出版社 : 日経BP日本経済新聞出版本部
今から1400年前、女性天皇が初めて即位した。聖徳太子を摂政に、十七条の憲法を制定、豪族たちの対立を調停して国をまとめ上げ、大国・中国とは、対等の国として相対した。この国の精神のなりたちに迫る歴史小説。
時は平安時代前期。帝の孫以降の子孫は400人に及び、京は無位無官の「王」であふれていた。桓武帝の曾孫である23歳の高望王が太政官に窮乏を訴えると、摂政右大臣が「弓で戦う衛府の武官に大刀で勝てば位官を与える」と約束する。勝負の日、修練を積んだ高望王は並み居る武官を次々に倒すが、大刀ではじいた矢が見物していた今上帝を傷つけてしまう。謀反の罪に問われた高望王は臣籍に降ろされ、平高望となって上総国に流される。長い労役のあと、朝廷奸計を知った高望は…。第13回日経小説大賞受賞。
「二と二が合わさって四になるんじゃない、時には五にもゼロにもなるんだ」-。福沢諭吉の娘婿となるが、幾つもの挫折を経て電力事業に目覚め、木曾川に東洋一のダムを築いた稀代のイノベーター福沢桃介の機略縦横の活躍を描く。
デビュー3年で主に戦国武将が主人公の11作を刊行し、歴史小説に新風を吹き込む赤神諒氏が、伊集院静氏の休載期間中に日本経済新聞朝刊の小説欄に急遽抜擢され連載した本作は、赤神氏初の現代小説だ。 5カ月後に幕を開ける第二次世界大戦での枢軸国対連合国の戦いの構図を先取りしたスペイン内戦(1936~39年)が舞台。成立したばかりの共和国政府に対する軍部の叛乱を阻止しようと立ち上がった市民兵とともに銃を取った元米国軍人リックを主人公に、圧倒的に劣勢に立ちながら、徒手空拳で立ち上がった市民ひとりひとりをクローズアップして描くことで、ファシズムとスターリニズムから自由と民主主義を守る戦いと言われるこの「戦争」が、本当は何のための戦いだったのか、を浮き彫りにする。格差や分断が社会を揺るがす現在の私たちをも照射する作品に仕上がっている。 この重厚な物語にエンタテイメント性を加えるのが、主人公リックの設定である。著者が映画史上不朽の名作である「カサブランカ」の前日譚として着想し、映画でハンフリー・ボガード扮するリック・ブレインが本作の主人公という趣向。映画ではイングリッド・バーグマン扮するイルザ・ラントやほかの登場人物たちも登場させて、名ゼリフぞろいの映画へのオマージュとして編み出された創作だ。戦渦で恋する男女の洒落た会話にも磨きがかかり、キザなセリフ、スパイスのきいた皮肉も読みどころである。 加えて、新聞では戦渦の恋が終わるところで連載の幕を閉じたが、連載後にリックのその後が気になるという声が新聞の読者から多数寄せられた。単行本化にあたり文字通り「カサブランカ」の前日譚として、映画の設定の直前まで時間軸を延ばして大幅に加筆、新聞で読んでいた読者もさらに満足感を得られる内容になっている。 第1部 第1章 二つのスペイン 第2章 ヨーロッパの嵐 第3章 マドリードの鐘 第4章 カニャーダの花 第5章 ラス・ロサスの虹 第2部 第6章 マドリードの雨 第7章 グアダラマの雪 第8章 バルセロナの月 第9章 ブルネテの風 第10章 マドリードの夜 最終章 パリの空
時は鎌倉末期。討幕の動きが発覚し後醍醐天皇は隠岐に流されるが、幕政への不満から、治世の主体を朝廷に取り返すという近臣たちの討幕運動は幕府にも広がっていく。重職にあった足利高氏(尊氏)が、帝方の楠木正成に呼応するように寝返り、鎌倉幕府は滅亡。後醍醐帝が京に戻り、建武の新政がはじまる。しかし、武家も公家も私利私欲がうごめく腐敗した政治は変わらず、帝の志を実現しようと心をひとつにする尊氏と正成の運命は、陰謀に翻弄され、引き裂かれていく。第12回日経小説大賞受賞作。
聖母マリアの名を冠した医院を経営し、慈善活動でも注目される美容外科医の深淵貴夜には、封印した過去があった。最愛の人に裏切られ、救いの手を差し伸べる人には喰いものにされ、絶望の淵にあったとき、「ずっとあんたを想ってた」と、彼女の過去を知る男が現れる。暗闇から這い上がろうと愛を葬るとき、彼女の中で善と悪が反転するー世間からこぼれ落ちていかざるを得ない人たちの生を、誰もが陥るかもしれない悪を通して描き出す。死の意味とは?
十年後の夏、またここに来ようね。この南紀の風のなかを、一緒に走ってみたいー。若くして命を落とした親友の夫と、その息子と、大学時代に親友と走った紀伊半島のツーリングに出かけた。彼女をしのぶため、ひとり親で育った息子が母を新たに知るため。コロナ禍で何もかも変わった。変わらざるをえなかった。リセットするにも、調子を取り戻すにも、記憶の底に埋めてしまっていた彼女との約束を、今こそ果たしたい。みーんな元気の在庫がなくなった。でも、だから…感染予防は万全に、四泊五日の物語。
菅原道真五世の孫の官人、菅原孝標の娘・更級は、石山寺の僧都殺しのかどで捕らえられた父の無実を、入道摂政・藤原道長に直訴する。道長は孝標の罪をぬぐいたければ、源氏「五十五帖」を見つけてこいと命じる。ともに命を受けたのが女房で、紫式部の娘・賢子。田舎で父が与える物語に耽溺して育った更級と、都育ちで忙しい母にかまってもらえなかった賢子。紫式部の在りし日の縁をたずねる旅で、二人を待っていた意外な人物とは…。
暴君であると同時に、偉大な国家建設者。実在した天皇とされる21代雄略の御代は、形のないものが、形あるものに変わった時代。私たち日本人の心性は、このころ始まった。『古事記』現代語訳から6年、待望の小説が紡がれた。
美麗な容貌と色好みで知られる在原業平の一代記。千年前から読み継がれる歌物語の沃野に分け入り、小説に紡ぐことで、日本の美の源流が立ち現れた。これは文学史上の事件である!