出版社 : 早川書房
家族の絆に亀裂を入れたあの女が憎い…顔に醜いあざがあるためドリーは人づきあいを嫌い、母亡き後、父と弟の世話に喜びを見出してきた。が、父親が再婚し、すべてが変わってしまった。継母に罰を与えるため、彼女は弟と共に魔術で呪いをかける。直後、継母に恐ろしい災難がふりかかるが、やがてドリーにも無慈悲な運命の刃が。英国推理作家協会賞に五度輝く著者が、異常心理を極限まで追究した傑作サイコ・スリラー。
死ぬ瞬間、人の眼に何が現われるか。そのことに強い興味を抱く非常な美男子の医師ベッカー。彼は顔に傷痕のある男と出会い、妻を殺し眼を潰すよう依頼した。計画は成功するが、ミネアポリス市警のダヴンポート警部補はベッカーに嫌疑をかける。やがて鋭利な凶器で眼を潰された死体が次々と発見されて…狡猾な異常殺人者と一匹狼の刑事の息詰まる対決。骨の髄まで凍る衝撃のサイコ・サスペンス。
十セントの古本の山から、数百ドルの値打ちの本を探しだすーそんな腕利きの“古本掘出し屋”が何者かに殺された。捜査に当たった刑事のクリフは、被害者の蔵書に莫大な価値があることを知る。貧乏だったはずなのに、いったいどこから。さらに、その男が掘出し屋を廃業すると宣言していた事実も判明し…古書に関して博覧強記を誇る刑事が、稀覯本取引に絡む殺人を追う。すべての本好きに捧げるネロ・ウルフ賞受賞作。
夫の最高裁判事を殺害した容疑で突如、起訴された美貌の検事補アビー。彼女の弁護に立つのは、連戦連勝の辣腕弁護士レイノルズ。そして検察側の証人として出廷するのはかつてアビーに訴追され、死刑判決を受けた卑劣な殺人犯ディームズ。アビーに圧倒的に不利な状況のなか、レイノルズに秘策はあるのか。やがて激しい法廷戦の末、驚愕の真実が-裏あり、謎あり、仕掛けあり、読み始めたら止まらない『黒い薔薇』につづくノンストップ・サスペンス。
“完璧な逮捕劇ね”-FBI捜査官アナ・グレイはそう思った。たまたま出くわした銀行強盗を、たったひとりで難なく逮捕してしまったのだから。これで念願の昇進も確実のはずだ。しかし、性差別主義者の上司は、昇進のためのさらなる条件として、往年の映画女優ジェイン・メイソンが、治療を受けていた医師にドラッグ中毒にさせられたと訴えている件の調査をアナに命じた。自らのキャリアをかけた特別任務-だが、疑惑の医師の家で働いていた女性が、幼い頃に別れたために全く記憶にない父の実の姪であることが判明し、アナの心は微妙に揺れ動く。しかも、その女性は数日前にハイウェイで謎の死をとげていたのだ。国民的大女優ジェインを取り巻く虚飾のヴェールが剥がれおちるとき、アナ自身の封印された幼年時の記憶までもが、はからずも明らかになる…。混沌の大都市、ロサンジェルスを舞台に女性FBI捜査官アナの活躍を描き、S・トゥロー、R・B・パーカー、J・エルロイら実力作家たちに手放しで絶賛された、エイプリル・スミスのデビュー作。
弁護士から浮気調査を請け負って日銭を稼いでいるジャック・フリッポは、かつてはやり手の検事補として誰からも一目置かれる存在だった。ところが、女との火遊びがもとで検事局を馘になってからというもの、彼の人生は転落の一途。妻には逃げられ、家も財産も失い、いまは安アパートでわびしい独り暮らし。そんな彼のもとに、経営コンサルタント会社社長のバディ・ジョージの妻から、夫の不貞の動かぬ証拠をつかんでほしいという依頼が舞い込んだ。なんなく情事の模様を盗聴したまではよかったが、敵も録音テープを取り戻そうと必死の様子。おまけに依頼人の女がとんだ食わせ者だった。バディの妻というのは真っ赤な嘘で、どうやら彼から大金を巻き上げようという魂胆らしいのだが…。虚飾の街ダラスを舞台に、大金をめぐって繰り広げられる丁々発止の騙し合い。英国推理作家協会賞の最優秀処女長篇賞に輝いた注目のクライム・ノヴェル。
強力な磁場を持つ中性子星「スター」の内部では、体長約10ミクロンの微小な人類が驚くべき都市を形成していた。だが近年、グリッチと呼ばれる星震現象が頻発し、人類の居住域は徐々に崩壊しつつあった。想像もつかないほど強大な何かが「スター」を騒がせているのか。その陰には宇宙の支配的種属ジーリーに関わる重大な秘密が…エキゾチックな中性子星を舞台に驚異のスケールで展開する、ハードSFファン待望の書。
植民惑星ハーモニーを軌道上で密かに統轄するマスター・コンピューター「オーヴァーソウル」。入植以来四千万年を経て機能低下を自覚したこのコンピューターは、夢のお告げを送って人々を地球へ導こうとする。兄弟とともに花嫁を探せとのお告げを受けた少年ニャーファイは、独裁者ムウズーの侵略に揺れる都市バシリカを訪れた。そのお告げに隠された、コンピューターの真の思惑とは。人気作家の新たなる未来史、第二巻。
何万人もの人が居住するワルシャワ市のはずれの高層ビル団地。そこには様々な人生があり、老いも若きも、男も女も、それぞれの過去を、愛を、苦悩を、希望を、孤独をみつめながら、ひたむきに現代を生きていた。運命に左右されすれ違うこともあり、出会うこともあり…。それは偶然と必然の糸でつながれた不可思議な心の物語。十篇の愛の物語を鮮やかに描いた名匠キェシロフスキの伝説的連作映画を完全小説化する話題作。
最初に受けもった生徒たちが卒業すると、ルアン先生の心はカラッポになった。持てる力のすべてを捧げてきたので、自分の情熱さえも消滅する気がした。そんなある日、緊迫する事件が連続する。ある生徒は殺してやると叫ぶ男にピストルで狙われ、ある女生徒はセックスシーンをヴィデオに録られて恐喝される。疲労と緊張のきわみのなかで、ルアン先生は事態にどう立ち向かうのか。映画『デンジャラス・マインド』原作の続篇。
うつろな心を持てあますバークのもとに、昔のムショ仲間ヴァージルの妻が訪ねてきた。彼女が預かっていた少年が連続狙撃犯の容疑をかけられ、ヴァージルとともに逃亡したという。旧友の求めに応じて、バークはインディアナへと急いだ。そこで出会った謎めいた美女ブロッサムの助けを借り、バークは真犯人を誘いだす奇策を練ることになったのだが…少年の自立と家族の絆をモチーフに、シリーズに新境地をひらく注目作。
年老いた脱獄囚がアパラチア山脈近くの故郷へ向かっていた。保安官のスペンサー、保安官助手志願のマーサらが追い始めるが、その矢先、奇怪な事件が続発する。折りしも、二百年前の事件を調べるため、若い男が山道に踏み入るが…いくつもの運命が絡み合い、やがて緊迫の結末へ。アンソニー賞、アガサ賞、マカヴィティ賞の最優秀長篇賞を受賞した注目作。
クイン・クリアリーは医師になりたかった。しかし、家が裕福ではない彼女にとって夢がかなう唯一の道は、イングラム医科大学に合格することだった。イングラムは製薬会社関連の財団が設立した大学で、全米から選ばれた優秀な学生が、無料で教育を受けることができた。補欠ですべりこんだクインは、有頂天で新生活に飛びこんでいく。だが、彼女は奇妙なことに気づきはじめた。クラスメイトたちが、医学倫理を受け持つオールストン教授の理論とまったく同じ-将来、限りある医療資源を分配するのに、その人間の社会的価値によって差をつけるべきだという-考え方をするようになってきたのだ。正義感の強いクインは反発するが、彼女と同意見だったボーイフレンドのティムまで、オールストンの思考様式に染まりはじめた。クイン以外に、その考え方に疑問を覚える者がひとりもいないのはなぜか。やがて、寄宿舎のティムの部屋で盗聴器が発見され、彼の姿が消えた。いたれりつくせりの医学部のキャンパスをひそかにおおう悪夢-屈指のストーリー・テラーによる医学サスペンス。
1961年のロサンゼルス。ホワイトハウスには若きジョン・F.ケネディ大統領がいて、南部ではマーティン・ルーサー・キング牧師を指導者にして黒人解放運動が燃えさかっていた。ブラック・アメリカの新しい夜明けが叫ばれるなかで、黒人の私立探偵イージー・ローリンズは不動産投資に失敗し、破産状態に近かった。親友マウスも五年の刑期を終えて出所していた。四十一歳になったイージーにとって、この五年は悲惨な日々だった。親友が酒場の路地裏で人を撃ち殺すところを目撃した彼は、悪夢に悩まされた。しかも、可愛い子供がふたり残ったものの、妻のレジーナは自分のもとを去っていた。そんな彼のもとに、人捜しの依頼がもちこまれた。捜す相手はなんと“ブラック・ベティ”ことエリザベス・イーディ。イージーがテキサス州ヒューストンの少年時代に憧れ、はじめて異性にめざめさせられた年上の女であった。ベヴァリーヒルズの大富豪の家で働いていた彼女の行方を捜すことは簡単に思われたが、事は連続殺人へと発展していき…。セピア色のロサンゼルスを舞台に黒人の私立探偵イージー・ローリンズの活躍を描く人気ハードボイルド・シリーズ、『ブルー・ドレスの女』『赤い罠』『ホワイト・バタフライ』に続く第四弾。