出版社 : 早川書房
たぐい稀な美女ドミニカはバレリーナを志すが、足を骨折して夢を絶たれた。父が急死すると、彼女はSVR(ロシア対外情報庁)の高官である伯父ワーニャによって、その美貌を利用した企みに加担させられる。その後ドミニカはSVRに入り、標的を誘惑するハニートラップ要員となった。やがて彼女は、命を受けCIA局員のネイトに接近するーロシア国内に潜み、彼に機密情報を流し続けるCIAのスパイを探り出すために!
ドミニカはネイトを誘惑する。が、CIA側は彼女がSVRの諜報員であることを突き止め、ネイトは彼女を寝返らせるよう指示される。だが、二人の関係は思わぬ方向へ。やがてワーニャはCIAに内通するスパイを暴く策略を講じるが、CIAも米国内に潜伏するロシアのスパイをあぶり出す作戦を展開する。そして、ドミニカとネイトには苛酷な試練が襲いかかってきた。元CIA局員の著者が予断を許さぬ展開で描く大型スパイ小説。
1535年秋、ロンドン。ヘンリー八世の王妃になったアン・ブーリン。しかし、その地位はおそろしく脆いものだった。卑しい生まれのトマス・クロムウェルは、いまや王の重臣となっている。だが、平穏な日々はいまだ遠い。国家はキリスト教国のあいだで孤立し、貴族たちはそれぞれの思惑を抱え、熱望する世継ぎがなかなか得られない王は女官ジェーン・シーモアに心を移す。クロムウェルは王と国家にとって最善の道を探るがー16世紀イギリスの宮廷に生きる冷静沈着な政治家クロムウェルを描く、『ウルフ・ホール』に続く歴史文芸大作。ブッカー賞、コスタ賞受賞!
養蜂家の少年エミールは、幻の“銀の蘭”を探しもとめて、旅を続ける。ドラガという夜行性の目をもつ屈強な男をしたがえて。双子のエミリヤに、“銀の蘭”を摘んでくるために。“銀の蘭”の蜜こそが、僕ら双子の傷を癒すんだー。“銀の蘭”の紋章をもつ貴族クルゼンシュテールン家のユリアンは、数年前に一族郎党を何者かに殺害された。いまは屋敷に引きこもって、ピアノを弾きながら暮らしている。生き残ったのは病臥の次兄と、次兄の恋人リオネラと、ユリアンの三人だけだ。美しいリオネラは、ユリアンの有能な家庭教師であり、生きるよすがであり…。血と報復のコンチェルトが満を持して幕を開ける。
「それは、乳房であった」男の独白は、その一文から始まったーミロのヴィーナスと衝撃的な出会いをはたした幼少期、背徳的な愉しみに翻弄され、取り返しようのない過ちを犯した少年期、サイエンスにのめりこみ、運命の友に導かれた青年期。性状に従った末に人と離別までした男を、それでもある婦人は懐かしんで語るのだ。「この人は、女性がそんなに好きではなかったんです」と。アニメ『ファンタジスタドール』前日譚。
白竜、緑竜、黒竜の三頭の竜を従え、デナーリスはミーリーンで女王として君臨していた。だが、その前途には暗雲がたちこめる。都の中では内乱をもくろむやからが殺戮を繰り返し、外では敵対勢力が都を包囲せんと軍を進めていた。さらに、竜たちはどんどん巨大化し、残虐さを増して、デナーリスでさえ抑えきれなくなったのだ。そのころ、父タイウィン公を殺害したティリオンは、密告者の長ヴァリスの手によってキングズ・ランディングを脱出、“狭い海”を渡りペントスのマジスター・イリリオのもとに身を寄せていた。イリリオから、女王デナーリスが軍を率いて七王国へ帰還するときの軍師になるよう求められたティリオンは、勇躍ミーリーンへと旅立った。だが、ドーンのプリンス、クェンティンもまた、父である大公の密命を受け、三頭の竜とデナーリスを七王国に帰還させるべく、女王の都に向かっていた…。四度めのローカス賞に輝く現代最高の異世界戦史。
ヴェネツィアの教会の石段で、女性の死体が発見された。死体はカトリックの女性には許されない司祭の祭服を着て、腕には奇妙な模様のタトゥーがあった。憲兵隊の大尉カテリーナは捜査を開始する。その頃、米軍基地に赴任した少尉のホリーは、旧ユーゴ内戦時の記録の公開を求める女性と面会した。ホリーは記録を調べるが、やがてその女性の死を知る。カテリーナとホリーは協力し、ソーシャル・ネットワーク「カルニヴィア」の創設者ダニエーレとともに、二人の女性の死に潜む陰謀に迫る。壮大なミステリ三部作、開幕!
ブラッドベリの幻の作品集として名高い処女短篇集『黒いカーニバル』から精選した作品にウィアード・テールズなどのパルプ雑誌に発表された作品を加えた初期傑作選。深夜のカーニバルで、団長が乗った観覧車がくるくる逆まわりするたびに奇怪なことが起こる「黒い観覧車」、かつての想い人である少女を失った湖を男が婚約者とともに再び訪れる「みずうみ」など、叙情SFの名手が贈る恐怖と幻想にあふれた24篇の物語。
一介の大尉でありながら、第41海軍管区司令官としてチャンス星系へとやってきたクリス・ロングナイフとその一行は、司令部である宇宙ステーションに到着して愕然とした。歓迎団どころか、ひとっこひとりいない!動力反応炉も停止し、非常用電源で動いているだけ…数ある海軍管区のなかでも最低の辺境星区に左遷されたわれらがプリンセスだが、それでも司令官としての職務を果たそうと持ち前の機知と財力で奮闘する!?
でたらめな地図に隠された意味、しゃべる壁に隔てられた青年、川に振りかけられた香水、現れた住職と失踪した研究者、頭蓋骨を探す映画監督、楽器なしで奏でられる音楽…日常に潜む、幻想と現実が交差する瞬間。美学・芸術学を専門とする若き大学教授、通称「黒猫」と、彼の「付き人」をつとめる大学院生は、美学とエドガー・アラン・ポオの講義を通してその謎を解き明かしてゆく。第1回アガサ・クリスティー賞受賞作。
突如現れた謎の土塊に生き埋めとなった少女が救われた事件を発端に、京都周辺に数多く出現し始めた謎の弁別不能体・不忍。それは人の動機を殺すため存在を感知できず、視界に入れた者は行動不全に陥る。7年後、シノバズの討伐・処理組織「高天原探題」に参入した寺沢俊樹は、かつて己が救い出すも危険な異能者として強制隔離されてしまった少女・皆戸清美との再会を望むが…比類なき独創性を放つ闘いと純愛の伝奇SF。
故あって英国秘密情報部SISから追われた男トーマス・ケル。彼は昔の同僚から思わぬ依頼を受けた。SIS初の女性長官に就任するアメリア・リーヴェンが突如消息を絶った。アメリアのことをよく知るケルに彼女を探し出してほしいというのだ。ケルは捜索を始めるが、やがて驚くべき国際的陰謀が明らかに!非情な謀略に巻き込まれた人々のドラマを描く傑作スパイ小説。英国推理作家協会賞スティール・ダガー賞受賞作。
新生児誘拐に端を発する一連の事件は、西牟婁警部らの懸命の捜査にもかかわらず、波紋を広げるばかりだった。だがわずかな手がかりを得た捜査陣はついに一筋の光明を得る。そのころ須佐見教授もまた事件解決につながるピースを手にしていた。人工授精、遺伝子操作、代理母出産、卵子売買…技術は進みながらも法整備が大きく遅れている生殖医療。その光と闇とは?『ノーフォールト』に続き、現役の病院長が放つ話題作。
マーシー総合病院で、臨死体験者の聞き取り調査を行なっていた認知心理学者のジョアンナは、神経内科医のリチャードから新規プロジェクトへの協力を求められる。NDE(臨死体験)を人為的に発生させ、その時の脳の活動を詳細に記録しようというのだ。しかしその実験にはトラブルが続出し、被験者が不足してしまう。ジョアンナはみずからが被験者となることを申し出るが、彼女が疑似臨死体験でたどり着いた場所は…!?
暗礁に乗り上げた研究プロジェクトを救うため、ジテタミンを投与されたジョアンナが疑似臨死体験のなかでたどり着いた先は、思いもかけぬ場所だった。自分は確かにここを知っている。なぜ、どこなのか思い出せないのだろう?ジョアンナは答えをもとめて必死に調べ始める。なんども臨死体験を実験で繰り返し、ついに突き止めた真相は、まさに予想だにしないものだった!ローカス賞に輝く読み始めたら止まらない感動作。
日本SF作家クラブ創立五〇周年記念アンソロジー第四巻。特殊能力を持つ女性の葛藤を綴る宮部みゆきの名品「朽ちてゆくまで」、非・人型介護用ロボットが導入された介護の現場を描く篠田節子の傑作「操作手」、菅浩江による博物館惑星を舞台に美を巡る物語「永遠の森」など一九九三年から二〇〇二年に発表された十篇を収録。ジャンルの枠を越え、多様なSFが発表された充実の十年を振り返る。
大きな野心から生まれ育った小さな町を憎み、故郷を捨てた青年ルーク。20年後、夢破れて二流の学者となり、講演でセントルイスを訪れた。会場で再会したのはーローラ・フェイ。かつてあの町でルークの家族に起きた悲劇の引金になった女性だった。彼は彼女に誘われ、昔を語り合う。“あなたも故郷を思い出すことがあるのかしら?”その会話は、ルークをゆっくり導いてゆく。知りえなかった女の過去と驚愕の真実に…。
時間勾配によって生じる歪みが原因で、精緻な地図の作成が不可能なこの世界は、軍事的交戦状態にある諸国で構成されている「北大陸」と、その主戦場となっている「南大陸」、およびその間のミッドウェー海に点在する島々「夢幻諸島」から成っている。最凶最悪の昆虫スライムの発見譚、パントマイマー殺人事件、謎の天才画家の物語…。死と狂気に彩られた「夢幻諸島」の島々には、それぞれに美しくも儚い物語があった。語り/騙りの達人プリーストが年来のテーマとしてきた「夢幻諸島」ものの集大成的連作集。英国SF協会賞/ジョン・W・キャンベル記念賞受賞作。