出版社 : 文藝春秋
かつて大津波に襲われたインドネシア、バンダ・アチェの海岸に、日本人と思しき一人の男が打ち上げられた。彼は記憶を喪失しており、言葉も喋れない。日本から来たサチコは、その男と出会うことで、運命的な愛に引き寄せられてゆく…
八咫烏シリーズはここから始まったーー女子高生・志帆が、故郷の山奥で遭遇したものとは。ついに明らかになる異世界「山内」の秘密。 巻末には文庫オリジナルの自著解説、荻原規子さんとの対談も収録。 序章 第一章 雨宿り 第二章 荒魂(あらみたま) 第三章 過去夢(かこむ) 第四章 糺(ただ)す 第五章 神名 第六章 落花 終章 帰還
セックスは人間に贈られた よろこびなのか、呪いなのかーー。 結婚して4年目の雄吾は、新入社員の泉希がまとう匂いに強く惹かれる。 それは、遠い初恋の記憶へとつながる匂い。けれど、妻の摩子にはない。 (表題作「MILK」) 一人息子を妊娠して以来、夫とはセックスレス。 このままでは三十代の十年間を一度もセックスしないですごすことになる、 と思った皆子は、同じような境遇の男性と関係を持つことを決意する。 「アローン・トゥゲザー」 結婚して七年になる直哉は、何気なく食事に誘ったアルバイトの女性と 帰り道でキスをしてしまう。はじめ驚いていた彼女は、 次の瞬間、思いもかけぬ提案をしてきた。 「いれない」 アメリカのブルーフィルムを上映している映画館で、 年上の女性と出会った男子高校生の一志。 彼女は脚本家で、AVの脚本を書く参考に一志の話を聞きたいという。 「水の香り」 誰もが当たり前に持つ欲望と、それが満たされるよろこび。 刺激的で幸福なエロスを、軽やかに描き出した恋愛小説短篇集。
あの子は、 どこから戻れなくなったんだろう── 東京で働きながら小説家を目指していた今日子は、震災が起こった翌年に夢を諦め、母のすすめで実家に戻る。妹とその夫、娘との二世帯住宅の生活に倦み疲れながらも、小説を諦めきれない。 そんな中、過去に凶悪犯罪を起こした少年Aが地元にいるという噂を耳にする。そしてパソコンなどを検索して知った少年Aの姿に急速に惹かれていく。 一方、神戸生まれで、東京に住む十七歳の莢(さや)も、少年Aを崇拝し、「聖地巡礼」と称して事件現場などを訪れていた。 また少年Aに当時七歳の娘を殺された母親は、息子、夫とともに同じ場所にとどまり、一見平穏そうに見える暮らしを送っていたが、教会の人間から、Aのファンの話を聞かされる。 少年犯罪の加害者、被害者遺族、加害者を崇拝した少女、その運命の環の外にたつ女性作家……それぞれの人生が交錯したとき、彼らは何を思い、何を見つけるのか。 著者渾身の長編小説! 作家が書くことに固執するのは、「人間の中身を見たい」からなのだ。これは、小説ノンフィクションのジャンルにかかわらず、作家が持つ病理なのだ。その意味で、私もAの同志なのである──佐藤優氏・解説より
高度経済成長期の終わり、岐阜県の小さな食堂に生まれたスズメ。小学生の時に病気で左耳を失聴してしまうが、我が子を愛してやまない両親と、同じ日に同じ病院で生まれた幼馴染のリツに支えられ健やかに成長する。高校を卒業したスズメは少女漫画家を目指し上京し、人気漫画家・秋風羽織のもとで仲間と修業に打ち込むが…。
父島で育った丈二・子温の二人の兄弟は、ジョン・マンこと中浜万次郎と出会い船乗りを目指す。その頃、アメリカ西部はゴールド・ラッシュに沸き人々が殺到。中国からも海を渡る者がおり、兄弟も新天地へ。現地では一攫千金を夢見る男たちの間で復讐劇が勃発。日米中を股に掛けた死闘必至の大作戦が始まった。
「じいちゃんなんて早う死んだらよか」。ぼやく祖父の願いをかなえようと、孫の健斗はある計画を思いつく。自らの肉体を筋トレで鍛え上げ、転職のため面接に臨む日々。人生を再構築中の青年は、祖父との共生を通して次第に変化してゆくー。瑞々しさと可笑しみ漂う筆致で、老人の狡猾さも描き切った、第153回芥川賞受賞作。
侠客として名を馳せた次郎長は幕軍・官軍入り乱れる駿河・清水で名士となり、波止場をつくる時も先頭にたった。養女となった「おけんちゃん」が少女時代に出会った白皙明眸の西洋医との関係が深まるにつれて、やがて…。港に生きる人たち、廓の女たちそれぞれの愛別離苦。作家自らのルーツを遡る、町の物語、恋の物語。
次郎長の死を境に世情は様変わり。戦争が始まり、けん自身にも驚天動地の出来事が襲いかかり、希望にあふれた日々は暗転。明治から大正へと激しく動く。忍苦を強いられる市井の人々、苦界の女たちや子供たちをけんは放っておけない。二十年前に姿を消した西洋医がなぜ清水に戻ったのか?次郎長の娘の恋の行方は。
暑い夜だった。そして夜は始まったばかりだったーたたみかけるような文体で冒頭に語られる、四人の男の不運な人生。小さな居酒屋の常連である彼らを“押し込み強盗”にしたたかに誘う、謎の男が現れる。決行は人足が途絶える逢魔が刻…。物語構成の独創性が際立つ、ハードボイルド犯罪時代小説の傑作!
1920年代、狂乱のパリ。作家志望のイギリス青年ユージンは、呪われた赤いダイヤの噂を聞きつける。アメリカ人探偵マークと共に、謎の宝石を狙って人気随一のキャバレーに乗り込むが、焔の色の瞳を持つ美貌の踊り子ブランシェにユージンは一目ぼれしてしまい…。ミステリアスな展開に息つく暇もない恋と友情の華麗なる冒険物語。
膨大な数の短編から選びに選んだ傑作選第二弾。大火で焼けた家を自力で再建し、孤児たちを引きとり奮闘する大工と娘を描く「ちいさこべ」。将来を誓った男をひたすら待ち続けた女が迎える、無残だがどこか美しい結末「榎物語」。生きるために暗愚を装い続けた若殿の悲劇「若き日の摂津守」。意地を貫いて一層の輝きを放った九編。
その町を覆ったのは霧ー目の前さえ見通せぬ濃霧。その奥には何かおそるべきものが潜む…豪雨に襲われてスーパーマーケットに集まった被災者を襲う災厄とパニックを描き、映画化、TVドラマ化された伝説の中編「霧」他、「恐怖の帝王」の凄みを凝縮した問答無用の傑作集。キング入門者に最適、キング・ファン必携の一冊!