出版社 : 新潮社
長州藩士・高杉晋作。本名・春風。攘夷か開国か。国論二分する幕末に、上海に渡った晋作は、欧米列強に蹂躙される民衆の姿を目の当りにし、「革命」に思い至る。激しい気性ゆえに、脱藩、蟄居、閉門を繰り返しながらも、常に最前線にたち、藩の窮地を救ってきた男は、日本の未来を見据え、ついに幕府に闘いを挑む。己を信じ、激動の時代を一気に駆け抜けた男の二十八年の濃密な生涯を壮大なスケールで描く本格歴史小説。
昭和七年三月、満州国建国。面接約百三十万km2、人口約三千四百万、新京を国都とし、最後の皇帝溥儀を執政に迎えた。国の建設に胸を躍らせる太郎。金銭で請け負った荒仕事をこなす次郎。「憲兵隊の誇り」と称えられ、妻をも得た三郎。さらなる罪を犯し、大陸を流浪する四郎。日本人は新天地にどのような夢を託したのか。産声を上げたばかりの国家の実相、そして熱河侵攻を描く、第三巻。
周囲から「善人長屋」と呼ばれる千七長屋。差配も店子も表向きは堅気のお人好し揃いだが、実は裏稼業を営む悪党だらけ。ある日、「閻魔組」と名乗る三人組によって裏社会の頭衆が次々に襲われ、惨殺される事件が発生する。天誅を気取る「閻魔組」の暗躍は、他人事として見過ごせない。長屋を探る同心の目を潜り、裏稼業の技を尽くした探索は奴らの正体を暴けるか。人情溢れる時代小説。
新兵衛はお店に押し込んだ賊の目を見て凍り付く。故郷の桜の下、幼い友情を誓い合った日の記憶が浮かぶ(「百年桜」)。訳あって家を出た母親を江戸でようやく探し当てた秀治に老母は一両握らせたが…(「初雪」)。部屋住みの悲哀を一身に纏い、継之進は国元を出奔した。ただ一つの使命のために(「山の宿」)。正直者には生きづらい江戸の片隅で、善意と善意がすれ違う人情時代小説傑作五編。
色恋をめぐる狂気は、その女たちを少しずつ蝕み、少しずつ壊していった……。ある女は大阪に引っ越してまで愛人を追いかけ、またある女は親友の婚約者を欲しがる。職人の夫の浮気を疑った妻は夫の作る提灯に火を仕込み、OLは見る間に垢抜けた同僚への嫉妬に狂う……。サスペンス・ミステリーの名手の短編を、単行本未収録作品を加えて精選したベスト・オブ・ベスト第一弾!
足利幕府の時代、平穏を取り戻しつつある京の都。奇怪な歌に予言されるように洛中随一の遊女が殺された。現場には半月も前に死んだはずの女がいたという。腕っぷしに自信ありの乱暴者のくせに幽霊嫌いな検非違使・龍雪がこの怪事に挑むが、謎は次々と立ち上がりー。十年前に捨て去られた恋が招いた悲劇とは。恐ろしくも切ない日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。
どこが優雅?だれがゴージャス?マダムのお茶会、犬のヒモになったオトコ、回春ペットー何でもありのセレブ生活。となりの小金持ちたちの喜悲交々を笑い飛ばす、痛快短編小説集!
猛き男たちよ、中国の暴虐から罪なき民を守り抜け! 人民解放軍による悪魔の所業から逃れ、日本潜伏中のウイグル人亡命団と、事件を追う女性ジャーナリストが襲われた。 証拠隠滅をはかるべく送り込まれた中国の刺客。 それを黙認する弱腰の日本政府と警察。 絶体絶命の亡命団に、謎の男が救いの手をさしのべた。 頭脳明晰、身体屈強。ロシア武術を極め、情報機関にも裏社会にも怖れられる存在ーー。 こいつは一体何者なのか? その手がかりは、謎の言葉「カーガー」 最注目作家の最強ヒーロー誕生!
逃げたい、逃げなきゃ。でも、どこへ? 野口は、この村いちばんのヤリマンだ。けれど僕は、野口とセックスしたことがないーー 大型スーパーと国道沿いのラブホが夜を照らす小さな町で、息苦しさを抱えて暮らす高校生と大人たち。もはや人生詰んでるけど、この外でならば、なんとかなる、かも、しれない。あきらめと若さが交差する、疾走感に満ちたデビュー作。
どうしたら、もっとふつうに彼を愛せるの? 誰かわたしを止めて、お願いーー 美容師として念願の自分の店をもち、専業主夫の夫に支えられ、しあわせな結婚生活を送っていたはずなのに。気づくと愛する夫を傷つけている舞。ある晩、夫を殴打し部屋を飛び出した舞は、帰らぬ彼をひとり待ち続けている希子と出会う。白いマンションのなかで渦巻く孤独、次第にもつれる男女の愛と渇き。息をもつかせぬ渾身長篇。
やわらかな記憶の連なりは、呼び起こすたびにその色合いを変える。東北へのバイク旅行。美術準備室でのできごと。そしてジミヘンのギター。二〇〇一年の秋からいくつかの蛇行を経て二〇一一年の春までをつなぐ、頼りなくもかけがえのない、やわらかな記憶の連なりーー 。人と世界へのあたたかいまなざしと、緻密で大胆な語りが融合した、記憶と時間をめぐる傑作小説。第一五三回芥川賞候補作。
1990年2月11日。光よりも速く世界を移動した、「奇跡」のすべて。誤審と解放。行列と暴力。タイソンとマンデラ。意志と衝動。ブラック企業とドラクエ。野性と理性。42 と1。みんながんばれ。無理せずがんばれ。「2とZ」と「パレード」そして「MとΣ」。小説の可能性を拡張する、力と技、心意気ーー。新しくて、尖ってて、でも不思議と懐かしい。突然現れた才能による第一五三回芥川賞候補作。
川端康成文学賞受賞記念の短篇集。「沖縄の私小説を書いてきた」作家の新境地。沖縄に生きて、その風土を呼吸しながら創作を続けてきた八十九歳の作家の、初の私小説。時の移ろいを生き抜く老年の日常。妻の入院をきっかけに、出会ってきた人々の面影とともに、遠い記憶が鮮明に蘇り、いまを生きる私を、強く激しく揺り動かすーー川端康成文学賞を受賞した表題作と新作『病棟の窓』を収録する、最新作品集。
〈絶海の孤島で暮らす少年たち〉物語の元祖にして最高傑作! 熟読してきたシーナ父娘による新訳決定版刊行。嵐の夜、少年達だけを乗せた船はニュージーランドの港から流されて無人島へと辿り着く。航海経験のある仏国人ブリアン、冷静な米国人ゴードン、優雅で誇り高い英国人ドニファンなど十五人の少年はいかに団結し、仲違いし、生き抜いていくのか? この無類の冒険譚を愛読し、モデルの島まで航海した椎名誠と渡辺葉による父娘共訳!
「完璧なヴィクトリアンメイド募集」-派遣家政婦・愛川鈴佳に舞い込んだ風変りな依頼は、老婦人の生涯の夢のお手伝い。旭川近郊の美しい町に十九世紀英国を再現したお屋敷で、鈴佳は「メイドのアイリーン」になった。気難しい奥様の注文に、執事のユーリや料理人ミセス・ウィスタリア、農家のスミス夫人たちと応えるうち、新人メイドは奥様の秘密に触れ…。
休戦延長なしー。魔女家名代として宰相会議に臨んだミレディアは、破滅に突き進む帝国の選択に心を痛めつつも、「家族」となったアリルのために為すべきことを考えていた。一方、アリルはもう一人の皇帝候補ラムザとデュアメル学院に通い、帝位継承者として起つ決意を固める。…明かされる少女の罪、そして少年の仮面の下に隠された驚くべき真実。世界の深淵を見据える第2巻。
電波さえあれば真相はつきとめられる! “妻が自分の夢を応援してくれません。”小説家志望男による身勝手な投稿が悩める忌女(=既婚女性)たちの掲示板「忌女板小町」で大炎上。さらに、ある殺人事件との関連が疑われる。引きこもりの緑子、HN圏内ちゃんが挑んだネットとリアルが交錯する連続殺人ーーその謎は、超肉食女子刑事・小鞠&ドS刑事・黒井マヤとの推理対決の果てに、人知れず葬られていた悲劇につながった。