出版社 : 新潮社
誰かが私の「過去」を覗いている!いや違う、「過去」が私を覗いているのかー。新築アパートで毎夜起こる怪現象、抱いた女の湿っぽい匂いの秘密、ドアにマーキングされる謎の文字、運転中の携帯電話から聞こえた何かが衝突する音…。過去の因縁が現実に繋がり、震え上がるような恐怖を体験させる超・恐怖小説。
子どもたちがみな独立し、丘の上の家に残ったのは老夫婦だけ。四季の草花や小鳥を愛で、夕食の後にはハーモニカ演奏を楽しむ。娘から届く心こもる手紙、隣人との温かな往来、そして家族全員がそろう賑やかな正月。小さな孫の一人が大切にするうさぎのミミリーも、ときどき家に預けられて元気よくはね回る…老夫婦の飾らぬ日常と、その中に見出す喜びと感謝を綴る、シリーズ第七作。
あれは事故死なんかじゃない。親友の死に同級生・相良優は不審を抱く。城戸ら不良グループが関与しているはずだ、と。葬儀当日ー担任教師の車で、相良・城戸を含む同級生6名が式場へ向う途中、大地震が発生!一行は崩落した地下駐車場に閉じこめられてしまう。密室化した暗闇、やがて見つかる城戸の死体…。極限状況下の高校生たちに何が起きたのか。
どこからか聞こえてくる「殺れ!」の声。殺意と肉欲に溢れる地上を舞台に、物語は進むー。暗い地下室で拳銃に脅かされながら、絵ハガキを作らされる男。河川敷で、殺人リハーサルを粛々と敢行するジャージ姿の一団。ペニスを露出させ、謎の人物を追う中年ルポライター…。それぞれが複雑に乱舞、絡み合いながら、前代未聞、仰天の結末へと突っ走る。異才が放つ、三島賞受賞の超問題作。
裁判所から召喚された世捨て人作家コーソは、出廷命令を無視して行方をくらますことにした。元恋人と空路ミネソタを目指すが、空港は大雪で閉鎖。レンタカーで移動する二人は、吹雪で事故を起こし凍死寸前に。やっと見つけた空き家で床板を燃やして一命を取りとめるが、床下からは何体もの白骨死体がー。その家にまつわる身の毛もよだつ驚愕の秘密とは?至高のサスペンス登場。
1912年4月10日、豪華客船タイタニック号は、英サウサンプトン港から処女航海に出発した。船の楽士たちは、この航海のためにヨーロッパ7カ国から集まった。様々な生い立ちを持つ彼らの共通点は、音楽を愛し、この道を選んだ宿命を受け入れていること。年齢も出身も異なる彼ら一人一人が明かす、数奇な物語ー発表されるや大反響を呼んだ、弱冠25歳のノルウェイ人作家による話題作。
タイタニック号は順調に航海を続けたが、4月14日23時40分、北大西洋上で氷山と衝突した。徐々に高まる乗客の不安を鎮めるため、楽士たちは演奏を始めた。それは最後の運命の瞬間まで続けられたという。偶然同じ船に乗り合わせ、運命を共にした楽士たちは、誰を愛し、何を信じ、どう生きたのかー史実と想像力が絶妙に入り混じり、壮大なスケールで読者を圧倒する稀有な作品。
少壮の実業家ニックが姿を消した。夢の抗癌ワクチン開発成功かと報道された直後だった。墜落した専用機の残骸が見つかるが遺体は発見されず、ワクチンの実態も不明のまま、社は存亡の危機を迎える。事件に巻き込まれた女性経済コラムニストのカーリーは、調査を始めた。ニックは本当に死んだのか?彼は癌患者を救う救世主なのか、それとも公金横領を企む詐欺師だったのか。
孫娘のけい子ちゃんがお祭りに行くのに、買ったゆかたが大きくて着られない。妻が寸法を直すことになったが、お祭りは今日の夕方はじまる。さて、寸法なおしは、間に合うだろうか?-夫婦二人の穏やかな日々を、祈りと感謝をこめて描く連作第十作目。
ルックスだけはいい奴らが集まる峯尾学園芸能科。一方のパンジン科(普通科)で女にもてずサイテーの日々を送る二人の男子が、街で誘われた怪しげなパーティー。寒風吹きすさぶ土曜の夜の六本木、17歳の高校生たちがそこに結集した時、運命が動いた…。
百年前、まだ純情だった頃のアメリカ。野球選手の夢破れたベン・フェルプスは、帰郷する夜汽車の中で、ひとりの美しい娘と出会った。その名はロッティー。一年後、再会した彼女は、なんと移動遊園地の一座にいた。そこで起こった不可解な死。ベンが抱えた秘密。三度目の出会いは、彼らの運命を揺り動かした。ケンタッキーからジョージアへ、ベンはロッティーの魂の故郷を探す旅に出た。ロッティー、あなたは哀しいほど、綺麗だった。その美しき魂が、人々の運命を変えてゆく。『白い犬とワルツを』を超えた深き愛の物語。
うっかり携帯電話を飲み込んだ男。オフィスを丸ごと食べてしまうOL。退屈しのぎにあなたに変わってみる私…。「新潮ケータイ文庫」書下ろし特別作品白昼夢みたいにブラックな78の超短篇。
八幡様に朝日がのぼり、大川端に夕陽が沈む。元禄、天明、文化、天保、時代は移るもそれは変わらず、お天道様が見守る下で、様々な人生が織り成されていく。ろうそく問屋のあるじ、茂助の悔い。煎餅屋の娘、おじゅんのかなわぬ恋。辰巳芸者、厳助の意地…。江戸は深川、辰巳に花咲く、八つの人情物語ー一力節全開の名短編集。
脳みそに錐を刺して、血が噴き出るまで考えろ!それが俺たちの仕事だ!全てを捨てて打ち込んできた仕事から左遷された男たちは、画期的物流システム構築に自らの企業人生を賭けた!差し迫った巨額の決済、保身に走る上司、君臨するカリスマ社主…。業界一位の巨大運輸企業を舞台に、男たちの熱いドラマが弾ける!実現可能!前代未聞!画期的なビジネスモデルを織り込んだ、話題騒然の経済小説。
将来を嘱望されていた大手邦銀NY支店のディーラーが、滞在先のNYのホテルから飛び降りた。彼は、死の前日に偶然旧友の芹沢と再会を果し、謎のメッセージを残した。あまりに突然な友の死に衝撃と責任を覚え、死の真相を探ろうと決意した芹沢の前に、辣腕家としてウォール街でその名を知られた有吉州波が、そのまぶしい姿を現したー緻密な構成とスピーディな展開の金融ミステリー。
相次ぐ金融不祥事を傍観するだけの政府、ひたすら保身を図る大蔵官僚、すべてをひた隠しにして自分らだけの生き残り策を弄する邦銀重役たちー恋人の復讐を誓い、真相を公にしようと、州波は芹沢と力を合わせてある計画を実行に移す。それは彼女の知識も人脈も経済力も、すべてを賭けた途方もない秘策だった。著者がその専門知識を駆使して、日本金融界の闇を告発する衝撃作。
ジーンは同棲相手ロイの暴力に耐えかね、ひとり娘のグリフを連れて義父アイナーの牧場に身を寄せる。息子が死んだ事故の当事者であるジーンを、彼は未だに許していない。そのアイナーも、熊に襲われたかつての戦友ミッチに責任を感じ、面倒を見ている。そして、グリフがミッチになつき始めた頃、ジーンを追ってロイが牧場にやって来た…。大自然を背景に“許し”を問う涙の力作。
東京の西の近郊の小さな古道具屋でアルバイトをする「わたし」。ダメ男感漂う店主・中野さん。きりっと女っぷりのいい姉マサヨさん。わたしと恋仲であるようなないような、むっつり屋のタケオ。どこかあやしい常連たち…。不器用でスケールちいさく、けれど奥の深い人々と、懐かしくもチープな品々。中野商店を舞台に繰り広げられるなんともじれったい恋、世代をこえた友情。幸福感あふれる最新長篇。