出版社 : 新潮社
十九年前、私たちは浮くようにそこに居た。実体験を元に描く慈しみの物語。彼らが女を商品のようにしか扱えないのと同じで、私は彼らを子供を産ませる男か身体を買う男に峻別することしかできなかったーー。十九年前の、デリヘル開業前夜の彼らとの記憶に導かれ、私はかつて暮らした歓楽街へ赴く。酷い匂いの青春はやがて、もうすぐ子供が産めなくなる私の、未来への祈りとなる。新たな代表作!
優しくしてくれる夫。でも、今夜、あなたは私を殺そうとしているでしょう? 15歳で結婚し、16歳で亡くなったと、わずかな記録しかイタリア史に残されていない主人公ルクレツィア・ディ・コジモ・デ・メディチ。『ハムネット』でシェイクスピアの妻を鮮やかに蘇らせた著者が、政略結婚の末に早世した少女の「生」を力強く羽ばたかせる。スリリングな展開と大胆なラストで、イギリス文学史に残る傑作長篇小説。
くり返し現れる夢の風景を求めて旅立つ少年、奪われた恋人を追って故郷を出奔する男、一度は愛した男に裏切られた女、政争と権謀術数の渦に巻き込まれる人々…不条理な運命に抗う先に、救いはあるのか。
新任地川崎で、彼女の頬を濡らすのは涙の雫か、全てを洗い流す慈雨の雫か。モラハラ夫、我が子を見捨てる母親、身寄りのない記憶喪失の男……横浜家裁川崎中央支部にやってくる家事事件の当事者たちは多種多彩。社会から零れ落ちそうな人たちの心を開き、それぞれの人生に寄り添うため、赴任したばかりのかのんはひたむきに奔走する! 人間、そして家族の表と裏を心揺さぶる筆致で描く連作短篇集。
インターネットですべてが変わる。だから今のうちに体験しておくべきなんだ。1995年、宇都宮。高校2年の達也は東京に憧れ、広告業の父は自宅の「スタジオ」で取引先のためのアンプ製作に腐心する。父の指示で、黎明期のインターネットにいち早く接続した達也は、ゲイのコミュニティの存在を知り、おずおずと接触を試みるー。バブル崩壊後の20世紀末を疾走する、父と息子の冒険譚!
息をひとつ吸い、またひとつ吐く。生のほうへ向かってーー。喘息の一息一息の、生と死のあわいのような苦しさ。その時間をともに生きた幼い日の姉と弟。弟が若くして死を選んだあと、姉は、父と母は、どう生きたか。喪失を抱えた家族の再生を、息を繋ぐようにして描きだす、各紙文芸時評絶賛の胸を打つ長篇小説。新潮新人賞受賞作「わからないままで」を併録。注目の新人、初めての本。
実直なホテルマンは奔放な書家と文字に魅せられていく。書下ろし長篇小説! 都内の老舗ホテル勤務の続力は招待状の宛名書きを新たに引き受けた書家の遠田薫を訪ねたところ、副業の手紙の代筆を手伝うはめに。この代筆は依頼者に代わって手紙の文面を考え、依頼者の筆跡を模写するというものだった。AmazonのAudible(朗読)との共同企画、配信開始ですでに大人気の書き下ろし長篇小説。
嘉永六年(一八五三)元日、異例の暖冬に加賀藩は弱りきっていた。この夏の重要行事である将軍への「氷献上」に不可欠な氷が全く作れないのだ。ひと月後、信州の旅籠の氷室で見つけた氷には、八十名以上もの先約が。事態を打開するため御用飛脚宿「浅田屋」の面々が立ち上がる!氷の確保、献上日の調整、他藩の説得、新しい氷室の普請、運搬中のアクシデントー怒涛の展開があなたを待つノンストップ時代小説!
小4男児が自宅を出たまま姿を消した。時効目前の15年後、子供の骨を持ち運んでいた元ホステスの女が殺人容疑で逮捕される。女は苛烈な取り調べにも、法廷での被告人質問にも沈黙を貫き、判決は無罪。-やがて別の失踪事件との間に奇妙な共通点が浮上する。実在の未解明事件をベースに、あの福田和子にも擬された「沈黙の魔性」の“真実”を描き出す!
高校入学を一週間後に控えたある日、これまでセックスワークで生計を立て、ひとりで僕を育ててきてくれた母が、突然「結婚したい」と言い出した。僕は思わず、中学で「元風俗嬢」と噂されていた先生のもとへ向かうが…。「しがみついたり、手放したりしながら、たくさんの折り合いをつけて生きている」大人たちに贈る、共感必至のR-18小説。
コロナ禍の読者に生きるよろこびを伝え、あたたかく励ました、オランダのベストセラー長篇。中年男ヘンクは、離婚して老犬と暮らすICUのベテラン看護師。ある朝、散歩中にへばった老犬を素早く介抱してくれた女性がいた。その名はミア。人生の辛苦を人並みに経験してきたヘンクだが、久々にときめいている自分を発見する。一人の男が生きる喜びを取り戻していく一日をつぶさに描いた愛すべき長篇。リブリス賞受賞作。
希望と絶望、そして祈りーー男たちを戦へ駆り立てるすべてが、この島にあった。兵力わずか四千の毛利元就軍が二万八千の陶晴賢軍を打ち破った名勝負の影には、壮絶な人間ドラマがあった。「これまで誰も書きえなかった厳島合戦の全貌を描き、我が国の歴史文学の空白を埋める記念碑的作品」--縄田一男氏絶賛! 謀略で勝利した元就と義を貫いて敗れた晴賢。対照的な二人の武将を通して人間の矜持を問う!
魂を揺さぶる村上春樹の<秘密の場所>へーー待望の新作長編一二〇〇枚! 十七歳と十六歳の夏の夕暮れ……川面を風が静かに吹き抜けていく。彼女の細い指は、私の指に何かをこっそり語りかける。何か大事な、言葉にはできないことを。高い壁と望楼、図書館の暗闇、古い夢、そしてきみの面影。自分の居場所はいったいどこにあるのだろう。村上春樹が封印してきた「物語」の扉が、いま開かれる。
三年前のバイク事故で右眼を失明した警察官の尾崎冴子は、訪れた事故現場でフラッシュバックのようにその一部始終を目撃する。以来、尾崎の右眼は三年前の光景を映すようになった。それを知った署長の深澤は、尾崎の信頼する弓削警部補と共に、未解決一家四人殺害事件の再捜査に乗り出すが…第9回新潮ミステリー大賞受賞作。
彼の身体よりもソファの肌触りを愛する女。身体から出た美しい石を交わし合う恋人たち。憧れ、執着、およそ恋に似た感情が幻想を呼び起こし、世界の色さえ変えていくー「女による女のためのR-18文学賞」受賞作「花に眩む」を初収録。原点にして頂点。ベストアルバム的短編集、ここに誕生。
「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」。各界から絶賛の声続々、いまだかつてない青春小説! 中2の夏休みの始まりに、幼馴染の成瀬がまた変なことを言い出した。コロナ禍、閉店を控える西武大津店に毎日通い、中継に映るというのだが……。さらにはM-1に挑み、実験のため坊主頭にし、二百歳まで生きると堂々宣言。今日も全力で我が道を突き進む成瀬から、誰もが目を離せない! 話題沸騰、圧巻のデビュー作。