出版社 : 新潮社
オンライン詐欺で捕まり、出獄したルーマニア人ダルカは、ネット調査会社に勤めたが、インドの会社のシステムから手に入れたデータが途方もない「金鉱脈」だと気付く。それを使ってスパイの洗い出しを依頼した中国情報機関のダミー会社の意向をよそに、彼はこれからターゲット情報を作り闇ウェブで売り捌くことにした。すると、アメリカ人の極秘情報を物色する謎の組織が接触してきて……。
何も起こるはずはない。いつも通りだ。明日はくる。絶対にくる。ついさっきまでそこに確かにあったはずの見慣れた光景がいつのまにか見えなくなっている……。平凡な日常こそかけがえのないものだと感じつつも、それが少しずつ失われていくことへの不安に苛まれる多感で繊細な少年少女たちを描く「虹のかかる行町」。帰ってきたはずの子どもが家から姿を消す「飛光」など四篇を収める中短編集。
ここは、あったかい異世界。ほのかに、はるかと、つながっているーー最新作8篇を収録。急死したおばあちゃんが私に伝えたかったことは何?……不思議なミッションを与えられて歩き続けた私は、辿り着いて意外なことを知る(「なごみちゃんの大晦日」)。十七歳での作家デビューから、独自の小説世界を創り続けて四十年。橋、猫、ケーキ、秘密基地、AI、碁盤ーー短篇+ショートショート+中篇、さまざまな味わいを楽しめるアラカルト作品集。
愛する娘は“ボーダー〞だった! 63歳にして新人。異能の作家が実体験を基に描く、正真正銘の問題作! バブルのあぶく金を摑み、順風満帆に過ごしてきたはずだった。やがて事業は破綻し、境界性人格障害の娘を連れた大西浩平は東北で土木作業員へと転身。再起を賭し、津波避難タワー建設へ奔走するも、それは奈落への序章に過ぎなかった。圧倒的な孤独、極限の恐怖、そして、絶望の頂へーー。あなたは、この現実を直視できるか。
いまは亡き天才建築家が設計した、通称「おっぱいマンション」。立地もデザインも抜群、できた当時はあこがれの住居、いまでは、終の住処として、人気を保ち続けていた。だが、重大な問題が発覚!勃発した改修騒ぎは、建築家の娘、学生運動あがりの引退した教師、秘密を抱えた元女優、天才の右腕たちの人生を、秘密を、理想を呑み込んでー。建て替えるべきか、残すべきか。正義の審判の行方は?人生最大のお買い物は、人生最悪のドラマを生む!?
私たちは、かなしみを乗り越えるために“家族〞になったーー。関東大震災で最愛の妹を喪った八重は、妹の婚約者だった竹井と結婚したが、最新式の住居にも、新しい夫にも、上手く馴染めないーー昭和と共に誕生し、その終焉と共に解体された同潤会代官山アパート。そこに暮らす一家の歳月を通して、時代の激流に翻弄されても決して失われない《魂の拠り所》を描く。今こそ見つめ直したい家族の原風景。
「男、仕事、結婚、子ども」のうち、たった三つしか選べないとしたらーー。どんなに強欲と謗られようと、三つとも手に入れたかったーー。50年前、出版社で出会った三人の女たちが半生をかけ、何を代償にしても手に入れようとした〈トリニティ=かけがえのない三つのもの〉とは? かつてなく深くまで抉り出す、現代日本の半世紀を生き抜いた女たちの欲望と祈りの行方。平成掉尾を飾る傑作!
定時の女王は体育会系ブラック企業に勝てるのか!? 大注目のお仕事小説第二弾。絶対に残業しない主義の結衣だったが、なんと管理職になってしまう。新人教育を任されたものの、個性的過ぎる若者たちに翻弄される結衣。そんな折、差別的なCMで炎上中の企業のコンペに参加することに。パワハラ、セクハラのはびこる前時代的で超絶ブラックな社風に、結衣は絶句するが……。
あの森に入れば人は王になれる。だがその後、殺されるーーそれは小説の森。小説の新人賞を得てデビューしたものの著書は一冊だけ、しかも絶版。そんな私が大学で創作を教えることになった。だが自身の執筆は行き詰まり、教え子たちも苦悩し隘路へとはまり込んでいく。なぜ私たちは小説を志すのかーー自身の経験を元に、文学の迷宮、小説の樹海を彷徨う人々を描いた表題作を始めとした渾身の作品集。
少年は信じる、魔法の力を。70年の時を超えて甦る、極限下の奇跡ーー。プラハの貧しいラビの家からサーカス団に飛び込み、ナチス政権下を生き抜いた老マジシャンと、LAの裕福な家に育ち、両親の離別に思い悩む少年。壊れた愛を取り戻す魔法は、この家族に何をもたらすのかーー。戦時下と現代、それぞれの艱難を越えて成長するユダヤ人少年の姿を温かな筆致で描く、17ヵ国語翻訳のデビュー長篇。
都知事、狙撃──。新国立競技場で起きた事件は日本を震撼させた。誰が。なぜ。狂騒の中、日就新聞社会部の天宮理宇はチームを率いて真実を追うが、捜査は唐突に打ち切られる。「犯人はクルド人難民」その警察発表は国策として難民を受け入れた日本において、瞬く間に浸透した。結論ありきの手法に違和感を覚えた天宮は社を去るが……。この国の未来を予見する圧倒的エンターテインメント!
「都知事狙撃事件の真犯人、その正体は……」新聞社を辞め、フリ -の記者となった天宮理宇の告発は、ウェブを介して拡散し、世論が動き始める。だが、それは隠された秘密の一端に過ぎなかった。事件の鍵を握る男、アル・ブラク。シリアからの難民。メディアを牛耳る新聞王。すべての過去が繋がったとき、新国立競技場に再び銃声が鳴り響く。この国の“危機” を描く、怒濤の長篇サスペンス!
五年の在任中、署でも官舎でもぐうぐう寝てばかり。転任が決るや、別れを悲しんで留任を求める市民が押し寄せ大騒ぎ。罪を憎んで人を憎まず、“寝ぼけ署長”こと五道三省が「中央銀行三十万円紛失事件」や「海南氏恐喝事件」など十件の難事件を、鋭い推理と奇抜な発想の人情味あふれる方法で次々解決。山本周五郎唯一の警察小説。
傷一つない死体の顔に、なぜ犯人は包帯を巻いたのか? 特捜 7 のエース岬と、所轄署の“技あり”刑事里中が動き出す。死者の口中に詰められていた異物、発見された他人の指。そこに誘拐事件が発生した。被害者の息子が誘拐され、犯人は「父親を出せ」と要求。二つの事件が奇妙にもつれ合い、再び異様な死体が。多重犯罪を解く鍵はどこに? 鮮やかな推理と人への眼差しが温かい傑作警察小説。
京都に生まれ育った奥沢家の三姉妹。長女の綾香はのんびり屋だが、結婚に焦りを感じるお年頃。負けず嫌いの次女、羽依は、入社したばかりの会社で恋愛ざたといけず撃退に忙しい。そして大学院に通う三女の凜は、家族には内緒で新天地を夢見ていた。春の柔らかな空、祇園祭の宵、大文字焼きの経の声、紅葉の山々、夜の嵐山に降る雪。三姉妹の揺れる思いを、京の四季が包みこむ、愛おしい物語。
老後の準備を考え始めた千賀子は、ふと一人娘の将来が心配になる。 28歳独身、彼氏の気配なし。自分たち親の死後、娘こそ孤独な老後を送るんじゃ……? 不安を抱えた千賀子は、親同士が子供の代わりに見合いをする「親婚活」を知り参加することに。しかし嫁を家政婦扱いする年配の親、家の格の差で見下すセレブ親など、現実は厳しい。果たして娘の良縁は見つかるか。親婚活サバイバル小説!
おしゃれして、好きなインテリアで部屋を飾って、(ブラックだけど)アパレル勤務。みきは憧れの“女子的生活”を謳歌していたが、ある日、マンションの部屋の前に不審な男が。「あの、ここに小川って奴が住んでるって聞いたんですけどー」マウンティング、モラハラ、毒親。次々現れる強敵に、オリジナルな方法でタフに立ち向かうみき。読めば元気が湧いてくる痛快ガールズ・ストーリー。
ローマで暮らす玄須聖人の前に人間が降ってきた。それは、悪魔祓い師を務める神父の転落死だった。事件に遭遇した聖人を案じ、友人のマリク神父が駆けつけるが、「悪魔」の存在をめぐり口論となり、絶交宣言を下されてしまう。国籍や宗教を超えた特別な友の信頼を取り戻そうと聖人が苦悩するなか、マリクは新たなエクソシストに任命されるー聖域を揺るがすビブリオミステリー!