小説むすび | 出版社 : 早川書房

出版社 : 早川書房

特別任務特別任務

“完璧な逮捕劇ね”-FBI捜査官アナ・グレイはそう思った。たまたま出くわした銀行強盗を、たったひとりで難なく逮捕してしまったのだから。これで念願の昇進も確実のはずだ。しかし、性差別主義者の上司は、昇進のためのさらなる条件として、往年の映画女優ジェイン・メイソンが、治療を受けていた医師にドラッグ中毒にさせられたと訴えている件の調査をアナに命じた。自らのキャリアをかけた特別任務-だが、疑惑の医師の家で働いていた女性が、幼い頃に別れたために全く記憶にない父の実の姪であることが判明し、アナの心は微妙に揺れ動く。しかも、その女性は数日前にハイウェイで謎の死をとげていたのだ。国民的大女優ジェインを取り巻く虚飾のヴェールが剥がれおちるとき、アナ自身の封印された幼年時の記憶までもが、はからずも明らかになる…。混沌の大都市、ロサンジェルスを舞台に女性FBI捜査官アナの活躍を描き、S・トゥロー、R・B・パーカー、J・エルロイら実力作家たちに手放しで絶賛された、エイプリル・スミスのデビュー作。

密閉病室密閉病室

クイン・クリアリーは医師になりたかった。しかし、家が裕福ではない彼女にとって夢がかなう唯一の道は、イングラム医科大学に合格することだった。イングラムは製薬会社関連の財団が設立した大学で、全米から選ばれた優秀な学生が、無料で教育を受けることができた。補欠ですべりこんだクインは、有頂天で新生活に飛びこんでいく。だが、彼女は奇妙なことに気づきはじめた。クラスメイトたちが、医学倫理を受け持つオールストン教授の理論とまったく同じ-将来、限りある医療資源を分配するのに、その人間の社会的価値によって差をつけるべきだという-考え方をするようになってきたのだ。正義感の強いクインは反発するが、彼女と同意見だったボーイフレンドのティムまで、オールストンの思考様式に染まりはじめた。クイン以外に、その考え方に疑問を覚える者がひとりもいないのはなぜか。やがて、寄宿舎のティムの部屋で盗聴器が発見され、彼の姿が消えた。いたれりつくせりの医学部のキャンパスをひそかにおおう悪夢-屈指のストーリー・テラーによる医学サスペンス。

ブラック・ベティブラック・ベティ

1961年のロサンゼルス。ホワイトハウスには若きジョン・F.ケネディ大統領がいて、南部ではマーティン・ルーサー・キング牧師を指導者にして黒人解放運動が燃えさかっていた。ブラック・アメリカの新しい夜明けが叫ばれるなかで、黒人の私立探偵イージー・ローリンズは不動産投資に失敗し、破産状態に近かった。親友マウスも五年の刑期を終えて出所していた。四十一歳になったイージーにとって、この五年は悲惨な日々だった。親友が酒場の路地裏で人を撃ち殺すところを目撃した彼は、悪夢に悩まされた。しかも、可愛い子供がふたり残ったものの、妻のレジーナは自分のもとを去っていた。そんな彼のもとに、人捜しの依頼がもちこまれた。捜す相手はなんと“ブラック・ベティ”ことエリザベス・イーディ。イージーがテキサス州ヒューストンの少年時代に憧れ、はじめて異性にめざめさせられた年上の女であった。ベヴァリーヒルズの大富豪の家で働いていた彼女の行方を捜すことは簡単に思われたが、事は連続殺人へと発展していき…。セピア色のロサンゼルスを舞台に黒人の私立探偵イージー・ローリンズの活躍を描く人気ハードボイルド・シリーズ、『ブルー・ドレスの女』『赤い罠』『ホワイト・バタフライ』に続く第四弾。

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