出版社 : 新潮社
ぞっとするほど美しく、息を呑むほど恐ろしい。恩田陸の“最新型”がここにある。とある立てこもり事件の証言をたどるうちに、驚愕の真相が明らかになって……(「ありふれた事件」)。幼なじみのバレエダンサーとの再会を通じて〈才能〉の美しさと残酷さを流麗な筆致で描く「春の祭典」、ある都市伝説を元に、世界の“裂け目〞を描出させた表題作ほか、小説の粋を全て詰め込んだ珠玉の一冊。
恋と作文に悩む九州の小学生も。夫を亡くしたおばあちゃんも。人気急上昇中の四国生まれの落語家も。東北に帰郷する激務のサラリーマンも、ポーランド育ちの関西人で熱狂的な阪神ファンも。ふとしたときに思い出す。笑ったこと、泣いたこと。恋したこと、さよならしたこと。そこにはいつも、列車があったー。読み終えたとき、きっとあなたはこう思う。明日からまたがんばろう。
新王践祚──角なき麒麟の決断は。李斎は、荒民らが怪我人を匿った里に辿り着く。だが、髪は白く眼は紅い男の命は、既に絶えていた。驍宗の臣であることを誇りとして、自らを支えた矜持は潰えたのか。そして、李斎の許を離れた泰麒は、妖魔によって病んだ傀儡が徘徊する王宮で、王を追い遣った真意を阿選に迫る。もはや慈悲深き生き物とは言い難い「麒麟」の深謀遠慮とは、如何に。
「助けてやれず、済まない……」男は、幼い麒麟に思いを馳せながら黒い虞を捕らえた。地の底で手にした沙包の鈴が助けになるとは。天の加護がその命を繫いだ歳月、泰麒は数奇な運命を生き、李斎もまた、汚名を着せられ追われた。それでも驍宗の無事を信じたのは、民に安寧が訪れるよう、あの豺虎を玉座から追い落とすため。--戴国の命運は、終焉か開幕か!
継承される血と野望。届かなかった夢のためーー子は、親をこえられるのか? 成り上がった男が最後に求めたのは、馬主としての栄光。だが絶対王者が、望みを打ち砕く。誰もが言った。もう無理だ、と。しかし、夢は血とともに子へ継承される。馬主として、あの親の子として。誇りを力に変えるため。諦めることは、もう忘れたーー。圧倒的なリアリティと驚異のリーダビリティ。誰もが待ち望んだエンタメ巨編、誕生。
おれは音楽の、お前は文学のひかりを浴びて、ゾンビになろうーー。音大を中退した小説家志望の「ぼく」、同級生は魔法のような音を奏でるピアニストの卵。その彼女の潮里に、ぼくは片想いしている。才能をもつ者ともたない者。それぞれが生身のからだをもって何百年という時間をこえ体現する、古典を現代に生き継ぐことの苦悩と歓び。才能と絶望と恋と友情と芸術をめぐる新・青春音楽小説!
聖フランチェスコの死から四半世紀が過ぎ、アッシジに大聖堂が完成しつつあった1252年、ローマ近郊の修道院に届いた謎の聖遺物が次々に奇蹟を起こした。調査を命じられた若き修道士ベネディクトが、村の助祭ピエトロとアッシジへ向かうと聖者の遺体が墓所から消えていた。奇蹟と大聖堂の謎、聖者と信仰に迫る歴史ミステリ。
Sex or Die!! 同情するならさせてくれ! 人気映画脚本家による(ほぼ)実録夫婦小説! 齢40を迎え未だ年収50万円。売れない脚本家の俺は、自らのゴミ化を妻に悟られぬようにと愛情表現の一環として毎夜セックスに励んでいたのだが、近頃は「ヤダ」の一言で拒絶されるようになった。……そう、俺は妻の巨乳を3か月も触らせてもらえてないのだ。とことん呆れ、笑い、ちょっぴり泣ける、狂い咲き夫婦道!
読み直すたびに新たな発見がある20世紀文学に聳える最高傑作の完全版。少女への倒錯した愛を描く恋愛小説であり、壮大なロード・ノベルであり、ポストモダン小説の先駆でもある。数々の謎を孕み多様な読み解きを可能とするナボコフの代表作「ロリータ」。ロシア語版との異同の注釈を付したその増補版に、少女愛モチーフの原型となった中編「魅惑者」を併録。ナボコフ・コレクション全5巻完結!
アメリカ最後の原始林を救え。米現代文学の旗手が放つ、森羅を覆い尽す物語。撃墜されるも東南アジアの聖木に救われた兵士、四世代に亘り栗の木を撮影し続けた一族の末裔、感電死から甦った女子大生……アメリカ最後の手つかずの森に聳える巨木に「召命」された彼らの使命とは。南北戦争前のニューヨークから20世紀後半のアメリカ西海岸の「森林戦争」までを描き切る、今年度ピュリッツァー賞受賞作。
十九歳のスミトは、船に乗って北へ向かう。行き着いた【谷】で待ち受けていたのは、俳優や脚本家を志望する若者たちと、自給自足の共同生活だった。過酷な肉体労働、同期との交流、【先生】の演劇指導、地元に残してきた“恋人未満”の存在。スミトの心は日々、揺れ動かされる。著者の原点となる記憶をたぐり、等身大の青春を綴った芥川賞受賞作のほか、入塾試験前夜の希望と不安を写した短編も収録。
房総半島に工房を構える若手女性染色家、レイ・市東・ヴィラセニョール。父から継いだフィリピンの血と母からの日本。鮮烈な色が評価され始めた矢先、父は病身をおして祖国へ帰ると言いだす。何が彼を駆り立てるのか。染色の可能性を探求し、型にはまった「日本らしさ」に挑むレイが、苛酷な家族の歴史を知ったとき選択した道とは。美しく深みのある筆致で女性の闘いを描き出す傑作長編。
独り暮らしの初老男性が絞殺死体で発見された。捜査線上に浮上したのは家事代行業の地味な女性。女の周辺では、複数の六十代男性の不審死が報じられ、疑惑は濃厚になっていく。女は、男たちから次々に金を引き出していたのか。見え隠れする「中川綾子」という名前の謎とは。逮捕後も一貫して無実を訴える彼女だが、なぜか突如、黙秘に転じた……。判決の先まで目が離せない法廷小説の傑作。
全国紙記者の夢破れた野々村巡洋が入社した、北海タイムス。配属された整理部は、他紙の 4 倍の仕事量にして 7 分の 1 の年収だった。変人だらけの職場。連日の酒席。過酷な労働環境に厳しすぎる先輩。失望に加え、恋の終わりすら味わった野々村だが、あることを契機にプロフェッショナルとなる覚悟を決める──。著者が身を置いた北海道の名門新聞社を舞台に描かれた、熱血度120%の長篇小説。
北日本のとある地方都市の一角に建つ、時間旅行者しか泊まることのできないなぞのホテル、「はなぞのホテル」。そこで働く新米の桜井千鶴は、このたびホテル系列の犬カフェへ出向して、過去や未来からやってくるお客様(徳川将軍からロボットまで!?)を必死でもてなすことに。けれど、闇ルートで違法時間旅行をする悪党の影が、彼女のドタバタで平和な日常に忍び寄りつつあった!時間旅行者が経営する犬カフェに勤める桜井千鶴のほっこりでどたばたなタイムトラベルミステリー。
最高の親友と運命の恋人輝く青春の最後の12ヶ月。死に至る「宝石病」を患う理奈は海の見える高校に転校してきた。不安と焦燥を抱えながらも、残された時間で「素晴らしい青春」を送らなければと頑張る彼女は、運命の恋人と無二の親友と出会う。一緒に過ごした最後の12ヶ月は、大切なことに気付いたかけがえのない日々だった……そして結末、秘密がすべて明かされるとき、物語は究極のハッピーエンドへ。2度読み必至の泣ける恋愛小説。
貴方は、人間合格か、人間失格か──。昭和111年、日本は医療革命により死を克服し、GDP 世界第 1 位の大国となった。体内ナノマシンをネットワークに繋ぎ、管理することで成立した無病長寿社会。だが、その陰で人が異形化するヒューマン・ロスト現象が起きていた。人間を「失格」しているという絶望。死への逃避を奪われた大庭葉藏は、その果てに何を見るのか。太宰治『人間失格』を原案とする SF アニメ、ノベライズ!
イギリス労働党に入党し政治家としての階段を上りつめていくサーシャ。ヴェトナム戦争を経てアメリカの経済界で伸し上がっていくアレックス。やがて二十世紀が終わる頃、二人の進路は何かに導かれたかのように同じ場所へと向っていく。そこには野望と怨念が渦巻く世界が待ち構えていた。果して両者の到達点はー現代史を背景に、人生の偶然と宿命を奇抜なスタイルで描き出す空前のサーガ。