出版社 : 新潮社
堅実に暮らしていた女が芸術家風の客に抱いたほのかな恋心。愛した女を捜し続ける男を導く妖しげな香気。立身出世し、田舎に凱旋した男の本当の姿をみた妻。没落貴族がかつての邸宅を一晩だけ借りて開いた晩餐会にやってきた招かれざる客ーー。大都会ニューヨークと砂塵舞うテキサスを舞台に、普通の人々の悲喜こもごもを自在に描き尽した短編小説の名手による至高の17編を新訳!
ヒトの脳下垂体と睾丸を移植された犬が名前を欲し、女性を欲し、人権を求めて労働者階級と共鳴し、ブルジョワを震撼させる(「犬の心臓」)。繁殖力を高める生命光線を浴びて、大量発生したアナコンダが人々を食い荒らす(「運命の卵」)。奇想天外な空想科学的世界にソヴィエト体制への痛烈な批判を込めて発禁処分となった、20世紀ロシア語文学の傑作二編を新訳で収録。
二人の男が凶弾に倒れたークロノスシステムが予見する死を阻止すべく駆けつけた“次世代犯罪情報室”メンバーの前に、最強の男と女が現れた。やがて浮上する秘密組織と恐怖のテロ計画。奴らの真の目的とは何か?
女性初の皇太子となり、「女に天皇は務まらない」と言われながら、民のため、国のため、平和の世のために生きた孝謙称徳帝。聖武天皇の娘として奈良に仏教王土を築き、遣唐使を派遣し、仲麻呂ら逆臣の内乱を鎮め、道鏡を引き立て、隼人を傍に置いた。一人の人間として、女性としての人生をも求めた女帝の真の姿とは。突然の死と秘められた愛の謎を、和気広虫ら女官たちが解き明かす、著者初の歴史大作。
輸血を拒む少年と、命を委ねられた女性裁判官。深い余韻を残す長篇小説。法廷で様々な家族の問題に接する一方、自らの夫婦関係にも悩む裁判官の元に、信仰から輸血を拒む少年の審判が持ち込まれる。聡明で思慮深く、しかし成年には数か月足りない少年。宗教と法と命の狭間で言葉を重ねる二人の間には、特別な絆が生まれるがーー。二つの人生の交わりを豊かに描きながら重い問いを投げかける傑作長篇。
長屋の平和を守るため、悪党たちしぶしぶ大奮闘!スリに詐欺師に美人局、実は凄腕ばかりの善人長屋に迷い込んだ本物の善人・加助。人助けに燃え、減らず口の不良娘やケガをした当たり屋、不審な傷だらけの男児など、面倒の種をせっせと連れ帰り、そのたび騒動に巻き込まれる住人たちは戦々恐々。しかも拾った行き倒れが西国の盗賊一味と判明。とばっちりで差配の母娘が囚われてー!?
こんな食卓、私だけーー?ちょっぴりビターな、大人のための食小説。365日、食べて生きるわたしたち。好きな人といても、仕事や趣味に打ち込んでいても、お腹が空いていては幸せになれないのです。美味しい生活を求め奔走する男女6人、悩みはそれぞれ。偏食、孤食、料理ベタに味覚障害ーーこのコンプレックス、なんとかしたい! 大人気『給食のおにいさん』著者が描く、新食感ごはん小説。
鬱病、家庭崩壊、自殺未遂、大震災、麻薬逮捕。21世紀の碌でなし文学誕生。生からの一瞬の暗転として確固たる死を想え。不測の事態で流動する恥多き人生のただ中でこそ。時間を自在に往き来しながら、時に幻想的に、あるいは軽妙なユーモアのうちに、切実な記憶の数々を有機的につなぎ、やがて生命の喜ばしき光に到る……。泥沼のスランプを脱した著者10年ぶりの復活を証して、異彩を放つ長篇小説。
ウチの親って、絶対になんか変! と思っているあなたに贈る究極の毒親物語。私にとって、人生最大の悩みは両親でした……何気ない一言に浴びせられた罵倒、身に覚えのない行為への叱責、愛情のかけらもない無視、意味不明の身体接触。少女の頃から家庭で受けつづけた謎の仕打ちの理由を、両親を亡くした今こそ知りたい。驚愕の体験談を投稿の形で問いかけ、毒親から解放される道を示唆する「相談小説」。
「男子が男子を好きになるのは、おかしなことですか?」「ぜったい一緒に寝ようね。おにいさまより。」 漫研の合宿に初参加した15歳の「わたし」は、出発前のバッグの中にメモを見つけて……。テレビもラジオもない漫画漬けの日々、熱愛カップルの復活、思いがけないおしおき、意外な告白、夜更けの甘いあえぎ声……。切なさに胸熱くなるひと夏の物語。著者初の自伝的BL小説。
北海道の大学を卒業し、東京都下の病院で初期研修医となった森永慧介。だが、そこで直面したのは異様な出来事の連鎖だった。歪な診療体制、相次いで発生する老人の不審死、そして二十歳の女性患者の乱心ー。この病院に、いったい何が起こっているのか?医師、看護師が抱える闇を描き出す衝撃のサスペンス!
なぜ日本だけが…?この世界はどうなっているんだ!強烈な自殺衝動によって突然死する「タナトス」が蔓延する二〇三三年の日本。日常に理不尽な死が満ちている未来の見えない日々を18歳の高校生チャンキは生きるー気鋭の映像作家の初の長編小説。
奔放なウィットと想像力の炸裂する、アルゼンチン作家の衝撃作。小説家でマッド・サイエンティストの〈私〉は、文学会議に出席する文豪のクローンを作製しようと企む。しかし小さな手違いから大惨事がーー。奇想天外な表題作のほか「マオとレーニン」というパンク少女たちと街角で出会った〈私〉がスーパーを襲撃するまでを描く「試練」を併録。世界的名声を誇る作家による、渾身の2篇。
「世界は瀕死だが、まだ息絶えちゃいない」。<六・一六>により文明を失ったアメリカ大陸。生き残った者は人と牛を掛け合わせた“牛”を喰って命を繋ぐ。保安官バード・ケイジは、四十頭の馬を強奪したレイン一味を追い、大西部を駆ける。道すがら出逢ったのは運命の女コーラ。凶兆たる蟲の蔓延。荒野に散るのは硬貨より軽い命。小説の面白さ、その全てを装填した新たなる黙示録。
ジョアン・メロヂーヤ。メキシコの農園で人と“牛”の間に誕生した美しき奇跡。自らを慕う人々を率い、彼は蟲に巣食われた者を殺戮しつつ流浪する。そして七年後、ワイオミングの大クレーターに居を構えたジョアンたちに、バード・ケイジを首領とする討伐隊が総攻撃を掛ける。そこへレイン一味も絡み…。ジョアンは家畜か、それとも救世主か。神話の結末はあなた自身が目撃せよ。
その男には2つの顔があった。昼は高齢者に金融商品を売りつける高給取りの証券マン。一転して夜はSMクラブの女王様に跪き、快楽を貪る奴隷。よりハードなプレイを求め、死ぬほどの苦しみを味わった彼が見出したものとはーー芥川賞選考委員の賛否が飛び交った表題作のほか、講師と生徒、奴隷と女王様、公私で立場が逆転する男と女の奇妙な交錯を描いた「トーキョーの調教」収録。
保育園に〈平穏な一日〉なんてありません! 25歳の保育士・美南は、次々と起きる不思議な事件にふりまわされる日々。妻と娘が姿を消したと園児の父親が駆け込んできたり、園内に不審な足跡を見つけたり。解決のヒントは、えっ、絵本のなか!? 謎を解くべく奔走するうち、男手ひとつで園児・旬太を育てる隆平に心惹かれて……。大人も子どもも一緒に大きくなる、恋と謎と成長の物語。
その死は弟子たちにも伏せられていた。立川談志、享年七十五。この不世出の落語家に入門したのは十八歳の春だった。それから四十年近く惚れ抜いた師匠から突然の破門宣告。「てめえなんざクビだ」。全身が震えた。怒りの理由が分らない。振り回され、腹を立て、やがて気づいた。大変だ。壊れてるんだ、師匠はーー。偉大な師匠(おやじ)の光と影を古弟子(せがれ)が虚実皮膜の間に描き尽す傑作長篇小説。
キスをして抱きしめられ、初めて普通の状態になれたあの頃。今の私は年下の彼に、昔の自分を重ねてしまう(「試着室」)。私の性を抑圧し続けてきた、私に対して1ミリも動かなくなった彼の性器に、今、私は復讐をした(「ポラロイド」)。他の男と寝て、気づく。私はただ唯一夫と愛し合いたかった(「献身」)。幸福も不幸も与え、男と女を変え得る愛と結婚の、後先を巡る六つの短篇。