歌人を支え続けた健気な妻と言われてきましたが、果たしてそれが本当の節子の姿だったのだろうか、という思いが作者・鳥越碧さんの執筆動機です。確かに節子は、結婚後も短期間しか一緒に暮らせず、啄木からの仕送りもわずかで、彼の母らと共に貧乏のどん底に突き落とされます。啄木が釧路に単身赴任して芸者とわりない仲になったときには、煩悶し嫉妬もします。ようやく東京で同居できるようになったときも、すさまじい嫁姑の諍いを起こし、社会主義へと走る夫からも取り残され、孤独感をつのらせます。ついには、極貧の中、自ら結核を患います。しかし、明治という時代に、初恋を貫き、親の反対を押し切って夢を追う無職の夫に嫁いだ節子です。自分の意志をしっかり持った女性であったに違いありません。そうであればこそ、姑とも激しく対峙し、親身になって相談にのってくれる夫の親友、宮崎郁雨に揺れる心をも制御できたのではないか。夫婦に溝が生じ、愛が冷めたかのように思えたときも、夫の看病を通じて静かに心を通わせることができたのではないか。たとえ世間的には不幸に見えたとしても、彼女にとってはキラキラとした誇らしい一生だったのではないか、というのが作者の節子への思いです。死の床で節子は一生を振り返ります。そして、最後に頷きます。後悔はしていない、誰でもない自分の意志で、己の一生を生き切ったのだからと。『雁金屋草紙』で第1回時代小説大賞を受賞した作者の、究極の愛を描く渾身の力作です。
これまで語られることのなかった、芸人たけしが生まれた街と唯一無二の師匠の物語。 『フランス座』といえば浅草の伝説的ストリップ劇場、そしてビートたけしさんが修業時 代を過ごしたことでも有名です。が、芸人を志すきっかけとなった師匠の名は浅草の外に広く知られることはありませんでした。師匠との出会いと別れを、自伝小説に昇華させたのが本作です。 大学をドロップアウト、特に夢もなく浅草フランス座でエレベーター番のアルバイトを始めた主人公・北野武を、劇場で働くからにはコメディアン志望だろうと決め付けて「タケ」と呼んで可愛がり、仕事と住居を与えたのは浅草で誰もが“師匠”と呼ぶ芸人・深見千三郎。時は七〇年代、お笑いの中心がテレビやラジオに移りつつある中で、舞台でのコントを極める師匠に導かれながらも、「売れてみたい」という気持ちを抑えられないタケはやがて漫才という別の道を選びーー。尊敬しながらも超えてゆかねばならない師弟の姿を笑いと切なさで描く傑作青春小説。
南町奉行所の定町回りの同心土久呂凶四郎は、池の端の出合い茶屋の殺しの現場で、妻の阿久里が無残に惨殺されていたのを目撃してしまった。何故妻がこのような所で、一体誰に?以来凶四郎は不眠症になってしまい、勤めに支障をきたすことに。見かねた奉行の根岸は凶四郎に夜廻りを命じた。不穏な新章、いよいよスタート!
東京マラソンと浅草三社祭で覚醒剤混入殺人事件が相次いで発生!警視庁公安部のエース青山の大胆な捜査の末に、暴力団と中・韓・露マフィアの複合犯罪が明らかに。最強かつ「最恐」の組織はどこか?青山と同期カルテットは人事レースを生き残れるのか?公安出身の著者ならではのリアルすぎる書下しシリーズ第12弾、遂に完結!
「けっして瞋るな。瞋れば命を失う」父の訓えを守り、檻の中で運命を受け入れて暮らす彼が、太平洋戦争下の過酷に苦しむ人間たちを前に掟を破る時ーそれぞれの哀切と尊厳が胸に迫る表題作ほか、昭和四十年の日帰りスキー旅行を描く「帰り道」、学徒将校が満洲で奇妙な軍人に出会う「流離人」など華と涙の王道六編。
日本のミステリ・ハードボイルド史上、こんなにカッコいい女性主人公はいない! 男の人間性を一目で見抜く特殊能力を活かし、裏のコンサルタントとして生きる女・水原。国家安全保障局(NSS)の湯浅より依頼され、堂上保という男について調査したところ、その正体は、一瞬で人の生命を奪う、1億人に1人しかいない存在であることが判明する。 その存在を利用して、中国ではすでに要人暗殺事件が起きていた。 水原は堂上と接触するが、その直後、堂上は失踪。水原は中国から潜入した“彼ら”の行方を追うがーー。 『魔女の笑窪』『魔女の盟約』に続く、『魔女』シリーズ第3弾!
水原は、自分の存在意義や能力を知らされた中国人の頂点捕食者が、ある目的をもって日本にやってきたと推測する。彼らの参謀は誰か、そして目的とはー。堂上は殺され、水原は中国人頂捕たちの行方を追うが、逆に中国安全部に拉致される。その裏では、国家的な陰謀が蠢いていた。「魔女」シリーズ第3弾。
未確認テロ情報を受けた十津川警部は、乗客の危険を未然に防ぐため豪華客船「飛鳥2」に乗船する。平穏な日本一周の船旅は、船内に響き渡る爆発音とともに急転、乗客乗員千名は、突如人質となってしまう。姿見せぬ犯人の正体とは、その要求とは?十津川は彼らとの交渉に乗り出すが…。国際問題を背景とした社会派ミステリー。
政治と共に世に出、政治によって抹殺された千利休。利休の編み出した「侘数寄」の精神は、美の世界を支配した。牧村兵部、瀬田掃部、古田織部、細川忠興という利休七哲に数えられる高弟たちによって語られる、利休と秀吉との相剋。弟子たちの生涯から、利休の求めた理想の茶の湯と、その死の真相に迫っていく。
結婚が政略であり、嫁入りが高度な外交であった戦国時代。各々の方法で城を守ろうとした四人の女城主がいた。美濃国・岩村城を守る信長の叔母珠子。能登国・七尾城で息子・畠山義隆とともに上杉と戦う佐代。そして、筑後国・柳川城で夫・立花宗茂の留守を守る〓(ぎん)千代など時代に翻弄される四人を描く歴史小説。
大工の良吉と夫婦約束をしていた仲居が姿を消した。しかも己の痕跡を消そうとするかのように、塵一つ残していなかった。秋山家の奉公人の太市は良吉とともに行方を追い、ようやく見つけたかに思えたが、彼女は見向きもしない。裏切られたと良吉は自棄になるが、久蔵はある可能性に気づき、網を張ることに…。シリーズ第3弾!
平岩弓枝の「御宿かわせみ」は江戸人情だけじゃない、ミステリも侮れない! 物理トリックに心理トリック、フーダニットにホワイダニット……「御宿かわせみ」には、びっくりするほど秀逸なミステリ作品が多い、と書評家・大矢博子が、トリックを切り口に七作品を厳選。 かわせみシリーズの傑作「矢大臣殺し」は、アガサ・クリスティへのオマージュか? 巻末の著者インタビューに、創作のタネあかし、あり。
鹿野靖明、34歳。筋ジストロフィー患者で、一人では寝返りも打てない。だけど、自由に生きたい!自ら集めたボランティアに支えられての自宅暮らしはわがまま放題。バナナが食べたくなったら、たとえ真夜中でも我慢しない。病院で、ただ生きているだけなんて、意味がない。そのわがままは命がけだった。実話から生まれた映画のノベライズ。
ニューヨークの地下で拉致された女性は毒の針で刺青を刻まれ、死亡していた。現場では、科学捜査の天才リンカーン・ライムが解決したボーン・コレクター事件に関する書籍の切れ端が発見された。殺人者はあの連続殺人犯の手口とライムの捜査術に学び、犯行に及んでいるのか?現代最高のミステリー・シリーズを代表する傑作。
ニューヨークの地下迷宮で殺人を繰り返す犯人。毒針で被害者の皮膚に刻まれた謎の文字は何を意味するのか。次の殺人はどこで起きるのか。そして犯人の狙いは何か。やがて浮かび上がる二重三重に擬装された完全犯罪ー。「このミステリーがすごい!」1位に選ばれた、ドンデン返しの魔術師ディーヴァーの会心作。
杉村三郎vs.“ちょっと困った”女たち。自殺未遂をし消息を絶った主婦、訳ありの家庭の訳ありの新婦、自己中なシングルマザー。『希望荘』以来2年ぶりの杉村シリーズ第5弾!