出版社 : 早川書房
探偵小説『宿命城殺人事件』の列帖装本と、善知鳥良一の手記とおぼしき折本には、50年の時空を隔てた世界をつなぐ昭和13年の不可解な出来事が綴られていた…。“この世には探偵小説でしか語れない真実というものがあるのも、また真実であるんだぜ”-人間消失、列車消失、三重密室、ダイイング・メッセージ、暗号、見立て殺人、仮面の男…本格探偵小説のあらゆるガジェットを投入した第2回本格ミステリ大賞受賞作。第55回日本推理作家協会賞受賞。
ヴィクトリアズ・シークレットのキャンペーン・モデルに抜擢された美女ジェイニー・ウィルコックス。彼女の望みは、NYのセレブ界で名声を勝ち取ること。社交界の華ミミ・キルロイからパーティの招待状を受け取った彼女は、とうとう成功の階段を上りはじめた。ミミの夫で大金持ちのジョージ、ジェイニーにぞっこんの映画会社社長セルデン、卑劣な映画プロデューサーのカムストック、そして若く美しいポロ選手ジジ…男たちを、手玉にとろうとするジェイニーの思惑はどう動くのか?!ドラマ『SEX AND THE CITY』の原作者キャンディス・ブシュネルによる待望の長篇ロマンス小説。
恋心を抱いていたジジと親友ミミが男女の関係になっていることを知り、衝撃を受けるジェイニー。それでもジジがいつか見せた笑顔の意味を信じるが…。また、ジェイニーは美貌だけがもてはやされることにうんざりし、映画プロデュースの仕事をしたいと思いはじめていた。そんなジェイニーの野望にあきれる夫セルデン。ふたりの関係は次第に険悪になっていく。そんな折、ミミとジェイニーはパリ旅行にいくことになった。パリはジェイニーにとって、モデルを始めた出発点。だが、そこでの思い出は決していいものばかりではなかった。雨の降るヴァンドーム広場で、ジェイニーは「あのとき」のことを思い出す…。
悪名高いカムストックとの過去の関係と脚本執筆料をめぐる金銭スキャンダルをマスコミに暴かれたジェイニー。セレブ界からはじきだされ、周囲の冷たい反応に苦しめられる。そんな妻を前に、セルデンは大企業のCEOとして、妻を取るか仕事を取るかという究極の選択を強いられる。売春婦というレッテルを貼られたジェイニーに絶望しながらも、まだ彼女を愛している彼が取った行動とは?そして過去と決別し、前に進む決意に満ちたジェイニーに力を与えたのは、やはりそのたぐいまれなる美貌だった!まやかしのようなNYセレブ界を描きながらも、現代女性の本音を大胆に追求したC・ブシュネル長篇小説、いよいよ完結。
昔々のこと。世界が古くなったので、えらい人たちは獏を創って、新しい世界を夢見てもらうことにしました。みんなは安心して獏のなかで眠りにつきました。でも、やがて獏は不安に囚われてしまったのです。自分のなかの人たちは実は死んでいるのではないか、と…まあ、そんなこんなで私は、戦いつづけているわけだ。商店街で敵を待ち伏せしたり、ヒト型戦闘機械に乗り込んだり、西瓜太郎の指揮で悪の王国に奇襲をかけたり。でも肝心の私とは誰か、まったく思い出せないのだけれどね、あの夕陽のきれいな街の風景以外はー9つの短篇と10の掌篇が織りなす、不条理で情けなく、けれどヒトに優しい戦争の話。
「ひい、ふう、みい。ひとりは寝床をなくし、ひとりは片目をなくし、最後のひとりは頭をなくす」疫病が蔓延し、人影もまばらになった都に、奇妙な歌が流行る。その歌に符合するように、都の代表的な旧家で惨劇が続いた。豪商のメイが深夜階段から転落して死に、郡公を称するイーも何者かに殺害される。都の留守を預かるディー刑事は人心を不安に陥れる事件の捜査を開始した。だが、食糧不足、治安の悪化、天候の不順に悩まされ、三人の副官たちも手一杯のありさま。民衆暴動の危機にも直面しつつ、はたして事件を解決に導くことが出来るのか。
偵察機の墜落により、おれは惑星パラーザの海に着水した。だが、救援要請は徒労に終わる。陸地を持たず、夜が訪れない表面積8億平方キロの海原で、自らの位置を特定する術はなかったのだー通信機の対話だけを頼りに、無人の海を生き抜いた男の生涯「漂った男」、ホット・ジュピターに暮らす特異な知性体の生態を描き、SFマガジン読者賞を受賞した表題作ほか、環境と主体の相克を描破した4篇を収録。著者初の作品集。
おれは売れない作家ーアルバイトで糊口を凌ぐ毎日や、妻との冷え切った関係にはいいかげんうんざりだった。担当編集者の伏見裕子ーおれがひそかに想いを寄せる人妻。意外なことに向こうからも誘いをかけてきた。彼女の夫が死ねば、彼女はおれだけのものになる。運命の女の言葉は、おれの耳にはこう聞こえた…“夫を殺せ”。欲望と犯罪に溺れる男女を、鬼才がリビドーを注ぎ込んで描いた純愛小説。
西暦2032年。未曽有の地殻変動によって、南西諸島に沈没の危機が迫っていた。地球科学者・大森拓哉の警告により政府特別機関が設立されるが、その目的は領海=海底資源喪失を見越しての既得権確保にあった。政府の対応に憤る植物生態学者・南方洋司、地質学者・菅原秀明ら6人の科学者は、独自の「ISEIC理論」によって地殻変動を食い止めるべく、極秘プロジェクトを開始する。いっぽう共感覚をもつ青年・伊波岳志は、南方らに同行して訪れた与那国島で、巫女的存在であるムヌチの後間柚と出会う。「琉球の根を掘り起こせ」なる神の声を聞いたという彼女は、大地の怒りを鎮めるため、“14番目の御嶽”を探してくれるよう岳志に依頼するのだが…日本SF史上最高の科学小説、ついに刊行。
与那国島の伊波岳志は、海中の遺跡ポイントが“14番目の御獄”であることを突き止めた。時を同じくして、水深6000メートルの南西諸島海溝では、深海調査船“しんかいFD”のパイロット・武田洋平が巨大な人工構造物を発見していた。その符合を検証する南方洋司ら科学者の目的は、地殻変動を食い止める唯一の鍵“SEIC(圏間基層情報雲)理論”の実践にあった。しかし、事態はすでに切迫していた。遺跡ポイントへの祈りを通して地中世界を垣間見た後間柚は、「大地の炎が琉球を焼き尽くす」という神の予言を聞く。いっぽう、海底資源を狙う中国の干渉が激化するなか、ついに海底火山が噴火、破滅へのカウントダウンが開始される…構想5年、執筆3年、2000枚の超大作、堂々完結。
これまで数々の難事件を解決してきた元新聞記者にして地元の名士クィラランと不思議な推理力を持つ飼い猫のココ。彼らの知られざる日常や、事件の裏エピソードを知りたくはありませんか?本書ではクィラランがつけている日記の一部をご紹介し、ココとヤムヤムの秘密や、登場猫紹介、ためになるココの格言など、クィラランの猫たちに対する愛情に迫ります。豪華イラスト入り、全22篇収録のシリーズ番外短篇集をどうぞ。
その朝、新聞を開いたクロゼットの住人は、セント・エリザベスの校長ロスコウの死亡記事に仰天した。昨日は元気だったのに…ところが当の本人はピンピンしていた!不可解な事件は学校の生徒のいたずらと判明するが、その直後にロスコウが急死し、事態はにわかにきな臭くー明敏なるトラ猫ミセス・マーフィの鼻は、これが事件の幕開けにすぎないと嗅ぎわけていた。動物パワー全開の名推理が事件の謎を解明するのか。
恋は不思議なもの。ある時は人生に歓びを与え、ある時は苦難をもたらす…。年老いた大富豪ラファティの依頼は、ごく簡単なものだった。甘やかされて育った一人娘のリーバが、横領の罪で服役していた刑務所から出所するのを迎えに行き、自宅へ送り届けてほしいという。30歳を超えているのに常識に欠けるわがまま娘のお守り役だが、ひどく楽な仕事に思えた。出所したリーバはキンジーには気を許し、なにかと制限の多い仮釈放中の生活で友人づきあいを求めてくる。だが、彼女の元の雇い主ベックがマネーローンダリングに手を染めており、彼と愛人関係にあったリーバがそこに足を突っ込んでいたことが判明し、楽な仕事は吹っ飛んだ。ベックを摘発したいFBIや国税庁の合同チームがリーバの証言を求めて接近してくる。チームに参加しているのが、旧知の市警チーニー警部補だったことから、キンジー自身の身にも予想外の出来事が!カリフォルニアの女探偵が、ひさびさの恋に燃えつつ事件に挑む、人気シリーズ最新作。
突如地球を襲った大災害!途方もない嵐が世界各地で発生、熱帯地方では大雪が降り、津波による死者は数十万人におよんだ。原因は火星から地球へと伸びる力場チューブだった。火星へと飛来した謎の物体が、火星から地球の大気を盗んでいるらしい。この未曾有の危機に、一人の男が立ち上がった。男の名はカーター・リー-世界的に名高い冒険家だ。プロペラ機による両極間無着陸飛行の途上、南極でこの恐ろしい事件に遭遇した彼は、愛機フェニックス号を駆って大竜巻-力場チューブのなかに飛びこむと、一路火星へと向かったが…表題作「火星ノンストップ」をはじめ、パラレル・ワールドの概念を世界で最初に提示した傑作「時の脇道」、待望の野田昌宏訳による「シャンブロウ」、凍てついた大地にアンモニアの吹雪が吹きすさび、空にナトリウムの爆発がひらめく木星を舞台にした「わが名はジョー」など、全7篇を収録。SF作家としてまた「と学会」会長として知られる編者が、センス・オブ・ワンダーに満ちた珠玉の名作を厳選したテーマ別SFアンソロジー決定版。
アーヴの起源を語る「創世」をはじめ、平面宇宙航法開発に絡むエピソード「蒐集」、スポール幼少時の伝説「君臨」、ソバーシュの地上世界探索行「夜想」、ラフィール生誕にまつわる秘話「誕生」、ジントの人生を大きく変える原因となった「接触」ほか、サムソンの食へのこだわりや、ジントの修技館時代の思い出など、本篇ではくわしく語られることのなかった星の眷族たちの逸話を収録。書き下ろし「原罪」をふくむ全12篇。
かつての皿洗いの少年ガリオンは今や正統なリヴァ王の後継者として“珠”に認められ、西の諸王国に君臨することになった。王女セ・ネドラとも婚約し、人々に祝福されていたかれだが、ある夜、人知れず邪神が統べる東の国々へと旅立つ。それは、“予言”に定められた対決に挑むためであった。かれの身を案じるセ・ネドラが西の諸王国の連合軍を指揮し、戦争が始まった。神々をも巻きこんで、ふたつの運命がついに激突する。
劇的な出会いを果たしたハリエットとピーター卿はようやく結婚にこぎつけた。記者やうるさい親族を遠ざけて、新婦の故郷近くへハネムーンにでかけたものの、滞在先の屋敷には鍵が掛かり、出迎えるはずの屋敷の主人の姿は見あたらない。やがて、主人が死体で見つかると、甘く楽しいはずの蜜月の旅は一転、犯人捜しの様相を呈し…本格ミステリ黄金時代を築き、後世の探偵小説に絶大なる影響を与えた著者の代表作。
八月の熱気の中、女刑事が自動車に乗り込んだ瞬間、爆炎があがったー刑事だった妹が、非業の死を遂げた。上院の調査監視分科委員会で働く兄のベンジャミンは、真相を探るために帰郷する。だが分科委員会から受けた密命を遂行せねばならず、思うように真相究明はならない。やがて謎に満ちた妹の私生活が徐々にあきらかになるが…。サスペンスの巨匠の醍醐味を詰め込んだ、アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。
ヴィクトリア朝ロンドン。主人、鷲見新平の旅行中、留守を預かる藤十郎は金欠で下宿を追い出され途方に暮れていた。トラファルガー広場でため息をつくこと十三回。ところが、そのため息が原因で、赤眼鏡の公爵に連れられて、報酬と引き換えに“十二人の道化クラブ”で起きた怪事件の調査を引き受ける事に。クラブの奇妙な風習や魔女伝説に隠された真実とは?古き良き探偵小説の香り息づく本格ミステリ。