出版社 : 早川書房
2015年11月パリ。同時多発テロ直後の街を、ローマ在住の作家が訪れた。国連の気候変動会議COP21の取材のためだ。もう一つ、理由があった。不妊治療で妻とすれ違い、家を離れたかったのだ。それからも作家は、執筆を口実に、トリエステや世界各地をさまよう。そこで出会ったのは、親権争い中の物理学者、自爆テロ事件を追うフリージャーナリスト、研究の末に心の病に冒された宇宙物理学者。個人的で切実な問題と、つぎつぎと起こる世界的危機に引き裂かれながら、作家は対話と自問を重ねる。そして日本に向かい、広島・長崎で彼がたどり着いた答えとは。『コロナの時代の僕ら』の著者が、困難を生きる姿を赤裸々に描き、国際的に高く評価される傑作長篇小説。35カ国で刊行決定。
非情な運命を乗り越えてきた転生令嬢カレン。新皇帝ライナルトとの挙式を控えたある日、異形の少女によばれて辿り着いたのは、それまで過ごした世界とは似て非なる場所。転生人としてのカレンが存在しなかったifの平行世界だったー大切な人たちのいる元の世界へ戻るため、カレンの新たな冒険が始まる!書籍特典として書き下ろし短篇×2本収録。
“魔女”が死んだ。都市から離れた村で、外界と隔絶していた魔女。鉄格子のある家にこもり、誰も本当の名を知らない。村人から恐れられつつ、秘かに頼られてもいた。困窮する女たちの悩みを聞き、様々な薬をあたえ、堕胎の手助けをしていたのだ。莫大な遺産があるという噂もあった。魔女は殺された。暴力が吹き荒れるこの村の誰かに。魔女の家の前にいた男たちを目撃したジェセニア、その徒弟で麻薬常習者のルイスミとその悪友ブランド、売春宿を営むチャベラとその夫ムンラ、継父の性虐待から逃れてきた少女ノルマ…。村の人びとの言葉が導く、あまりに悲痛な真実とはー。荒々しくも詩的な言葉で暴力の根源に迫り、世界の文学界に強烈な衝撃をあたえたメキシコの新鋭の傑作。ブッカー国際賞最終候補、全米図書賞翻訳文学部門候補、文学ジャーナリスト賞(メキシコ)受賞、アンナ・ゼーガース賞(ドイツ)受賞、国際文学賞(ドイツ)受賞。
1936年、父子家庭で育った滝口鞠は、名門女子専門学校を不合格になったのを機に、父が綿花貿易を営む仏領インドシナのハノイへと渡る。猛勉強の末、外務書記生・植田勇吉の助力もあってハノイ大学への入学を果たした鞠は、“新天地への冒険”という夢を胸に地理学を学ぶことに。一方、父から見合いを勧められた南亜洋行の商社マン・紺野永介は、どこか不穏な雰囲気を纏い、仏印社会で暗躍していた。そんな矢先、植田が国境地域で敵兵に拉致されたとの報が届く。日本軍の仏印進駐が迫るなか、植民地主義の非情な現実が、鞠を翻弄していくー。第13回アガサ・クリスティー賞大賞受賞作。
宇宙連邦創成期に発見された十五兆標準太陽質量の超巨大ブラックホール“ダーク・エイジ”。それが人工物であるらしいことをつきとめた連邦の科学者たちは、地平面探査基地“ホライズン・スケープ”を建設し特異点の調査を開始する。分断された右脳に伝説の祖神を宿すヒルギス人の狙撃手・シンイーは、過去・現在・未来を見通す力を持つパメラ人の少年・イオとともに、別の宇宙へと続く“門”の探索を続けている。時空のゆがみにより周囲の時間からそれぞれに取り残されていく二人を襲撃するものの正体とは?
ヨーロッパ大陸での大冒険から帰還したメアリ・ジキルら“モンスター娘”こと“アテナ・クラブ”の令嬢たち。ロンドンで彼女たちを待ち受けていたのは、メアリの雇い主である探偵シャーロック・ホームズと“アテナ・クラブ”のメイドのアリスが忽然と姿を消したという知らせだった。メアリたちはさっそくふたりの行方を捜すことに。そのころホームズはアリスとともに宿敵モリアーティに囚われていた。モリアーティの一味はホームズを生贅にして大地の力を操る古代エジプトの女王を復活させ、大英帝国の征服を企てていたのだ…!古典名作をもとにしたSFミステリ三部作完結篇。
母親と幼い弟、義父と暮らすビリーは、アメフトの天才選手として活躍をしていた。ある日、ビリーは義父と喧嘩をし、彼を殴り飛ばしてしまう。翌日、家に戻ったビリーが見つけたのは義父の死体だった。一方、新任コーチのトレントは、ビリーが義父を殴り飛ばす瞬間を見ていた。彼が殺人犯となればチームはリーグ優勝できない。トレントはビリーを匿うことを決意するが、警察は事件の犯人がビリーであることを疑っていた…。差別、貧困、暴力、犯罪といった、社会の暗い側面を鋭く描くMWA賞最優秀新人賞受賞作。
咸臨丸の渡米目的は、外交使節団の護衛ではなかった。福澤諭吉の生涯を、現代の知の巨人・荒俣宏が膨大な資料を渉猟して著した、評伝小説の決定版。近代日本の父、福澤諭吉最後の「自伝」。
『修身要領』普及のため、慶應義塾の廃塾さえ決心した。近代日本の父・福澤諭吉の生涯を、荒俣宏が膨大な資料を渉猟して著した、畢生の大作一四〇〇枚。現代の知の巨人、荒俣宏最後の小説。
ルーシー・バートンと元夫のウィリアムは、離婚してからも穏やかな付き合いを続けていた。ある日、亡き母の秘密を知って動揺するウィリアムに助けを求められ、ふたりは短い旅に出る。家族という、時に厄介で時にいとおしい存在は何なのか。結婚とは、人を知るとは何なのか。静かな感慨に満ちたブッカー賞最終候補作。
時は、今から6500万年ほど前、白亜紀末期のある日。一頭のティラノサウルス・レックスの歯にはさまった肉片を、蟻たちがたまたま掃除してあげたことから歴史は大きく動き始めた。恐竜と蟻という二つの種属は、お互いの長所ー恐竜は柔軟な思考力、蟻は精確な技術力を活用し、それぞれの欠点を補完し合い、新たな文明を築くに至った。文字の活用、蒸気機関時代を経て、現代人類社会と変わらぬ高度な文明を発達させ、地球を支配していた。だが、永遠に続くと思われた、恐竜と蟻の二大文明は、歴史の必然か、深刻な対立に陥り…。代表作『三体』がドラマを始め複数のメディアで映像化され、映画「流転の地球」が世界で大ヒットを記録。世界のエンタメ界で注目を集める劉慈欣が、二つの種属の存亡を賭けた戦いを、壮大なスケールで描いた初期長篇。
ドラッグの依存症から抜け出したマロリー・クインは、新たな生活を始めるためにニュージャージー州郊外の町スプリング・ブルックのマクスウェル夫妻の元でベビーシッターとして5歳の男の子テディの面倒を見ることになった。離れを自分の部屋として与えられたマロリーは、テディの世話をしながら、おだやかな毎日を暮らすはずだった。だが、彼女はある日、テディが“奇妙な絵”をスケッチブックに描いていることに気がつく。森の中で、女の死体を引きずっている男の絵だ。それは、かつてこの地で起こった殺人事件の場面を描いたと思しきものだ。画家であった被害者の女性は、マロリーが住む部屋をアトリエとして使用していたというが…。そして、テディの絵はますます不気さを増して、5歳児の能力をはるかに超えた、リアルなスケッチとなっていく。一体テディの身に何が起こっているのか?スケッチが示す事件の真相とは?
慶長二十年、茶人の頂点にたつ男が自裁して果てた。徳川家康の命を受け、毅然と死出についた男は、古田織部の名で呼ばれていた。十八年後、織部末期の茶会記が見つかり、末尾に「遊びをせんとや」の文字が。織部はなぜ死なねばならなかったのか、師と仰ぐ毛利秀元は、その真相究明に乗り出す。驚くべき人物が浮上する中、秀元自身には、毛利本家との間で武人の誇りをかけた戦いが始まろうとしていたー人が生きる意味を問う渾身の歴史小説。
母なる星地球が生物の住めない惑星と化してのち幾星霜。人類と共に地球を離れた犬猫は、新しい人類イヌビト(犬人)、ネコビト(猫人)へと進化し、「古き人類」ヒトとともに星の海で暮らしていた。月に住むネコビトの編集者キャサリンは、新聞社の記念事業として興された出版社で“人類すべてへの贈り物になるような本”を作ることになり、宇宙で語り伝えられるクリスマスの伝説を集めてゆく。はるか遠い星で開拓民の少女に“神様”が見せた奇跡を描く「守護天使」、歌や映画、ドラマを載せて銀河を駆ける宇宙帆船の誕生秘話「魔法の船」、時代を遡り、過去の地球での異星人と少女の交流を描く「ある魔女の物語」…。人類への愛に満ちた珠玉の連作短篇集。
1959年ニューヨーク。ハーレムにある中古家具店で働くアフリカ系アメリカ人のレイ・カーニー。近頃、店にはガラの悪い男たちが出入りしていた。数々の罪を犯した父親とはちがい、カーニーはまっとうな人生を築くために誠実に働いた。愛する妻と娘もいる。だが、食べていくのは容易じゃない。時には、従弟のフレディがもちこむ盗品も売るしかなかった。ある日、フレディたちの起こした強盗事件にカーニーは巻き込まれる。そうしてギャングと悪徳警官が、カーニーに目を留めたのだった。妻子と自分を守るため、カーニーはならず者との裏取引を重ねていく。結局、自分も悪党なのだろうか?そのときフレディの危機を知らされ、カーニーが選んだのはー。人種、貧富、性差の問題が渦巻く街を舞台に、『地下鉄道』著者が放つエンタメ長篇!ニューヨーク・タイムズ・ベストセラー、全米批評家協会賞(小説部門)最終候補。
惑星ウェレルとその植民地惑星イェイオーウェイ。激しい戦争ののち、イェイオーウェイは高度な文明を有する宇宙連合エクーメンの手を借りて新しい歴史を歩みつつある。老女ヨスは、裏切り者となったかつての英雄アバルカムとの邂逅に救いを見いだす(「裏切り」)。エクーメンへの加盟を目指すウェレルの小国を訪れた使節ソリーは、祭りの日にさらわれ、この地の真実をかいま見る(「赦しの日」)。SF界の女王が圧倒的想像力で人種、性、身分制度に新たな問いを投げかける“ハイニッシュ”世界の四つの物語。ローカス賞受賞作。
ストックホルムで女性の惨殺死体が発見された。容疑者である服役中の交際相手カリムは、事件当夜、仮釈放の身だった。彼の靴から被害者の血液が検出され、警察上層部はカリムの犯行と断定する。だが警部のヴァネッサだけは、狡猾なカリムが血のついた靴のまま刑務所に戻ったことに疑問を抱く。やがてカリムの起訴が間近となった頃、「彼は殺していない」と訴える女性が現れ、事件は単純な怨恨殺人とは全く違う様相を見せはじめ…。全世界のミステリファンを熱狂させた『ミレニアム』の系譜を継ぐ警察小説登場。
私の母は掃除婦をしながら四人の子どもを育て、障がいを持つ夫を支えた。厳しくも誇り高い母からは、勉学に励み、正しく生きることを強要されてきた。だが私は、貧しさや不条理におしつぶされ、母の厳格さにも息苦しさを覚え、鬱積した心の闇から、次第に暴力的な衝動に駆られていくー。湖畔の町で10代から20代を過ごした少女、ガイアの内面をつぶさに描き、カンピエッロ賞を受賞、ストレーガ賞最終候補となった傑作長篇、待望の邦訳。
一九四四年、ヒトラーによるナチ体制下のドイツ。密告により父を処刑され、居場所をなくしていた少年ヴェルナーは、エーデルヴァイス海賊団を名乗るエルフリーデとレオンハルトに出会う。彼らは、愛国心を煽り自由を奪う体制に反抗し、ヒトラー・ユーゲントにたびたび戦いを挑んでいた少年少女だった。ヴェルナーらはやがて、市内に敷設されたレールに不審を抱き、線路を辿る。その果てで「究極の悪」を目撃した彼らのとった行動とは。差別や分断が渦巻く世界での生き方を問う、歴史青春小説。
セイディはゲーム作りを学んでいるMITの学生。才能はあるものの、なかなか周囲からは理解されない。ボストンでのある寒い冬、セイディは幼馴染でハーヴァード大学に通っているサムに再会する。二人は昔、ロサンゼルスの病院の待合室で一緒に“スーパーマリオブラザーズ”をプレイした仲だった。セイディに、ゲーム制作の天賦の才を見出したサムは、一緒にゲームを作ろうと彼女を誘う。苦労の末、二人ではじめて完成させたゲーム“イチゴ”は瞬く間に成功を収め、二人は一躍ゲーム界の寵児となる。だが、自分の作りたいゲームを制作したいセイディと、商業面でのプロモーションに長けたサムは、次第に溝を深め、すれ違いを重ねていき、二人の仲は雲行きが怪しくなっていく。そんな中、セイディとサムをある悲劇が襲うが…。ゲーム制作を通してつながった男女の30年近くにわたる友情の物語。英語圏100万部突破。